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《荒れる髑髏マシーンは弱い》【シナリオ】

作者: 牝牡蠣

<登場人物>

エヴォーズ(⁇)

髑髏の顔を持つアンデッドマシーン。

ロックタイト(16)

ヴァンパイア・ガングロスのリーダー。

ケイ(12)

生きたサーフボードを持つ銀髪の日焼け少年。

ジャンヌ(13)

機械の赤い身体を持つ少女。

ラビット(15)

エヴォーズのガールフレンド。バンダナがおしゃれ。

キャピル(17)

ヴァンパイア・ガングロスの副リーダー。


***


1 

《昼。どこかの紛争地。閑散としている。

ひび割れたレンガ壁がある。そこには、巨乳のらくがきと言葉“high speed erotic cool”がある》

ナレ『 “ハイスピード・エロチック・クール”それは、伝説のグラフィティーアーティスト(以降GA)ウィッチリム・モンズ・ダイスト(以降、W・M・ダイスト)の言葉である』

《折れた花茎のように曲がった国旗。

W・M・ダイストはそれにぶら下がりながら、鼻歌まじりにスプレーでレンガ壁に落書きをしている。

大きなマスクとか細い四肢、汚れた半ズボンと上着は、彼を子供のようにさえ思わせる》

ナレ『彼は非戦争を謳い、弾丸の飛び交う戦

場で、GAとして在り続けた』

《戦車の大砲はじりじりと動く。W・M・ダイストに照準を合わせている。そして火を吹く

  W・M・ダイストは身を翻し弾丸を避ける。

着弾したレンガは吹き飛ぶ。

それとともに発生した爆風に身をゆだね、W・M・ダイストは天高く舞い上がる》

ナレ『英雄である』


《多種多様な容姿のGA達が1でレンガに描かれたグラフィティーを中心に集っている》

ナレ『そんな彼の行動に感化された人々は、彼のようなGAを志した』

《様々なGAの光景。

暁の日を浴びながら海岸でランニングする者。

GA同士で技術を競い合う者。

汚いアトリエでひたすらにグラフィティ

の練習をする者》

ナレ『そのためにGA達は日夜、グラフィティーの美しさそして速さ、アクロバットのための身体、そしてエロチック=愛を鍛えているのである』

《とことどころが錆びれ、紋様にさえ見える銅製のランキングボード。

ボードの上部にW・M・ダイストのマスクが縁取られている》

ナレ『そんなGA達はW・M・ダイストの名を冠したランキング“パルプ・ウィッチリム・レコーズ”へのランクイン、すなわちGAにとって最高の栄誉を目指しGAバトルに明け暮れる』


 《昼。荒廃した町の往来。建物の形骸が剥きだしになっている箇所さえある。

  人気はない。

スカルマシーンマン・エヴォーズと、

アウトロー集団ヴァンパイヤ・ガングロス(以降、V・G)下っ端二人が向き合っている。

下っ端二人は車に乗っている》

ナレ『そして、この妖しげな男、スカルマシーンマン、エヴォーズもその一人である』

 

