第12話「文化祭⑥」
学校のマドンナ的存在の人が今、我が家にいる。
しかも一泊する。
……なにこれ?ハーレムもののラノベかなにかですか?凄い嬉しいんですけど。
俺が心の中でガッツポーズしていると、姉がニヤニヤして俺に近づいてきた。
「じゃあ、お家への連絡やら夕飯やらは私が全部やるから。拓ちゃんはその子とお話でもしてて?うふふ」
姉ちゃん楽しんでるなぁ……。
俺の姉・新庄静乃は昔からこういう人間である。
俺のことをからかうのが好きなのだ。
「サンキューな」
一応礼を言っておく。
俺は姉のことが嫌いじゃない。むしろ好きだ。
あ、もちろん「好き」といっても人としてだ。近親相姦とかはごめんだぜ。
まあ、たしかに顔は可愛いと思うし、サイドテールとか俺大好き。スタイルも抜群で、性格も明るく優しい。実の姉じゃなかったら惚れてたかも知れない。
実際、高校のころとかは結構モテてたらしい。でも、誰かと付き合ったりしてるとこみたことないな。
そんなことを考えていると、桧山先輩がつんつんと背中をつついてきた。ヤバイよ、それ超可愛い。
「素敵なお姉さんね。羨ましいわ」
「そうっすか?」
俺はそっけなく答える。
ほんとは姉ちゃん大好きだけど、シスコンだと思われてキモがられたら困るからな。
「そういえば、先輩には兄弟とかいないんですか?」
俺は何気なく質問した。
「……いるわ。私にも姉が一人」
答えまでの間にわずかな沈黙があった。もしかしたらあまり姉妹仲がよろしくないのかな。だからこそ、俺の姉のことを「羨ましい」と言ったのかもしれない。
「あ、台本の読み合わせしましょっか」
これ以上深く聞くのもどうかと思い、話題を変えた。
こういうときはあまり詮索しないのが一番である。
過去に友達が突然引っ越したので、「なんで?」と聞いたら、答えにくそうに「親がちょっとね……」と言われたときはホント気まずかったなぁ。翌日、「お前の両親離婚しちゃったんだべ?マジやべー!」とか言って茶化してた奴がいたが、ソイツの神経ホントどうかしていると思う。友達笑ってたけど絶対内心辛かったと思うぞ。
台本の読み合わせは順調に進み、先輩は徐々にセリフを見なくても言えるようになっていった。
そんな時、エプロン姿の姉がやってきた。
「お二人さん、ごはんよ!」
待ちに待ったディナーである。
テーブルの上にはデミグラスソースのかかったハンバーグが。きちんとその横にジャガイモとニンジンも添えてある。もちろんライスもあるぜ。
「ふふん!どんなもんだい!」
自慢げな姉。
そう、俺の姉は優しく可愛いだけじゃない。優しく可愛く料理ができるのだ。
あ~もう!嫁にほしい!
「いっただっきまーす!」
俺はナイフとフォークでハンバーグを一口サイズに切ると、口に運ぶ。
美味い。
やはり、姉の料理は最高に美味かった。
先輩もお気に召したようで美味しそうに食べている。
やはり先輩は食べ方が上品で、もしやここは高級レストランなのではと錯覚してしまうレベルである。
「静乃さん、美味しいです。よかったら今度つくり方を教えてくれませんか?」
「お、嬉しいねぇ。いいよ~!今度教えてあげる。やっぱ作ってあげたい人とかいるの?」
「えっと……まあ……」
今、先輩がこちらを一瞬チラリと見た気がしたが気のせいだろう。特に俺は気にせずハンバーグを食べ続けた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、気がつけば俺はペロリと夕食を平らげていた。
まあ、これからもっと楽しい時間が始まるんですけどね。
……あるよね?ラッキースケベのひとつくらい。
そう、お次はみんなお待ちかねのお風呂の時間である。