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ミルクチョコレート

作者: らい

「好きです。」



あー....やっぱり言われてしまった。

ちゃんと断らなきゃなぁ。


「ごめんね、俺好きな人いるんだ。」


「え.......誰?!」


「.....Bちゃん」


やばい、泣かれるかも。


でも自分の気持ちに嘘はつけないし。





ーーーー俺はBちゃんが好きだ。もうずっと前から。

そしてBちゃんは、こいつと仲の良い友達だ。

俺らはBちゃん含めた数人の男女グループでつるんでる。これはいわゆるグループ内恋愛ってやつだ。


俺がBちゃんのことを好きだった事は誰にもバレてないはず。そして実はこの間告白してて今は返事待ちだ。正直かなりいい感じだから多分だけどこのまま付き合う事になると思う。



そして、今俺に告白してきたこいつは、ずっと俺の事を好いてくれていたはずだ。最初に気付いたのはグループとは別に個人的に誘われた時。俺は皆で遊ぼうって提案して、二人で会うのを避けた。でもその後もたまに誘われてたし、ずっと断ってるのも流石に気まずいし三回に一回位は二人で遊んでた。


たまに、Bちゃんと上手くいかない時には暇つぶしに俺から誘ったことも何度かあったっけか。

その度にこいつはすっごい嬉しそうにするんだ。

急な誘いでも、必死に時間を作って会おうとする。

俺といる時はグループ内では見せないような恥ずかしそうな、でもすごく楽しそうな顔をする。

いつもよりも大人しくなってたどたどしくなって。

そんなこいつの姿を見て、Bちゃんに対する自分を重ねてみたり本当に最低だけど、Bちゃんと重ねてみたりした。

楽しくないわけではないし、嫌いなわけでもない。

ましてや、自分に好意があると分かっている相手だからどうしても居心地がいい。だから俺は、こいつとの関係は誰にも言っていなかったし、いつかこうなる事も予測していた。そしてその時がきたらBちゃんの話をして突き放してしまおうと思っていた。ーーーーーー





俺の好きな相手がBちゃんだと知り、黙り込むあいつに少し胸が痛む。


このまま、泣き始めるかもしれないなぁ。。。。

振られて、挙げ句の果てに自分の友達が好きとか言われたら苦しいよなぁ。




しかし、予想は大きく外れた。




「そうだったんだ。全然気付かなかったよ!」


予想外にあっけらかんと言い放つもんだから正直驚いた。


「うん、二人ならきっと上手くいくと思う!頑張ってね!」


俺の目を真っ直ぐに見て笑顔であいつは言った。



「え......強がってない?」思わず聞いてしまった。



「大丈夫!私こうみえて強いし!」



痛々しいくらいの無理矢理な笑顔と返しだった。



「...ごめんな。」




「謝らないでよ!話してくれてありがとう。」




「いや、正直、泣かれるかと思ってた....」


思わず口がすべってしまった。

こんなこと言いたかったわけじゃないのに。







「...泣かないよ、だって泣いたら困らせちゃうじゃん!」





その言葉にやられたと思った。


こいつは、こんな状況でも俺のことを考えてるんだ。

自分が一番辛いのに泣きたいはずなのに。

俺のことなんて引っ叩きたいはずなのに。

それでも俺のことを一番に考えてくれてるんだ。


俺だったらこんな風に言えるのだろう。

笑って頑張ってね、なんて本人に言えるのか。

そこまでの器があるのだろうか。



「.............。」


言葉に詰まる。

情けないけど、なんだかこっちが泣いてしまいそうだ。


俺は今までどんな軽い気持ちでこいつと向き合っていたのだろうか。

こいつの俺への好意に胡座をかいて、甘えてばっかりで。

いつも一番に俺の事を考えてくれてたじゃないか。















ーーーでも自分の気持ちに、嘘はつけない....。










複雑な気持ちのまま、自宅へ戻る。

部屋の隅には数日前にあいつから受け取った

誕生日プレゼントが置いてあった。

必死に会う約束取り付けてきて、顔真っ赤にして持ってきたっけなぁ。

後でいいや、と思いまだ中身も見てなかった。

さっきちゃんとお礼、言えばよかったなぁ。


可愛い包みのリボンを解く。中からは、俺のお気に入りのブランドの車の芳香剤がふたつ。あいつ、車の中見て俺にこのブランド聞いてきたもんなぁ。これ好きなの気付いてくれてたんだ。


そしてもう一つのブラウンの紙袋を開けると中にはチョコレートが入っていた。



ーーー誕生日とバレンタインが近いからいつも一緒にされる、それが不満だ、みたいな話をかなり前のグループ飲み会でした事がある。だからわざわざ分けてくれたのかもしれない。ーーーー



チョコレートは某有名ブランドのもので箱を開けると車の形をした可愛らしいチョコレートが並んでいた。

チョコレートと一緒に赤い箱も入っていて、何かと思い開けてみるとミニカーのフィギュアが入っていた。

それも........俺の好きな型のミニカーだった。こんなの見つけるのにどれだけ時間がかかったんだろう。

車好きな俺の好きなものばっかり。あいつは、どんな気持ちでこれを選んでくれたんだろう。


最後に小さなメッセージカードが入っていた。

「いつもありがとう。こんなに仲良くなれて本当に嬉しいよ!これからもよろしくね。」




思わず胸が締め付けられた。








誘いを断れば「残念」って困ったように笑うんだ。


俺がくだらないこと言ったらいつも爆笑してくれて。


仕事の愚痴こぼしたくなったら一緒に酒飲んでくれて。


俺の趣味についても知りたがってくれて、


教えたら俺より詳しくなりかけててびびったなぁ。




俺は、あいつのことをどれだけ見てた?

俺は、あいつのことをどれだけ知ってる?

あいつは俺の事を沢山見ててくれたし、知ってくれた。



なのにあんな終わらせ方....。

どれだけあいつを傷付けてたのだろう。






もう連絡を取ることもないであろう。


もう今まで通りには戻れないんだろう。









ーーー「Bちゃんと幸せになってね。」


別れ際のあいつの言葉が頭の中をぐるぐるする。




ぐるぐるして。

全く離れてくれない。


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― 新着の感想 ―
[良い点] もう二年ほど前の作品の様なのでコメントを見てくださるか分かりませんが…。 こちらの小説にコメントしたく会員登録しました(笑) 女の子目線と男の子目線どちらからも読めて互いの心情が分かって…
[良い点] 断られた直後の女の子の言葉は主人公がそう言わなければ強がっているようには聞こえないかもしれないけれど、数日前のプレゼントやメッセージカードからそれが確信に変わる...切ないけれどつい読み入…
2017/04/23 21:05 退会済み
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