    *    *    *


エヴ「なぁ。今俺、GAバトルする気ないんだけどなぁ」

下A「うるせえ。こっちにはその気があるんだよぉ」

エヴ「押し売りの喧嘩か……。価値は低いが、買うしかないか、もう」

下B「おらぁ!行くぞおっ!」

《突っ込んでくる下っ端二人の車》

《懐からスプレー缶を出すエヴ》

エヴ「俺は安値の喧嘩でも、本気で行くぜ」

《エヴォーズの足が変形し、ロケットバーニアのようになる。

エヴォーズは車に轢かれる寸前に空へと思い切り飛び立つ。

蝶のようなアクロバットで下っ端二人を惑わす。

突然のことに昏倒とした下っ端二人の隙をつき、一気に急降下して、車のヴァンパーを踏み潰す。車体は撥音を鳴らして大きく歪む。

あまりの衝撃にのびる二人。エヴォーズは彼らの顔面に落書きをする》

エヴ「よぉし、片付いた。帰るとするか」

《帰路へと着くエヴォーズ。

建物の影から現れるW・M・ダイスト》

WM「ま、頑張れよ、生粋ボーイ……」

 《そのまま音もなく、蜃気楼のように消える》


《昼。廃ビル内のエヴォーズのアジト。コンクリートが剥き出しで、壁が抜けている箇所もある。そのため、アジトの床には砂利が薄く積もっている。

エヴォーズは勢いよくドアを開けて入ってくる》

エヴ「たっだいま~。オオ、二人とも帰ってたのか」

《サーファーキッズ・ケイは床に座りながら緑色のサーフボードの手入れをしている。

エヴォーズの声に気づき、振り向く》

ケイ「お帰りっ!エヴォーズ!遅かったねっ!またバトルしたのっ!」

《マシーンガール・ジャンヌはベニヤで作られた机の上ではんだごてを使いながらエヴォーズを見ることなく機械修理に熱中している。

ジャ「またGAバトルですか?無用な戦闘はエネルギーの無駄遣いだとあれほど言ったでしょう……」


《エヴォーズは愛用のソファの元へと歩く》

エヴ「V・Gの奴らに絡まれたんだ。でも、今回も俺が勝ったぜっ!もちろん、ハイスピードにクールになっ!」

《ソファに飛び込むエヴォーズ》

エヴ「そういや、ラビットはどうした?」

ケイ「お買い物に行ったよ。絆創膏と包帯を買いに」

《アジトに駆けて来る足音。ドアを勢いよく開けて入って来たラビット。

  入って来た瞬間にエヴォーズを視界に捉える》

ラビ「エヴォーズっ!大丈夫ゥゥゥ!?」

《エヴォーズに駆け寄るラビット》

ラビ「またケンカしたって聞いたんだけど!どこもケガしてない?元気そうで良かったけど……」

《あまりの勢いに押され、立ち上がり後退りするエヴォーズ》

エヴ「お、おう……」

《ラビットはエヴォーズを追いながら責める》

ラビ「ダメよ。仲良くしなくちゃ。V・Gのロックタイトさんはお友達じゃない」

《ラビットの横を通り過ぎるエヴォーズ》

エヴ「だ、だけど、ケンカを売ってきたのは向こうの方だぜ……」

《ラビットはエヴォーズの方へキッと向き返ると後頭部を鷲掴みにする。

エヴォーズは呻き声をあげながら悶絶する》

エヴ「がぐぎぎ」

ラビ「ケンカは両成敗です。誇り高きGAはそんなことしませんっ!」

エヴ「わかった、わかった。やめてくれ」

《エヴォーズの言葉に疑心を募らせるラビット。

ラビットは何かを想いつき、ポイとエヴォーズ投げ、パンと手を叩く。

エヴォーズは壁に激突し、めり込む》

ラビ「そうだ!今度、V・Gの皆さんを呼んで、このアジトでパーティーを開きましょう!」

《ラビットの満面の笑み。

ケイやジャンヌも興味を示す》

ケイ「楽しそう!」

ジャ「パーティーですか。手伝います」

