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第二十二話 迫りくる影、健太が走る!


 突然、校庭の方から爆発音が轟いた。


 「なんだ。なんだ」と生徒達が窓際に集まって校庭を覗き込んでいる。

 健太も気になって窓から顔を出した。


 そして、その光景を見て愕然とする。


 野球のバックネットが半ばから爆発したかのように弾け飛んでいて破片がそこら中に飛び散っていたのだ。


「何があったんだ」と生徒達が大騒ぎを始めていた。


「おい、あれ? あれはなんだ?」


 一人の生徒が天を指差した。

 健太も顔を空に向ける。

 するとそこには人影が映しだされていた。

 しばらく、呆然と見ていると、男の声が降ってきた。


「グ……ラ……グラスカイザー。女は預かった。返して欲しければ大人しく出て来い」


 声の主を探して顔を巡らすと、校庭の真ん中にいつの間にか奇妙な集団が現れていた。

 遠くてハッキリしないが特撮物の戦闘員のような恰好をした二〇人くらいの集団だ。


「空を見ろ。こいつの命が大事なら黙って出て来い。一分だけ待ってやる」


 健太はもう一度空を見上げる。

 ぼやけていた映像がクリアになっていた。

 そして、そこには女生徒を後ろから抱えている戦闘員の姿がある。


「うっ、嘘だろ? 紗也香なのか?」


 健太は信じられなかった。

 捕まっていたのは紗也香だったのだ。

 教室を見渡してみたが紗也香の姿はない。

 さっき、ありさちゃんと出て行ってからまだ戻ってきていなかった。

 健太はその場にへたり込んでしまう。


「本当にあれは紗也香なのか?」


 頭がグルグルとしていた。

 意味が分からなかった。何で紗也香が人質にならないといけないんだ。

 座り込んだ姿勢のまま健太は空の映像を睨みつける。


 助けないと、やっとそこまで思考が回ったのか慌てて走り出した。

 気持ちは前に進んでいるのだが身体がついてこない。

 足がもつれて周りの机や椅子を巻き込んで派手に転げまわる。

 膝や肘を擦り剥き、顔も打っていたがそんなことは気にしていられない。


 クラスメート達が心配そうに見ていたが、そんな目も健太をイラつかせるだけだった。


 助けないと。早く助けないと。


 直ぐに立ち上がろうとしたが膝が笑って立ち上がれなかった。


「なんなんだよ。この前のコスプレイベントのことといい。いったいどうなってるんだよ。意味がわかんねぇだろうが!」


 意味もなく叫ぶがそれは現実逃避でしかなかった。

 健太に勝てる相手ではないことを本能で悟っているのか、身体が萎縮してしまって震えが止まらなかった。


 でも、でも、このままでは紗也香が……。


 グラスカイザーなんて得体の知れない物をあてにして、ただ見ているだけなんて健太には出来なかった。

 震える膝を殴りつけて何とか立ち上がるとまた走り出す。

 廊下を出て右に曲がり、階段を駆け下りる。


 そして、健太が踊り場を折り返そうとした時、ありさちゃんの叫び声が聞こえた。


「健太さん! 待って、待って下さい!」


「ありさちゃん? ありさちゃん。紗也香は! 紗也香はどこにいるんだ」


 健太は彼女に掴みかかっていた。

 力が強かったのかありさちゃんが顔をしかめている。

 それでも健太は力を緩めなかった。

 そんなことを気にしている余裕はなかったのだ。


 紗也香の無事を確認するために力一杯ありさの肩を揺する。


「痛い、健太さん。落ち着いて、落ち着いてください」


「いままで紗也香と一緒にいたんだろ? 紗也香はどうしたんだ!」


「それは……」


 その反応で健太は悟った。

 やはりあいつ等に捕まっているのは紗也香なんだと。


 健太はありさちゃんの肩を離して階段を駆け下りだした。

 もう、一秒でも時間を無駄にしたくなかったのだ。

 だが、ありさちゃんが健太に追いすがってきて、ぶつかるようにして抱き止めた。

 彼女は健太を捕まえて放さない。


「ありさちゃん。放して」


 健太はありさちゃんを振り解こうともがくが、女の子とは思えない力で抑えつけられる。


「健太さん。あなたが行ってどうするんですか?」


「そんなもの紗也香を助けるに決まってるじゃないか!」


「あなたが一人で行ってどうにかなるとは思えません! あなたがやられるだけです」


「そんなの関係ない。オレは紗也香を助けるんだ」


「健太さん。あなた死にますよ」


 死……何となく健太にも分かっていた。

 あいつ等が普通じゃないことも。

 健太が行っても何も出来ないことも。


 でも「死」と言うのは頭になかった。

 言葉に出されてやっとそれが現実になった。


 気持ちの悪い汗が全身からブワっと拭きだしてきた。


「でも、それでも行かないと紗也香が、……紗也香が」


 いつの間にか目から涙がこぼれていた。

 自分の無力が許せなくて悔しくて、膝から力が抜け床にへたり込んでしまった健太は拳を床に叩きつけながら泣いていた。


 ありさちゃんはそんな健太を覆い尽くすように抱きしめた。

 健太は彼女を見上げるように顔を上げた。


 すると、そこには何故か笑顔の彼女がいた。

 「なんでいま笑顔なんだろう?」とそんな考えが頭を過ぎった時、ありさちゃんの手が動いた。


 健太が覚えているのは彼女が握っていたメガネだけ。


 健太は光に包まれる。


 それが弾けると踊り場のガラスは激しい音をたてて突き破られた。



誤字脱字報告、感想など頂けたら嬉しいです。

次回投稿予定は9月18日19時を予定しています。

お楽しみに

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