極論男・6
俺は家の内装をDIYするのに疑問を持つ。過度な断捨離も理解出来ないが、築数十年の古い家を改造するのは、シルビアのインテリアをベンツ風に出来たぜ! ウッヒョー! と某カー雑誌の取材ではしゃいでた奴みたいだ。DIYにハマる人はもっと理解出来ない。おそらくプラモデル感覚なのだろう。
テレビや雑誌の特集でよく出てくるワードが“ブルックリン風”だ。そんなにブルックリンって魅力的? そもそもニューヨークに行ったことあるのかな? 俺は20代前半の時にラスベガスに行ったけど。
外見ばかりに気を取られて内面に目が行ってないと推考する。どんなに着飾っても、馬子にも衣装では本末転倒だ。問題は地震、火災、洪水などの天災に対処出来るかだ。
百均の金網を結束バンドで結び、レターボックスなどを作るそうだ。結束バンドはプラスチック製で数年もすれば劣化して割れてしまう。その都度、作り直すのかな?
DIYの達人が使い込み感を出す為に壁に板を貼り、ペンキを塗って『デザインしました』と高らかに言っていた。デザインとは“機能”であり、機能性のない単なる見た目はデコレーションだ。
――ある日、地震が起きた。DIY達人の家は震度5強、震源地だ。活断層は日本の津々浦々にある。日本は地震と切っても切り離せない関係にある。
瓦解するDIY達人の飾り達。ガシャン! ガラガラガラ――。
『ああ! 作り上げた、ブルックリンがー! 守らなきゃ!』
ガシャン! 揺れる中、無理やり歩き、ワインセラーが倒れないように押さえつけようとした時、足に違和感を感じた、『いったーい!』すのこ板を釘で止めて作ったマガジンボックスが地震の揺れで落ちていて踏んづけてしまったようだ。
パリン、パリン、『もう、なんなのよ』DIYで飾った、電球が落ちてきて頭に当たり割れる。中には造花が入っていた。
『大丈夫、大丈夫。また作り直せば!』
ボアッ! ……火だ、キッチンから出火した。
『大丈夫、大丈夫。ブルックリンの壁には消火器が……』
達人は錆びたアイアンカラーのペンキで塗装した消火器を手にする。
『ピンを抜いて〜、ホースの口を火元に向けて〜、レバーを引く! …………あれ? 消火剤が出ない! 何でよーーー!』所詮ただの飾りだ。
DIYの達人は命からがら外に逃げた。すると、家は半壊してから全焼した。ギリギリだった。
『また作り直せばいい』
――しかし、DIYの達人は地震保険にも火災保険にも入っていなかった。お金もなかった。
親戚からも変わり者扱いされており、間借りするには肩身が狭い。役場が用意してくれた団地は思いっきりDIYが出来ない。……だから、公園に段ボールハウスを建てて、内装をブルックリン風に飾る。
落ちていた雑誌をマガジンボックスに入れ、宛先もないハガキをレターボックスに入れ。
ブルックリン……ブルックリン……。
今日も平和な1日が過ぎていく。