《はしゃぐラビットとケイとジャンヌ。

痛む頭を抱えながらソファに座るエヴォーズ》

エヴ「……。ったく、ロックタイトのヤローは何をやってんだか」


《夜の繁華街。地べたに座りながら男達が酒を飲んでいる。

  V・Gの看板。

地下のV・Gアジト、団長の部屋。

大きなソファーに鎮座するロックタイト。

その姿は両肩のショルダーアーマーとマントの黒から覗く白いYシャツが印象的である。

部下のキャピルと会話をしている》

ロッ「傷害、窃盗、その他もろもろ。GAにあるまじき行為だ。ここ最近、あまり良い噂を聞かない」

《ロックライトは前のめりになりキャピルを見つめる》

ロッ「副長のお前に聞きたい。最近のV・Gをどう思う?」

キャ「いやぁ、そんなことあるわけないじゃないっすか!窃盗とかいってますけど、それだって借りたんですよ!互いの話し合いが少しうまくいかなかっただけですよ」

《キャピルの真正面に立ち、向かい合うロックタイト》

ロッ「お前の意見はわかった。俺は仲間を疑うようなことは極力したくない。俺はお前を信じていいなだな」

《キャピルの目を覗くロックタイト。右目のV・G団のメークを見せる》

ロッ「この右目のV・Gに誓って。」

《笑うキャピル》

キャ「誓いますって!そんなに言い寄られると、誓えるものも誓えませんってば!」

《怪訝な顔をするロックタイト。はぐらかされていると感じるが言い出せない》

ロッ「あまりことを荒立てないように下にも伝えておけ。問題は早めにけりを付けたい。もういい。行け。」

《反転し、退室しようとするキャピル。背中越しに語りかけるロックタイト》

ロッ「GAの流儀を……。忘れるんじゃないぞ……」

キャ「わかってますよぉ~」

《キャピルは団長の部屋を後にする。

『心の声』》

キャ『GAの流儀?そんなもん……。ポンコツじゃないっすか』


《暗い路地の酒場の外観。ネオンライトが妖しく光る。

引き続き『心の声』》

キャ『ホンモノの流儀ってのは……』


《酒場の中。小奇麗な店内。

キャピルは酒場の奥へと進む。

ギャングの配下にあるらしく、浮浪者ではない、整った身なりの人々が目立つ。キャピルはすれ違ったウェイトレスにさけの注文をする。

ウェイトレスは空返事をする。彼を一人前の客とみなしていないよう》

酒場の奥の個室で酒を飲んでいるギャングの男。その隣に個室に入ったキャピルは座る》


    *    *    *


キャ「アニキみたいなのをいうんですよ。本当にあそこのへぼロックには、ほとほと嫌気がさして……」

《キャピルは酔いがまわって、ギャング男の肩を抱いている。ギャング男は何も苦笑している。

ウェイトレスを呼びつけると酒を注文する》

キャ「みんな、アニキみたいな奴を求めてるんすよぉ~!」

ギ男「そうか?GAもそれはそれでカッコいいじゃねぇか……」

キャ「アニキは命張ってるギャングじゃないすか!お遊びのGAとはわけが違いますよ!」

《キャピルはウエイトレスが持って来た酒を一口飲む》

キャ「GAなんてねぇ、ただの遊びなんですよ。でも、なんでアニキの組がエヴォーズ達をやるんですかぁ?」

ギ男「んん。まぁ、領地の取り合いってところか。俺ね、今回のヤマを成功させないとやばいの。まぁ、ここにいる時点でかなりヤバイんだけどさ」

ギャ「大丈夫っすよ!V・Gの奴らもアニキのカリスマ性にみんな惚れ惚れですし!エヴォーズ倒してここを手に入れるのも時間のもんだいっすよ!でも、あいつらをどうやって倒すんですか。なかなかの強敵ですよ」

