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女性恐怖症の俺  作者:
1/2

1.転校生

これは女性恐怖症の俺と、男性恐怖症の彼女との・・・不器用な恋物語である。



 俺の名前は二ノ宮雅明。急な親の転勤でここ、学章高校に関西から転校して来た16歳や。

そして俺は今、担任の男の先生に連れられ、自分のクラスとなる教室の前に来とる。真新しい制服は何となく居心地が悪く、自然と体が制服を気にしてしまう。

そんな俺に先生は穏やかに笑い、

「それじゃ、名前を呼んだら入ってもらえるかな?」

と言った。

 転校生の定番ともいえる登場の仕方に内心苦笑しながら返事を返し、教室に入って行く先生の姿を見送り、ざわめきを抑えられない中の様子を廊下で聞いとる。

すると先生の俺を呼ぶ声が聞こえ、俺は戸を引き、教室に足を踏み入れた。


「えー・・・転校生の二ノ宮雅明君だ。二ノ宮君、軽く自己紹介してもらえるかな?」

 ざわざわと騒々しいクラスにお構いなしに、先生は俺の名前を黒板に書き、自己紹介するように俺に促してきた。

「(おぉ・・・完全にクラス無視やん)・・・え〜さっき先生が言ったように、俺の名前は二ノ宮雅明です。関西から来ました。ちょぉ言葉が訛ってますが〜・・・仲良くやって下さい」

 心の中で先生の言葉に拍手を送り、簡単すぎる自己紹介を終える。あまりにも短い自己紹介に不満そうに頬を膨らませとる奴も居ったが・・・最後ににっこりと笑って見せると、女子の悲鳴が教室に響いた。

・・・自慢ではないんやけど、俺は顔がいい方、だ。・・・まぁ小っこい頃からモデルやら何やらやらされとったら・・・自覚もするわなぁ・・・。

 てか俺ん席どこやろ?・・・あ、一つ席が空いとるやん。あそこやな・・・。・・・けど、隣女子やんけ・・・最悪やな・・・。

 でもま、寝とるって事は、俺に興味を示さん部類やから・・・まだいい方やんな・・・。他の女子はなんや目ー輝かせとるし・・・。

 俺がぼんやりとクラスを見渡していると、女子の一人が立ち上がり、興奮気味に口を開いた。

「はいはーい!質問してもいい〜?」

 その言葉に、次々と俺に質問が浴びせられる。・・・・・・特に女子から・・・。

笑顔を振りまいてはいるんやけど、俺は心の底で・・・冷や汗を垂らしとった。・・・何を隠そう・・・俺は女が大の苦手なんや・・・っ!

その理由はまた後で話すとして・・・この状況を何とかしてや!!ホンマ誰でもえーから!!

 俺の切実な願いが通じたんか・・・一人の男子生徒が立ち上がった。

「まぁ〜まぁ〜・・・二ノ宮が戸惑ってるだろ?そのくらいにしといてやれよ」

 立ち上がり、俺への質問を牽制してくれたんは・・・中々男前のやつやった。そんな奴に言われたんや。女子はすぐに大人しくなり、俺は内心舌を巻く。

「いやー悪いね、大島君」

「いやいや。どーって事ないですよ」

 ニコニコ笑いながら礼を言ってきた先生に男前の・・・おっと、大島って言うんやったけ。んじゃ改めて大島も笑顔で首を振り、俺の方に輝かんばかりの笑顔を向けてきた。

「なぁ、二ノ宮!」

「・・・ん?何や?」

いきなり話しかけられて、ワンテンポ遅れて返事を返したんやけど、大島は気にした様子もなく笑顔でこう言った。

「俺は大島優輝!仲良くしよーぜ!」

「・・・おぅ!」

 向けられた笑顔は・・・眩しかったわぁ・・・。・・・って、俺男が好きなんやないで?そこ誤解せんといてや?男の友情に飢えとんねん、友情に。

「うんうん。友情だね、友情。若いっていいねぇ〜」

 ぶつくさと先生が何か言っとるけど・・・まぁスルーしよか。・・・それよかよっく寝れるなぁ〜こんうるさい中で・・・。

俺が呆れたような視線を、隣の席になると思われる子に向けとると、丁度先生が俺に席に指名をしてきた。返事をしてゆっくりと近付き、椅子を引き席に着く。すると先生が、

「倉本!当分教科書もないだろうから見せてやってくれな!」

と、大きな声で言った。

 え?!先生それホンマなん!?確かに教科書類まだ来てへんけど・・・俺女はダメなんやって!!

泣きそうな思いで先生の方を向くと同時に、隣の女の子も・・・伏せていた顔を上げ、すごい形相で先生を見てた。

 ・・・何や。この子も嫌なんやろか?

