第3話「活動しようぜ!」
7時間目終了を告げるチャイムが鳴った。
帰り支度を始めるクラスメイトたち。ついさっきまで寝ていた奴も活き活きと目を輝かせ、教科書を乱雑に鞄の中に突っ込んでいた。
「拓也~、今日部活休みなんだ。一緒に帰ろうぜ~。」
後ろから声がしたので振り返ると、そこには八木勇人がいた。
彼はサッカー部に入っている。普通サッカー部なんてなかなか休みにならないはずだが…。
「お前、ホントに部活休みなのか?まさかサボる気じゃねえだろうな。」
「いやいや、マジで。なんなら山田や関川にも聞いてみろよ。あいつらもサッカー部だからさ。」
山田に聞いてみたところ、どうやら本当に休みらしい。ごめんな、勇人。お前飽きっぽいから、てっきりもうサッカーに飽きたのかと思ったんだ。
「まったくちょっとは俺のこと信じろよな~。んでさ、ワック行こうぜ~。」
「悪い、俺は部活あるから。」
「ああそっか。お前たしか歴研入ったんだっけ?歴研って桧山先輩がいるとこだろ?どうよ?やっぱ可愛いの?」
「そりゃまあな。」
勇人曰く、どうやら桧山先輩は学校一の有名人らしい。成績はいつもトップで運動神経も抜群。そしておまけにあの美貌。そりゃ有名になるよな。ファンクラブとかありそう。
「じゃ、また明日な。」
「おう。」
俺は勇人と別れると部室へ向かった。
部室へとつづく廊下は薄暗く静かだ。
ここには、空き教室ぐらいしかないため、人にめったに会うことはない。
「あら、新庄君じゃない。」
会うとすれば同じ部活の人ぐらいだろう。そう、すなわち…。
「桧山先輩、今日は遅いんですね。いつもは先に部室にいるのに。」
「ええ、日直だったから。」
なるほど。確かに日直は日誌を書いたり、黒板の掃除をしたりしなければいけないので帰りが遅くなりがちだ。
そういや、校門で待つように言っといたはずなのに勝手に帰っちゃう奴らとかいたなぁ…。あれほんとにやめてほしい。まるで俺なんかいなくても問題ないみたいじゃないか…。あれ?もしかして俺って嫌われてたの?俺いらない子?
「どうしたの、新庄君?深刻そうな顔して…。」
「え、いえ別に。今日の夕飯なにかなぁって。ハハハ…。」
あぶないあぶない。あやうく目から涙がこぼれ出るとこだったぜ。
うっかりトラウマを思い出してしまい、トボトボ歩いていたらようやく部室についた。
気分切り替えて部活だ部活!過去のことなんてどうでもいい!俺は前を向いて生きていくんだ!
「先輩、今日こそなんか活動しましょうよ!」
「そうね、そういえばまだちゃんと活動したことなかったわね。」
そう、まだ俺は歴史研究部っぽいことをなにひとつしていない。そろそろなにかしたいとこだが…。
「この部は名前のとおり歴史について深く研究していく部よ。そのためには新庄君がどれだけ歴史の知識を持っているのか知る必要があるわ。」
「なるほど。それもそうですね。なら何個か問題を出してください。」
「いいの?私、容赦しないわよ?」
あれ、桧山先輩の声色が少し変わった。もしかして先輩、にわかは許さないタイプ?つーか、目こえーよ。いつもの優しげな目どこいった。
こうして入部してはじめての活動は『歴史クイズ大会』となったのだった。にわか歴ヲタの俺、大ピンチ!