ギ男「そうゆうときはなぁ……」

 《ギャングの男は懐を漁って、一枚の写真をギャピルに見せる。その写真にはラビットが写っている》

ギ男「女を使うんだよ」

ギャ「さすがアニキですねぇ!キレてるっす!じゃあ、仲間にラビットパクらせるっす!」

ギ男「そうか、こいつラビットっていうのか……」

 《写真を見る二人。舌なめずりする》

ギ男「いい女だなぁ」

ギャ「いい女ですよねぇ……」


 《夕刻。エヴォーズのアジト。窓辺で物にいに耽るエヴォーズと掃除をするケイとジャンヌ》

エヴ「風が生温かい……クールじゃねえな」

ケイ「ちゃんと掃除してよっ!ラビットに言われたでしょ!」

ジャ「ちゃんとしないと、お仕置きします」

 《エヴォーズの只ならぬ雰囲気に何かを察するケイ》

ケイ「どうしたの、エヴォーズ?」

エヴ「胸騒ぎがする。GAとしての俺のセンサがビンビンいってるぜ……」

ケン「ふーん。僕にはわかんないや」

ジャ「右に同じく」

 《掃除をサボって、窓辺に三人並んで夕空を眺める》

 《夕刻。人気のない道。買い物帰りのラビットがいる》

ラビ「今月もピンチだわぁ。ジャンヌちゃんの機械修理だけじゃ火の車ね。ケイくんも食べ盛りだし、パーティのことも考えなくちゃ……。ああ、良妻って大変だわ……」

 《自惚れるラビット。怪しい二人がラビットの背後から現れる》

 《怪しい二人はラビットに襲い掛かる》

 《悲鳴をあげるラビット》



《夜。V・Gのアジト通路。ロックタイトが歩いている。『心の声』》

ロッ『V・Gの悪態はやはり、長たる俺の責任か……。おれはGAとして、奴らをどう導いてやればいい……』

《倉庫の前を通りかかるロックタイト》

《倉庫の中の物音に気づき、中を覗く。そこに、不審な素振りを見せる五人の下っ端とキャピルがいる》

ロッ「お前達!何をしているんだ!」

キャ「武器の手入れですよ。今度のエヴォーズとGAバトルするんで、必要かと思って」

《不敵に笑う下っ端五人とキャピル。それを見て激高するロックタイト》

ロッ「そんな危ないものを使うなんて……!GAの流儀を忘れたかっ!お前達っ!」

キャ「知ってますよ、それぐらい。まぁ。とりあえず」


《キャピルは懐から銃を取り出す》

キャ「死んどけや」

《弾丸は二の腕に当たる。倒れるロックタイト。それを見て笑うキャピルと下っ端五人》

キャ「そうだ、最後にアンタにいいもん見せてやるよ!」

《下っ端は倉庫の置物の陰から、ラビットを引っ張りだす。彼女は手と体を縛られ、さるぐつわをされている》

キャ「いい女だよなぁ。エヴォーズを倒した後に俺の女にするんだ」

《キャピルが銃でラビットの体をなめまわす》

キャ「まあ、その前に死ぬのはロックタイト、あんただがな!」

《仲間の謀反に呆然とするロックタイト》

キャ「なんだぁ、もう瀕死かぁ?GAも所詮はその程度かっ!」

《キャピルと下っ端五人は大笑いする。それを見ていたラビット、『心の声』》

ラビ「どうしよう!このままではロックさんが!」

《ラビットは倉庫内にあったガスの缶を見つける。ラビットはその缶に目掛けて渾身の体当たりをする。缶から白い煙が勢いよく出る》

《驚くキャピルと下っ端五人。ラビットは叫ぶがさるぐつわのため喋れずに声をだす》

ラビ『逃げてっ!ロックさんっ!』

《キャピルがラビットの腹を蹴る》

キャ「テメェ、このアマ、調子のんじゃねえ」

《ラビットは痛みで伏せる。目でロックタイトに『にげて』と訴える》

《それを察したロックタイトは、苦渋しながらも逃げる》

キャ「追え、追え!」

《ロックタイトを追って倉庫から飛び出す下っ端五人。キュピルは伏せたラビットを見る》

キャ「ったく。このアマが」

 《ラビットはキュピルを睨んでいる》


10

 《夜。エヴォーズのアジト。エヴォーズとジャンヌがいる》

エヴ「遅いッ!ラビットも遅いし、それを捜しに行ったケイも遅いし……。GAはハイスピードが肝心なんだよぉ!」

 《ドアの方からの物音がする》

エヴ「おっ。やっと帰ってきたか」

 《勢いよくドアを開けるエヴォーズ》

