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第1章ー1話 始まりの時がやってきた

-入学式の日の朝

「ふぁ~」

目をこすりながら椅子に座り、朝食のパンを食べる。

やっぱり朝は眠い。

当たり前のことだけど、どうして人は眠くなるんだろう・・・

ばんやりと考えていると”雌鬼”ががみがみと叱ってくる。

「ほら!早く食べちゃいなさい。今日は遅刻はできなんだよ。何ぼ~としているの。」

どうして、母親という人種はこんなに朝から元気なんだろう。

「ごちそうさま~」

「早く準備しちゃいなさい」

「わかっているよ!」

強い口調で言い返す。

少し、キレたそのままに乱雑に歯を磨く。

それから自分の部屋に戻り、制服に着替える。

「あれれ・・・」

うまくボタンが止まらない。

そもそも、こんな止めにくい形をしているのが悪い。

だいたい、こんな制服を着る必要性はあるのだろうか。

以前テレビで見たことはあるが、外国の学校はもっとラフな格好をした制服を着ていた。

こんな服を毎日着るとはだるいな。

まあ、中学校と似たようなものだろう。

まだしわ一つない制服のボタンをようやく閉じ終わると、時計を見る。

「うわ!やべっ!」

慌てて家を部屋を出る。

階段を駆け下りて、1階に向かう。

すると、母親はあたふたとしていた。

「どっちがいいと思う?」

と、突然聞いてくる。

本人いわく、服に飾り付けを白い花にするか、赤い花にするかで悩んでいたらしい。

「白にすれば~」

と、テキトーに答えて玄関に向かう。

これまた、ピカピカな革靴を履こうとするが、うまく履けない。

ドアを開けようとするとまた、あの”雌鬼”がやってくる。

「忘れ物はない?歯磨きした?着替えた?それから・・・」

「うるせーな!全部したってば!」

そう、言い切ってドアを強く開ける。

それに続いて、両親も家を出た。

「まったく、あの”雌鬼”といったら・・・」

人に早くとかいう前に、自分の準備をしろって話だよ!

だいたい、制服を着たかなんて、見ればわかるだろっ。

曲がり角を曲がり、用水路に沿って歩いていく。

なんとなく親と一緒に歩きたくないのか、両親から3m以上離れたところをキープする。

時折風が吹くと、少し肌寒く感じるが、真冬よりは明らかに暖かかった。

”春”がやってきたんだと実感させてくれるように桜の花びらが舞い散っていた。

今日から俺は高校生だ。


俺の名前は、今村 陽弥。今日から高校一年生だ。

特に何もない凡人・・・?いや、周りの人からすれば変人だろう。

そもそも、ヲタクで、高校生になっても中二病を卒業していないやつとゆうだけで十分異端児だろう。

それに加え、あらゆる分野は中途半端だし、短気でキレ症だし、運動もできないし、勉強もできないし、友達は少ないし・・・

だからこそ、高校に上がった今、自分の人生にも花を咲かせたかった。

”春”のようにね。


大通りを渡り、少し歩くと、校門が見えてくる。

意外と近かった。

本当は私立でもよかったが、電車で通学するのが面倒なので、公立にした。

校門の前は、記念撮影する人であふれかえっていた。

両親が一気にカメラを向けてきた。

テキトーにピースして、形は喜んでいるようにした。

両親と別れて、一人で歩き始める。

「ここから先は未開拓エリアだ。」

と、中二病感満載のセリフ。

それから、校門をくぐって校内に入る。

校門を入ってすぐにTHE体育教師と言わんばかりのゴッツい先生が立っていた。

「ほら、新入生!教室を確認しろ!」「おい、あいさつは!」

と、新入生にいきなり怒鳴り散らしている。

なんだか声をかけられたら、面倒くさそうな教師だと思ったから、見つからないようにと、下を向いて静かに歩いた。

案の定、

「おい、そこ!もっと胸を張って歩こうや。」

と、言ってきた。

いきなりうるさいと思ったから、もっと下を向いてやった。

しばらくあれこれと言っていたが、テキトーに聞き流しながら歩いた。そしたら、あきらめたらしく、苦笑していた。

これは自覚していることだが、多分第一印象はこの学校一悪いだろう。これは俺の癖でもある。母が要注意してきたが、なかなか人の癖って治らないものだ。もしくは、俺が直そうとしていないからか?多分後者だろう。

