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数日して、ついに艦隊は人工島にたどり着いた。
たどり着くと同時に猛烈な攻撃が始まった。
大砲、魔法、軍人による銃撃、小型ボートに火薬を満載しシールドに自爆攻撃をしてくる軍人もいる。
その全てをシールドがはじき返す。
私はまるで花火のような攻撃を広場にソファーを置いて眺めている。
朝も昼も夜も関係なく、彼らは全力で攻撃している。
持てる全ての力を極限まで出して攻撃を継続している。
それは全て私を殺すため!!
私を殺すため、新人類は協力している!!
今まで敵対していた国家が和平を結び、同じ戦場で戦っている!!
人種を越えた友情が生まれている!!
年齢も性別も国家も種族も関係ない!!
新人類は今一つになった!!私という魔王を殺すために!!
あああ!!これほど愉快な事があるだろうか!?
生まれて何万年も生きてきた!
ここまで時間が愛おしいと思えた事があっただろうか!?
ここまで他者が愛おしいと思えた事があっただろうか!?
ここまで私が私を認識できた事があっただろうか!?
素晴らしい!!素晴らしい!!
もっと!もっと!感情を私にぶつけてくれ!!
もっと!もっと!成長してくれ!!
もっと!もっと!!私を楽しませてくれ!!
私は花火のような攻撃をされている人工島で踊り続けた。
爆発の閃光をライトに、爆音をBGMに、振動をパートナーに、彼らの殺意敵意を観客に、歌い、踊り続けた。
攻撃は2週間も続いた。
それだけ攻撃してもシールドには傷一つ付いていない。
彼らは諦め、撤退を開始した。
汗を流し、息を切らし、喉をからして広場で一人、歌い踊り続けていた私は艦隊の撤退を知ると岬に向けて駆け出した。
そして岬から撤退する艦隊に向けて、微笑みながら小さくお辞儀をしたのだった。
そんな私を彼らは見ていた。
その顔には表情がなかった。
ただ、私をジッと見ている。
撤退する彼らに私は小さく手を振り続けた。
水平線の彼方に姿を消し、艦隊が港に着き、軍人達が家に帰り、全員が家族に己の無事を伝え終えるまで、私は手を振り続けた。
私は青虫を思い出していた。
一番最初に観察した青虫。
彼は必死に生きた。
必死に葉っぱを食べ、必死にさなぎになり、必死に羽化し、必死に空を飛び、必死に番になり、必死に次の世代を遺し、そして死んだ。
美しかった。
どんな絵画よりも、どんな彫刻よりも、どんな音楽よりも、どんな映画よりも、ずっとずっと美しかった。
今、私は青虫と同じく、とても美しい彼らを観察している。
必死に生きあがく彼らはとてもとても美しい。
泥の中を這いずり回り、顔が汚れる姿が美しい。
必死に命乞いをする姿が美しい。
泣き喚き、己の最期を知る姿が美しい。
彼らのどのシーンも全てが美しく、輝いている。
ああ、彼らはこれからどうなるのだろうか?
ああ、彼らはこれからどうしたいのだろうか?
ああ、彼らの未来はどうなるのだろうか?
私は全てを観察しよう。
例え、神と呼ばれようとも、魔王と呼ばれようとも。