第3話「すごろく」
俺たちはすごろくをしながらテレビを見ながら討伐隊の動向を伺っていた。新魔王軍は各地に散らばりながら討伐隊と連戦を重ねていたが自力に勝る討伐隊に徐々に新魔王軍は数を減らしていった。
「そろそろここまで来るだろうな……」
「ああ。かもな」
兵士Cはするめを齧りながら呟いた。討伐隊が来たら兵士団と言っても3人しか居ない我々には勝ち目は無いだろう。そろそろ覚悟を決める時が来たようだ。
「まあ最後にすごろくをやろう」
「そう……だな」
「僕たちにはすごろくしかないしね」
俺たちは最後のその時が車ですごろくをすることにした。今更体を鍛えても、武器の手入れをしても仕方がない。それならば好きなことをやるほうがよっぽど有意義だろう。
それからしばらく経ったある雨の日。ついに討伐隊がやってきた。その数、恐らく1000人くらいは行っているだろう。俺たちを捕まえるためになんという数を派遣して来るのだろうか。税金の無駄使いだ。
「ついに来たようだな」
「ああ。どうする?」
「あの数ではとても守りきれないとにかくここから出るしかないだろう」
「え! 出るんですか。怖いですよ」
「大丈夫だ。いざとなったら今まで日々を思い出せ。きっと役に立つ」
「……」
「……」
今までの日々といってもすごろくしかしていないがそんなものが役に立つのだろうか。兵士Cを見ると顔は平静さを保っていたが膝はガクガクしていた。彼も心の中では恐怖でいっぱいなのだろう。
「いくぞ!」
「ああ!」
「了解!」
俺たちは思い思いの武器を持って外に出た。兵士Cは剣を兵士Bは手裏剣を俺は東ドイツ製のロケットランチャーを持って外に出た。外に出ると一番手前に偉そうなチョビ髭を生やしたシルクハットを被った人物が前に出てきた。確か名前は忘れたが討伐隊のリーダーだったと思う。
「お前りゃか。こんにゃ所に篭城しているのは。面倒くしゃいからさっさと投降しりょ」
「我々は魔王兵士団だ。我々はこの地の防衛を任されている。何人たりともここは譲ることができない」
兵士Cが舌足らずなシルクハットのリーダーにはっきりとした発音で発言した。
「にゃんじゃと。おみゃいら魔王が死んだのがしりゃないとは言わにゃいだろうにゃ。もう守る必要もにゃいだろう。ああ。疲れた。普通に喋ろう。だからさっさと投降しろ。貴様達のために私はこれほどの部隊を率いて来たんだからな」
「嫌だね。どうしても言うのだったら力づくで突破して見るのだな。まさか俺たちが今まで黙っていたとは思っていないだろうな。俺たちは(すごろくに関しては)強いぞ」
「なんだと!? なんていう自信だ。どうする? 魔王ジュニアよ」
シルクハットの男は隣の紫色の魔印の袴着た男に話しかけた。魔王ジュニアだって。
「坊ちゃん!」
「久しぶりだな。兵士C。昔すごろくで遊んで以来か」
「坊ちゃん。イランに留学していたんじゃ」
「ああ。親父が死んだと聞いたんでな。慌てて戻ってきた訳さ」
「なら。なぜ討伐隊にいるのです?」
「もう魔王の時代は終わりました。君たちも今すぐに武装解除しなさい。私もこれからは王宮のために尽力を尽くすつもりだ」
「そんな……」
「お前りゃ。まさか魔王の息子に牙を向けるわけりゃないだろうにゃ。魔王の息子の言葉はすにゃわち魔王の言葉もどうぜんりゃ。これは勝負も決まったようも同じだりょうな」
どうやら魔王の息子は魔王の意思を引き継がずに王宮側に付いたようだ。通りで新魔王軍があっさりと負けているはずだ。これでは勝ち目が無い。
「おい。どうする?」
「どうしよう? どうしよう?」
「これでは大義名分が無くなってしまったな」
兵士Cは手に持った剣を力なく落とした。投降するか。しかし、ここで投降すればまた、前のサラリーマン生活だ。俺たちは近くに固まってこっそりと耳打ちした。
兵士B 僕は投降するよ。
兵士C そうか。仕方がないな。Bの判断は正しいと思いますよ。しかし……あの小さかった子が向こう側に付いたか。昔から聡い子だったがやはりこうなったか。
兵士C Aさん。あなたも投降しなさい。あなたには元々、兵士のスキルは皆無でした。ただ……あなたは……すごろくの腕は確かだった。Aさんあなたはすごろくで身を立てなさい。
兵士A C。お前……。
すごろくで身なんて立てられる訳が無いがこの雰囲気ではさすがの俺も突っ込みはできなかった。
すごろくを取るか。ここでCと一緒に戦うか決断を迫られた。俺はいったいどうしたらいいだろうか。俺は思わずロケットランチャーを取ったが使い方が分からない確かに俺には兵士のスキルは無いのかも知れないな。ただ兵士Cを放って置くわけには行かない。いざとなればロケットランチャーで殴ればいい。どうにでもなるだろう。
俺はものすごく迷った。
俺は
結局すごろくを取った。
兵士A Cすまん。俺はすごろくを取る。俺はすごろくで身を立てるよ
兵士C Aさん。あなたならできます。今まであなたとすごろくができて楽しかったですよ。
「坊ちゃん。覚悟……はああああああ!」
「そう来ましたか。皆さん手出し無用ですよ。この人は私が相手します」
兵士Cは討伐隊に向かって行った。今のその雄姿は俺の脳裏に焼き付いている。とても立派なやつだった。最後だけ戦い抜き最後は捕らえられた。俺と兵士Bは大人しく捕まった。
しばらくして俺と兵士Bは開放された。兵士Cがどうなったかは分からなかった。討伐隊のやつに聞いても何も教えてくれなかった。俺は兵士Cが残してくれたサイコロを握りしめて誓った。必ずすごろくで身を立てて見せる。
数年後……。
俺は今、すごろくで身を立ててすごろく御殿で優雅な暮らしをしている。きっと兵士Cもどこかで生きているだろう。今なら兵士Cを探して助けだしてやれるのだが消息が掴めない。
兵士C俺はお前が言った通りにすごろくで身を立てられ……る訳ねえだろうが! すごろく御殿などまた夢も夢。精々会社帰りにスロット目を回す程度の日々だ。でも兵士Cにもらったこの生命を大切に使うことにしている。兵士C。もし生きていたら酒でも飲もう。お前のおごりだけどな。全く騙しやがってよ。その場の勢いとは怖いものだ。あの時は本当にすごろくで身を立てられる気がしたものだ。長くなったが生きているなら連絡が欲しい。またすごろくでもやろう。