エヴ「遅いよぉ!いつまで待たせるんだぜっ!」

 《そこには、ドアの前で倒れたロックタイトがいた。息も絶え絶えでエヴォーズにすがる》

ロッ「エヴォーズ、すまない、ラビットさんが……。エヴォーズ……」


    *    *    *


《ロックタイトをソファに寝かせ、手当てをするジャンヌ。エヴォーズはそれを壁に寄り掛かりながら見ている》

エヴ「つまり、ラビットはギャングと手を組んだV・Gの悪漢共にさらわれたというわけだな」

《上半身を起こすロックタイト》

ロッ「そうだ。これは俺の責任なんだ。これは俺の問題だ。俺が何とかする……」

《ロックタイトはフラフラとエヴォーズのアジトを立ち去ろうとする。それを止めるエヴォーズ》

エヴ「待て。V・Gの悪漢共の所に行くのか?」

ロッ「そうだ。奴らにGAに流儀を叩き込んでやる」


《エヴォーズはロックタイトの真正面に立ち、顔を覗き込む》

エヴ「俺としちゃ、ケガ人を死地に向かわせることに少しばかり抵抗があるんだなぁ。それにな。仲間を仕切れねえお前にラビットの命は預けられない」

 《エヴォーズの威圧に正気を取戻すロックタイト。悔恨の念を表情に漂わす。エヴォーズはロックタイトをソファに誘導し、自身も深々と座る。その姿勢には鋭さがある》

エヴ「とりあえず休もう。向こうから何か言ってくるだろうから」

 《ケイの足音が聞こえた。何か騒ぎながら向かって来る。かなり取り乱している様子。アジトに飛び込むなり、走り回る。手には挑戦状を握りしめていた》

ケイ「大変だよ~!ラビット姉ちゃんを賭けたGAバトルの挑戦状が届いたよぉ~!」

 《エヴォーズはケイから挑戦状をとり上げる。ピタリと走るのをやめるケイ》

エヴ「でも。まあ要するに、俺達がこのGAバトルに勝てばいいわけだろう?」

 《エヴォーズは笑う》

エヴ「これはお前達V・Gだけの問題じゃない。この胸に秘めたGAのプライドが懸かった問題だ。そんなら、俺達は正々堂々とGAとして戦うだけだろう?」

 《エヴォーズはケイとジャンヌに目を見据える》

エヴ「なぁどうだ?ケイ?ジャンヌ?」

 《華が戻るケイとジャンヌ》

ケイ「ぼくはいいよっ!ラビット姉ちゃんをさらった悪い奴らだもんね!やっつけて懲らしめてやろうよ!」

ジャ「私の計算では勝率90%以上です。エヴォーズの意見に反論はありません」


 《二人の意見を聞いたエヴォーズは腰を上げる。ケイとジャンヌを背にロックタイトと向かい合う》

エヴ「と、いうことで、悪いが今回のバトルは俺達も全面的に混ぜてもらう。俺達GAの流儀を見せてやろうぜ」

 《エヴォーズの情けに感極まり顔を伏せるロックタイト。自らに言い聞かせるように》

ロッ「この恩は行為でかえす。俺はあいつ等と本気で戦う……」


11《夜明け頃。町の広場。キャピルを中心とした悪漢集団は大量の小銃と車両を澄んだ空気にちらつかせながら、エヴォーズ達の到着を待っている。

始めてみる銃器を物珍しげに見ている。集団の中心にはV・Gの旗が掲げられている。その近くにキャピルは無線でギャングの男と会話している》

キャ「大丈夫ですよ、アニキ。こんなに武器も調達してもらったんですから。きっちり倒して、恩を返しますよ。これからもよろしくお願いしますよぉ、アニキぃ」

 《エヴォーズとケイとジャンヌとロックタイトが現れる。

ケイは緑色のサーフボードを持ち、

ロックタイトは黒いインラインスケートシューズを履いている。

エヴォーズとジャンヌは今までどおりの格好。

悪漢集団は彼らを取り囲む》

エヴ「来たぞぉぉっ!」

 《集団の中からキャピルが出てくる》

キャ「よく来たなぁ、エヴォーズとその一味!それにロックタイト!」

《名をよばれても動じないロックタイト。

キャピルはつまらなそうな表情をする》

キャ「それじゃあ、今回のGAバトルのルールを決めさせてもらう。

俺は複雑なルールが嫌いだから、単純なのにさせてもらう。あの時計塔に人質の女がいる。そいつを取れ返せたらお前らの勝ちだ。道中には俺の仲間がいる。くれぐれも倒されないようにな!今から一分後に開始だ」