そして、クラス替えの表の張ってあるところに行く。

新入生がたまっているので、軽く遠目越しに確認した。


-1年2組3番 今村 陽弥


「2組か・・・」

この学校は、1組~5組まであって、男女それぞれ約100人ずつ、一学年は200人前後になっている。

1組でもなく、5組でもないから中途半端だなと思った。まあ、中途半端な自分にはちょうどいいかもしれない。

それから、下駄箱を探して、靴を履き替える。

-1年生は3階です-

張り紙がしてあった。

同様の看板は階段の途中にもあり、教室につくまでに十数枚は貼ってあっただろう。

クラス表にも部屋番号が書いてあったし、小学生でもないのに、自分のクラスを間違えるやつがいるかよ、張り紙を見るたびにそう思った。

さらにもっと面白いことに、教室の中の掲示板にまで、一年生は3階ですと矢印とともに張り紙がしてある。だいたい、矢印が廊下のほうを向いている。印刷ミスだろうか。

教室にちゃんとつくことができたやつが、教室内でなんで何階か迷うんだよっ。

そこにツッコミを入れたくなる。この学校は何歳児向けなのだろう、ついには、こんなことまで考えだした。

座席表を見て、前から3番目の廊下側の席に座る。

前のほうだったが、一番端なのでまあ、いいかと思う。

HRまで、椅子に座ってただ、ぼ~として待つ。俺的には一番態度がいい待ち時間だろう。

15分がたったころだっただろうか、担任先生が教室に入ってきた。

「え~と、お~じゃ~号令。起立。」

先生の号令とともに、みんなが一斉に立つ。

「え~と、気をつけ、礼。」

「お願いします。」

色々な人の声が重なる。

「着席。」

ガガガズズズといすを一斉に引いて座る。こうゆう時に限ってやたらにハモル。

「え~と、お~、あ~それで~え~と、あ~まずは~あ~出欠を~お~とりたいんだが~え~と、お~その前に~自己紹介を~お~しなければいけないわけだな~」

なんかガクってくるようなしゃべり方。ただ、自己紹介をしたいといいたいだけなのに、え~とか、お~とか言って話が長いし、なんか眠そうな先生だった。

「え~と、まずは~あ~私の~お~名前は何というかというと~お~土山というわけだな~えっと~お~それで~・・・」

クラスの何人かがくすくすと笑う。俺も少しだけ笑った。

出欠をとり、座席の確認をする。

しばらくして、一人の生徒が先生に質問した。

「先生は何歳ですか~」

何人かがまたくすくすと笑った。

「え~と、あ~年齢?何歳かというと~お~あ~永遠の~お~20歳な~あ~わけだな~」

その瞬間、教室がシ~ンとなった。

ギャグが滑った先生は、残念そうに話しを進めた。

入学式の流れを説明すると、体育館に移動させられた。

20分ぐらい待つと、校長が現れた。

ただし、この校長がものすごく太っていて、重そうな体を一生懸命階段を登る。

いちいち歩くたびに脂肪が揺れている。

校長が立ち位置につくと、プツっとマイクの戸が聞こえた。

「平成31年度、吉祥寺中央高校 入学式を始めます。一同起立、礼」

教頭の張りのある声とともに入学式が始まった。

校長が20分以上も長い話をして、来賓の方のお話、新入生の担任の紹介・・・と、プログラムは順調に進む。最後に、覚えてもいない校歌を歌い、入学式は終わった。

再び、教室に戻り、座席に座る。

HRが再開し、クラスメイトの自己紹介をした。

どうせ、誰も聞かないだろうとテキトーなことを言ってその場を切り抜けることにした。

「え~と、お~ では、気になった人同士で集まってクラスになれてほしいわけだな~」

相変われず眠そうな声だが、要するに”友達をつくる時間”というわけだ。

