兵糧に困った時、軍馬を食べたのか?
§ そもそも馬って、どれくらいのキロカロリーなんだよ?
色々なデータありますが、完全にカロリーへ転嫁できて一頭当たり70万キロカロリーぐらいだそうです。
しかし、これを戦地で到達は不可能でしょうから、半分の35万キロカロリーとしましょう。
計算しやすく重労働の目安一日3500キロカロリーで割ると――
馬一頭で100食分に相当する
といえそうです。
§ でも、軍勢の騎乗率ってそんなに高くないよな?
一割が馬を伴っていたとして、一万人の軍勢だと千頭の馬がいます。
この軍勢を馬肉だけで養おうとしたら――
一日当たり100頭の馬を潰さねばならなくなる
であり、のべ日数へ直せば10日で尽きます。
これが騎乗率二割だと20日。三割でも30日です。
つまり――
馬へ手をつけだしたら、あっという間に尽きる
がFAのようです。
相手が馬を食べて飢えを凌ぐことを抑制なんてしなくて――
「ああ、奴ら馬を潰し始めたぞ。もう終わりが近いな」
と判断が現実的でしょう。
よって『謎の粉』の出番はあり得そうもありません。
§ さらに戦死した軍馬って食えるのかよ?
戦死した軍馬を、日が落ちてから回収して食料化――
これ、どう考えても無理っぽいです。
まず基本的に戦争は夏場が主ですから、血抜きもせず、死後に冷却もしなかった肉なんて超高確率で――
腐ってます!
焼肉などで生の肉を箸で摘まんだだけで食中毒となるぐらい、肉は当たり易い食品です。
腐っているということは、念入りに火を通さないと危険ということです(もう可能ならば触らないのが望ましいレベルな汚染物)
そもそも腐肉食動物というのは、自然界でも数えられる程度しかいません。
なぜ彼らは腐肉を食べても平気かというと、腐肉に耐えうる専用の消化器官を持っているからなんです。
「肉食動物は生餌しか食べない」のではなく「野生動物ですら危険だから死肉は食べない」が真実だったりします。
さらに料理の歴史は、臭い肉との戦いでもありました。
臭くならないよう心血を注いで、あらゆる知恵と工夫を編み出して……それでも肉は臭いのです。
なぜ黄金と等価にまで高騰しても、西洋人がコショウを買ったかといえば――
臭い肉への唯一にして究極の答えだったからです!
生きるか死ぬかの瀬戸際ですら戦死した軍馬肉は、吐き気と戦いながら口にせねばならない強敵だったと思われます。
よって、わざわざ『変な粉』をまくまでもなく、それは毒化してます。
リバース分まで考えたら、差し引きマイナスすら?
………………ちなみに戦死した人間肉も同等な状態でしょう。
ただし、この理屈は冬季や寒冷地を除く。
§ それでも軍馬を食べたとは思う
しかし、逆説的に条件さえ揃えば、馬肉食はあり得たでしょう。
例えば――
骨折などで、もう潰すしかなくなった馬
などです。
基本的に馬という動物は『四本の脚で立てなくなる=死亡確定』という悲しい定めを負っているので、戦場での運用は厳しいものがあります。
よって馬の安楽死など珍しくもなかったはずですが、軍を切り盛りする側からすれば――
貴重な兵糧一〇〇日分です!
というより古代から中世にかけて、この手の安楽死させる馬は兵糧とするのが常識だった可能性すら?
ようするに日常的なムーブ過ぎて――
「いざとなったら軍馬を食ってでも!」
みたいな意気込みはピントがずれて?
また、兵糧が切羽詰まっていたら鹵獲した敵軍馬などは、積極的に食料化していたと思われます。
………………これは人肉食も同じ理屈が適用できる?
食肉とする寸前まで生きていて、あまり抵抗感なく殺せる人材――つまりは捕虜?
日本などは軍馬と共に葬られた武将などもいて、必ずしも食べなかった可能性はありそうです(これは当時の軍馬を推理する論拠にも)
§ まとめ
そもそも軍馬食は一般的過ぎて、それを織り込んだものが兵糧
であり――
潰さなくてもよい軍馬を食べ始めたら、それは末期かつ焼け石に水
と思われます。
人肉食まで考えても馬の1/5ぐらいだそうですから……1人食肉化で兵糧20日分です。
よって――
(残存数-食肉化数)=食肉化数×20
∴ 1/19残存数=食肉化数
つまりは――
毎日5.2%ほど間引いていかないと、食い繋げられないとなります。
馬肉食も人肉食も起きなかったというほど初心じゃないけど――
どっちも焼け石に水でしかないよ! 基本、始まったら絶望!
………………わりと意外な結果だったりも。