横目に見えた彼女の顔に、どこか必死な色が見えてそんな事を考えとると、先生はいつの間にかいなくなっとった。

何となく気まずくなった俺は、必死に考えを巡らせ、一応隣の席なんやし自己紹介しようと思いついた。

「えーっと・・・」

「え?!」

 いや・・・そんなに過剰反応せんでもえーやん。

バッとこっちを向いた彼女に苦笑を浮べた。そして俺を見た彼女の瞳に、違和感を覚えたんは・・・この時やった。

 ・・・ま、気のせいやろと、自己解決して、顔だけを彼女に向けた。嫌な汗が背中を伝うてるのを気付かれんように笑顔を貼り付け、声が震えないように気をつけながら口を開いた。

「さっき自己紹介んとき、寝とったやろ?俺の名前は二ノ宮雅明・・・よろしゅうな?」

 何を言えばいいのか分からず、簡単に自己紹介をすませる。

あー・・・さっきと似たり寄ったりの自己紹介やけど・・・まぁ、えーやろ。

「あ・・・えっと・・・」

 隣から声が聞こえて、彼女に意識を戻し、俺は小さく息を呑んだ。

よくよく見れば、なんや別嬪さんがお隣さんやったみたいやわ。・・・そーいやさっきから男子の視線が痛いわぁ・・・。ゆーより・・・久し振りに女の顔、普通に見れたわ・・・。

・・・っと、なんや隣の子が百面相やっとる間に、俺の女が苦手な訳を話そか?

 俺ん家は女三人、男一人で・・・俺は一番下なんやけど・・・俺は幼い頃から姉におもちゃにされとったんや・・・。

女装はもちろん、色んな事をやらされたで・・・。

そのせいか女にはトラウマがあったんやけど、俺は中二の時、姉の友人に恋をしてしまったんや・・・。

 四歳年上だったその人には、その時すでに彼氏がいたんや。それでも、俺は好きやった。気持ちを、何とか押さえ込んで、毎日を過ごしとった。

・・・そんなある日、俺はその人に呼び出されたんや。

相手は彼氏がいる。俺の気持ちは伝えるだけ無駄なんや・・・そう思いながらも、心躍るのを抑え切れんかった。

 俺は急いで呼び出された場所に向かい、その人に・・・キスされた。

そして俺に・・・、

『彼氏と別れちゃった。・・・慰めて?』

と、迫ってきたんや・・・。

俺はすでにあの人に心奪われてて、誘われるがままに・・・体を重ねた。

それがあかんかった。分かってたんや・・・自分が最後、後悔する事くらい。でも・・・あの人の好きな気持ちをとめることは、出来ひんかった。

 俺とあの人はお互い訳の分からない関係のまま、幾度となく、お互いを慰めるように体を重ねた。最初は満たされていたんや・・・でもそれは、錯覚に過ぎんかった。あの人との関係は、姉の一言で終わりを告げた・・・。


『ねえ・・・雅明・・・』

 俺は姉に呼ばれ、進めていた足を止め、後ろを振り返った。そこには言いにくそうに顔を歪めた、姉の顔があった。

『なんや?』

『その・・・ね』

『?言いたい事があるならさっさと言ってや』

 言いにくそうな姉を見かね、俺は笑顔を見せた。そんな俺に、姉は顔を歪め、泣きそうな顔で・・・、

『咲、夜・・・彼と、別れてないわ・・・よ』

と、詰まりながら告げてくれた。

あぁ・・・と、俺は目を細め、上を見上げた。うすうす気付いてはいたんや。あの人が・・・咲夜さんが、彼氏と続いている事くらいは。

 その事を姉に告げると、姉は悲痛そうに顔を歪め、ごめんねと呟き、階段を駆け上がり自分の部屋に戻っていってしもーた。

それ以降、俺は咲夜さんと連絡を取るのを止め、女を信じないと・・・心に誓ったんや。

 笑顔で近付いてきても、心の底では、何を考えているのか読めんやん?それが・・・俺の心の傷を抉り・・・恐怖を、引き起こすんや・・・。

でも・・・俺は、女性恐怖症を克服したい。そしてもう一度・・・恋がしたいんや。


「私は」

 あ・・・あかんあかん。俺は今この子と話しとったんや・・・。

耳に届いた声に意識を引き戻され、隣の子に視線を向ける。その子はどこか強張った笑みを俺に向けながら、

「倉本咲夜、です。えと・・・よろしくね?」

と、言った・・・。

 今姉達に俺の顔を見せたら・・・きっと間抜け顔というんやろな・・・。それほどまでに俺は、この子の名前を聞いて、衝撃を受けたんや。

まさか・・・あの人と同じ名前やなんて・・・夢にも思わんかったわ・・・。

「・・・よろしゅうな」

 笑顔を貼り付け、倉本・・・さんの言葉に返事をする。・・・引きつってへんか、心配やったけど、ちゃんと笑えてたみたいやな。

 姿勢を正し本を読み始めた倉本さんを横目に見て、俺はそっと息を吐いた。・・・そしてその数秒後、俺はクラスの女子に囲まれていた・・・。

・・・・・・誰か助けてやぁあぁあああぁああぁぁあ!!


これが、彼女と俺との不器用な恋の始まりでした。







ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

誤字脱字、感想、意見等々・・・是非とも仰って下さい。

これからもよろしくお願い致します。

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