Reverse.0 『世界は染まり続ける』
「この世界に大規模な感染が起こっている」
夢に出てきた自称・全知全能の神が言った。
俺が何が感染するのかを聞いたら神はムカツク顔で答えた。
「あらゆる生物に異能の力が宿る」、と。
正直、俺はそれは楽しそうでいいんじゃないか? と思った。
だが違うらしい。
「異能の力はその力を使う度に使用者を侵食していき、やがて飲み込む」
そんな説明を受けた。
何て迷惑な病気なんだ、中二病真っ青だなとか俺は他人事のように聞いていた。
だが他人事ではないらしい。
「お前が解放しろ」
聞き間違いだろうと思った。
夢の中で何を言い出すかと思いきや病気の治療ですか、俺は医者じゃないんだよバーカ。
そう言い返したら神はいきなり「お前に拒否権はない」とか言い出した。
「いや、拒否してもいいが、拒否した瞬間お前の心臓が爆発する、そういう仕掛けを仕掛けた」
嘘だろ? 神のジョークは恐ろしいなぁHAHAHAHAHA
「なら拒否してみな」
断固断る。
しかし俺はどうやらこの世界の救世主になってしまったようだった。
夢なので現実味がないのが原因なのかもしれないが、感染とやらを止めれる気がしない。
「さて、夢は直に覚める。詳しいやり方、君の能力などについては君の部屋の机に置いといた。神の直筆サイン入りのメモだ、永久保存版になるだろうから大切に扱えよ?」
そんな言葉と共に。
──神は消える。
──夢は覚める。
そして、世界は染まり出す。
ベッドから飛び起きる。
時刻は夜中の二時を指していた。
俺は歩いて机の上に置いてあるメモを無造作に取ると、読みもせずにそのままポケットに突っ込んだ。
反射的にだ。
ガシャンッ!! という音と共に部屋の窓ガラスが割れた。
中に誰かが飛び込んでくる。
ありえない光景だ、この家は3階建てで、俺の部屋は3階にあったはずなのに。
────これが感染による異能の力。
そして理解した。
俺、相崎伊助は治療者という立場になったために、全国の感染者に狙われる立場になってしまったのだ。
ありえん、ろくに生活できねーよバカ。ドMならあるいは大丈夫かも知れないが。
そんなことを考えていた瞬間、俺に向かって物凄い速度で黒球が飛ばされた。
避ける時間などなかった。