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それから時間が流れ、新人類は旧人類が持つことの出来なかった技術を手に入れる。


そう、所謂「魔法」だ。


それ以外説明が出来ない。


呪文を唱えると炎が吹き上がる。

杖を構えると風が巻き起こる。

地面に模様を描くと地面が盛り上がる。


様々な魔法を彼らは開発し続けた。


そしてそれは航海術にも応用された。


帆船に風を操る魔法使いを乗せることで船を自由に動かす方法を彼らは編み出したのだ。


それからちょくちょく人工島に船がやって来た。

私が岬に現れると、最初の頃は船乗り達もビクビクしていたが、最近では手を振って来る位に懐いている。

私は手を振ることも無く、ただジッと彼らを見つめていただけだったのだが、彼らはそれでも嬉しいようだった。


実際、港の酒場で船乗り達が、

「俺さ!女神様に微笑んでいただけたよ!」

「はん!若造が!ワシなんて手を振ってもらえたぞ!」

「バッカ!俺なんて投げキッスされた事があるんだぞ!!」

とギャーギャー騒いでいた。


言っておくが微笑む事も無かったし、手を振ることも、ましてや投げキッスなんて一回もしていない。

彼らは勝手に脳内で思い込んでいるだけだ。


その内、人工島に現れる船に特殊な船が混ざるようになった。

今までの船はどこかに行く途中で人工島を通り過ぎるだけだったが、最近では人工島目指してやってくる船も多い。

バリヤーがあるからある程度以上は接近出来ないのだが、少し離れた場所で停船し何やら儀式を甲板でしている。


どうやら彼らは占い師の様だ。

各国から派遣された彼らは国の行く末を占うために人工島の近くまでやってくる。


この頃には人工島を神の島と各国が認め、私を神とした宗教が世界中に乱立していた。


それら宗教の占い師達が、わざわざ占いに来ているのだった。

彼らは毎回、美しい外見の少年少女達を生贄として人工島に捧げるべく、生贄達を簀巻きにして船から海に投げ入れている。


それはなかなか異様な光景ではあったが、これが彼らの選択ならば受け入れるしかないだろう。

かといってバリヤーを解くつもりもないし、彼らに助言するつもりも毛頭ない。

今までどおり、人工島は外界と一切の連絡をするつもりは無いのだ。


占い師達は麻薬の一種を飲み込み、巫女と共に甲板で不思議な踊りを一晩中踊り狂い、翌朝帰っていく。

国に帰ると彼らは「神から伝えられた事」として教会に様々な報告をするのだった。

もちろん私は何も助言なぞしていないが、彼らはまるで私の言葉のように無いこと無いこと報告している。


隣国とは戦争をするべきだとか、あの山を掘れば金塊が埋まっているだとか、これとこれを調合すれば不老不死になれる薬を作れるとか・・・。


よくもまあポンポンと嘘が飛び出るもんだと感心してしまう。


そして教会は国家の中枢部に「神の言葉」を伝え、それによって国家政策が作られていく。


それなりに国家の規模も大きくなっているのに、国家の行く末を決めるのが占い頼りというのはいかがなものだろうか?

ちゃんとした知識を身につけ、それによって未来を予測するという当たり前の行為を放棄しているようにしか思えない。


まあ、人も国も試行錯誤を繰り返して成長していくのだろう。

もし失敗して死んでしまったり、滅んだりしてもそれはそれで一つの立派な結果だ。

私がどうこうする必要も無いだろうし、するつもりもない。

ただ観察を続けるだけだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] こちらからは、その世界には全く干渉しない・できずに傍観するだけ、 というのが、どこか作品と読者の関係を彷彿した。 その作品世界を読むこと知ることはできても、その世界の者への干渉はできない。
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