《悪漢達は奇声と銃器を擦り付ける音を上げながら沸き立つ。

集うエヴォーズとケイとジャンヌとロックタイト》

エヴ「俺は時計塔に向かう。ケイとジャンヌは派出に暴れてくれ」

ケイ「オーケー」

ジャ「わかりました」

ロッ「ロックタイトは」

《エヴォーズはロックタイトを見る》

エヴ「あの生意気のデコにたんこぶつくってやれ。よし!行くぞ!」

《四人はそれぞれ四方へと駆けていく。

悪漢達の狂乱は最高潮になる》


    *    *    *


キャ「一分経ったぞ!そら行くぞ!あいつら全員蜂の巣だぁ!」

《悪漢共は爆音を立てながら一斉に四人の後を追う》


12

《細い裏路地。ケイはそこを縫う様に走る。表通りからは悪漢共の叫び声が聞こえる》

ケイ「ここなら良さそうかな?」

《ケイは手に抱えていたサーフボードを置いて、それに乗る。目をつむり精神集中をする》

悪A「いたぞ!小僧がいたぞ」

《悪漢Aがケイに近づいてくる。そして、ケイの姿を見て笑う》

悪A「波もないのにサーフボードなんて、僕ちゃんはずいぶん余裕でちゅねぇ~」

《ケイはなんの反応もしない》

悪A「じゃ、手柄は俺貰うわ」

《悪漢Aはケイに銃口を向ける。

ケイは目を開け悪漢Aを見る》

ケイ「波は来たよ」

《ケイは胸に手をあてる》

ケイ「ここから来た」

《サーフボードは光る》

サー「ビート感知。ビート増幅装置始動。周りに注意されたし」

《ケイを乗せたサーフボードは徐々に浮く。眩い光を発する》

サー「波に乗れ」

《サーフボードからエネルギーの波が溢れ出す。狭い路地であるため、波の流れは強い。悪漢Aはその波に飲まれる。

ケイはその波に乗り、表通りへと出る。通りで待ち構えていた悪漢やその車を次々と飲み込んで行く》



サー「ビート増幅装置に異常なし。完璧だ、ケイ」


13

 《空を飛ぶジャンヌを車で追いかける悪漢共。ジャンヌの姿に呆気にとられている》

悪B「あいつ、空飛んでるぞ‼」

《笑うジャンヌ》

ジャ「前に気を付けたらどうですか」

悪B「?」

《悪漢共の前に突如、トラックが現れる》

悪B「うわぁ〜っ‼」

《トラックに衝突し、ボロボロになる悪漢共》

《空中のジャンヌ》

ジャ「私が開発した物を見えなくする塗料です。こちらは片付きました。任務完了です」


14

 《駆けるロックタイト。それをオープン車二台で追うキャピル》

キャ「おらおら、逃げてばっかいるんじゃねぇぞ!遊んでやるって言ってんだよ!ロックタイトちゃんよぉぉ~」

《振り返りスプレーを構えるロックタイト》

ロッ「これが俺のGAだっ‼うぉぉぉっ‼‼」

《車に向かい駆け出すロックタイト。衝突の寸前にヴァンパーを蹴り、マントをはためかせ宙に舞う。狙いを定めるロックタイト》

ロッ「シティーズ・オブ・ザ・レッド・ナイト‼」

《スプレーをキャピル達の目に目掛け正確に噴射。のびるキャピル達》

キャ「ああっ‼目がぁ〜‼」

《着地したロックタイト》

ロッ「見たかキャピル!これがGAの流儀だ!」


15

 《日の出頃。時計塔の上。ギャングの男とその傍に縛られたラビットがいる。

  足元には袋包みの爆弾がある。

ギャングの男は望遠鏡で悪漢達の様子を窺っている》

ギ男「あーあ。やっぱガキんちょはダメだな。手が甘いやぁ……」

 《ギャングの男に背後にエヴォーズが着陸する》

エヴ「よぉ。あんたが悪漢共の親玉だな。ラビットは返してもらうぞ」

 《エヴォーズが近寄ろうとすると、ギャング男はラビットに拳銃を突きつける》

ギ男「それ以上動くな!今から俺の言うとおりにしないと、この女を殺すぞ」

 《エヴォーズが動かないことを確認するギャング男。

  日が昇り始めている。

ラビットを銃で誘導しながら、時計塔のヘリに立つ。

  落ちたらひとたまりもない》

ギ男「ここから飛び降りて死ね。そうすれば女の命は助けてやる。さぁ、早くしろ。でないと女は死ぬぞ」

 《ギャング男の言葉に感情の揺らぎはない。

しばしの間。グダグダ…なぜ突っ込む?