ここまでは何事もなく進んできた高校生活だが、早速問題が起こってしまった。それは、中学時代から続いてきた友達問題だ。

中学時代、変人扱いされ、いじめの対象になっていた俺は、仲のいいはずの友達にも裏切られてきたため、友人関係を気付くことにトラウマになっていた。

さっそく、近所の席同士でLINEのアドレス交換をしあっているほかの友達とは違い、ただ独り、本を読んで時がたつのを待った。

たまに時計を見て、あたりを見て・・・その繰り返しだった。すると、横から声がかかってきた。

誰かと思って振り返ると、男子生徒が立っていた。

一瞬戸惑ったが、考えるより早く彼は口を開いた。

「俺は渡辺優斗、よろしく」

「ああ・・・よろしく。俺は今村陽弥。」

シンプルな挨拶だったし、また裏切られるのではという恐怖もあったが、初めて自分に声をかけてきてくれたことはものすごくうれしかった。

「なんで俺に?」

「さっき自己紹介で、君の好きなゲームがさあ、僕も好きでね。」

やはり、共通の話題も持っていることはこうゆうときに役に立つ。だから、ゲームをすることは悪いことではないじゃない?

しばらく優斗とゲームの話で盛り上がっていると・・・あれ?どこかで見たことがある少女を見つけた。彼女は・・・近藤汐音?いや、間違いない、汐音の姿だった。

近藤汐音とは、小学校5、6年生で同じクラスメイトだったが、中学にあがって別々になった、個人的には美人ランキング1位の女の子だ。

たしか、あれは6年生の秋ごろの放課後だっただろうか・・・俺は汐音を呼び出し、告白した。初めての二人きりの瞬間だった。しかし、彼女は少し俺に配慮しながら「ごめん」と、一言いい残してその場を立ち去ったんだっけ。孤独さ、寂しさ、悔しさ、あの何とも言えない感情は今でも鮮明に覚えている。今となってはいい思い出だ。

ん、ちょっと待てよ、汐音は学年で一番頭のいい女子として有名だった。なにしに、こんな、対象年齢幼稚園以下の高校へ?

しかし、やっぱり何度見てもかわいかった。変わらない笑顔、変わらないすらりとした体格・・・それでも時の流れというものがある。その象徴に胸が・・・でかい?。何カップだろうか、でも小学校の頃からは明らかに膨らんで多分・・・おい!俺!何を考えているんだ!

「これは、ワンチャンきた!」

「なんが。きたの?」

「いや、だって・・・何でもない」

やべえ、これはマジで嬉しすぎる。神降臨か、明日は雨が降るぞ!

この感情は抑えらない。抑えられるわけない。

でも、前に振られているから、また嫌われないように正体を明かさないことにした。よって、しばらくは投目で観察することに使用。あ、大事なことだからいうけど、ストーカーじゃないからね。

優斗はそんな俺を不思議そうに見ている。当たり前だ。

HRが終わり、下校する。

下駄箱に来た時、念のため汐音の下駄箱を確認した。何のためだ?

それから、優斗と一緒に帰った。久しぶりに友達と一緒に帰った。

「あの担任の・・・土山だっけ?あいつ、眠くない?」

「それな。わかるは~あれはだるい。」

幼稚園以下のレベルで会話する俺たち。

帰りってこんなに楽しいんだ。

家が近くなので、用水路までは同じ道だった。


初日としてはかなりいいスタートを切っただろう。

友達はできるし、汐音は同じクラスだし・・・

「神だ~~~~~~!」

俺は叫んだ。間違いなく近所迷惑な行為だが、そんなものどうでもよかった。

今日から俺は一人じゃない。

”俺たち”なんだ。


















 



























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