ラビットとのアイコンタクト。

  覚悟を決めるエヴォーズ》

エヴ「いいだろう。だがな……」

 《エヴォーズの足がロケットバーニアになる》

エヴ「お前も道連れさッ!」

《ギャング男に飛び込んでゆくエヴォー

ズ。

ギャング男は銃をエヴォーズに向ける。

エヴォーズは撃たれる前にギャング男の懐に入り込む。

ギャング男の腰をを抱え込むとそのまま宙へと舞い上がる。

ギャング男はあまりのスピードに悲鳴を上げる》

エヴ「いいことを教えてやる。GAの信念ってのはな、お前のちゃちい弾丸なんかとろくて当たりもしねえんだよッ!見やがれッ!これが俺のスペシャルッ!」

《エヴォーズは一回転して抱えていたギャング男を宙にほうり投げる》

エヴ「W・M・ムーンサルトだッ!」

《ギャング男はあまりの恐怖に失神する。

しばし宙にいた後、エヴォーズは時計塔に着地する。

ギャング男は時計塔のでっぱりにひっかかり宙吊りになる。

捕らわれていたラビットの縄を解き、お姫様だっこする。エヴォーズは失神しているギャング男に口上を切るように言う》

エヴ「お前の敗因はなぁ、俺の女に手を出したことだッ!」

《ラビットは頬を赤らめる。

朝日が時計塔と二人を温かく照らす。

時計塔をなめて町の全景》

《11の町の広場には、ケイとジャンヌとロックタイトがのびた悪漢のヤマの隣、廃車の上でくつろいでいる》

《エヴォーズはラビットの顔を見る。

ラビットは微笑んでいる》

エヴ「勝利の女神は微笑んだぜ……」



16

《11の町の広場。

誤解を解こうと土下座するキャピルとそれに対面するロックタイト。周りにエヴォーズ、ケイ、ジャンヌ、ラビットがいる

悪漢共はのびている》

ここ要らない?

キャ「すまなかったッ!嘘じゃねぇんだ!俺達はあいつらに騙されていただけなんだよぉ」

《呆れているエヴォーズとケイとジャンヌとラビット。

  ロックタイトはキャピルに近づく》

ロッ「なぁキャピル、GAがGAたるゆえんはな、誇りしかないんだ。俺達は誇りで生きてるんだ。それを否定したお前にはもうここにはいられない」

《ロックタイト、断然とした口調で言う》

ロッ「右目のマークを置いて出て行け」

《呆然とするキャピル》


    *    *    *


《町から出て行く悪漢とキャピルを見る一同》

エヴ「ロックタイト、お前これからどうするんだ?」

《ロックタイトはエヴォーズの問い掛けに虚ろな顔をして空を仰ぐ》

ロッ「わからない。仲間を失った今、俺に居場所などない」

《エヴォーズはそれを聞いて笑う》

エヴ「そんなのいっぱいいるじゃねぇか!ここにも……」

《エヴォーズはケイとジャンヌとラビットを手で示す。めいめいが笑顔になる》

ケイ「オッケー!ぜんぜん問題ないよ!多い方が楽しいよねッ!」

ジャ「私はあなたのマントに興味があります。ぜひとも研究させてください」

ラビ「これからもっとお料理に創意工夫が必要ね!良妻ってツライわぁ」

《エヴォーズ、W・M・ダイストの意志を全身で受けるように両手を広げる》

エヴ「GAは、志あらばみんな仲間さっ!」

《エヴォーズの傍に集うケイとジャンヌとラビット

ロックタイトは少し離れた所で照れている。

それに気づいたラビットはロックタイトの近づく》

ラビ「ねえ、ロックさん、一緒に行きましょう?」

《ロックタイトはラビットに手を引かれ、和の中に入って行く》

ケイ「あれ?そういえばギャングの男ってでうしたっけ?」

エヴ「いいさ、過ぎたことなんてどうでもいい」

《一同はアジトへと帰路に着く》


17

《朝。町の俯瞰。日が町全体を照らしている》


18

《エヴォーズのアジト。ジャンヌとケイの顔》

ナレ「GAは所詮、社会にそして大人に反抗した」

《ロックタイトとラビットの顔》

ナレ「荒くれ者であるかもしれない」


19

《同刻。廃工場。刺客によって処刑されたギャング男の顔》


20

《同刻。18の続き》

ナレ「それでも彼らは自らのプライドを信じて」

《エヴォーズの顔》

ナレ「強く、明日を行く」

《エヴォーズ達の立ち絵》


                   終


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