第2話「俺たちには此処しかない」
俺たちは魔王が死んだのが信じられずに大分長い間黙っていた。魔王軍の旗色が悪いという話は聞いていたがここまでだとは思わなかった。意外に勇者の奴はやるやつだったみたいだ。
「本当だ」
「マジですね」
「マジだ」
「おい。どうする。俺たちどうするんだよ」
慌てふためく兵士B。おかげですごろくが机から滑り落ちて地面に落ちてしまった。せっかく上がりだったのに。
「いきなり無職じゃないかよ」
「だから言ったんですよ。やばいって俺は入る気はなかったのに。Aが……」
「何言っているんだ。お前が今最先端でこれから絶対伸びるって言ったから入ったんだぞ」
「僕のせいですか」
「お前のせいだろうが」
全面的に俺のせいだがノリで魔王軍兵士Bのせいにしてみることした。そこに兵士Cが止めに入ってきた。
「おい。止めろ。それよりも早く武装解除してここを放棄しないとまずいぞ。王宮から魔王軍の残存部隊を狩る軍勢が編成されているだとよ」
「早く……ここから出ましょう!」
「他のやつはどうなったんだ」
「えーと。待てよ。なになに。魔王様に信仰の篤いやつらは各地から兵を集めて戦い続けると声明が出されているだとよ」
兵士Cがテレビのテロップを読み上げてくれた。魔王様はいい加減なやつだったが意外に慕われていたのだと改めて感じた。
「俺はごめんだぞ」
「それは僕も同感です。先が見えてます」
「俺は最後まで戦うぞ」
兵士Cはかつて魔王に一番近い男だったからか知らないがそんなことを言い出した。本当に馬鹿なやつだがその選択もありなのかも知れないな。俺もここから追い出されれば行く所がない。
「やめろって」
「じゃあこれからどこに行けって言うんだよ」
「俺はもう行く所がない」
「確かに僕も行くところがないですね」
「俺はそれならせめて最後まで戦って死にたいよ」
兵士Cは詰所の窓の手すりに手を置いて遠い目をした。魔王様に左遷されたのにそこまで魔王様を慕っていたとは知らなかった。
「兵士C……。お前」
「んじゃ。行ってらっしゃい」
「うん。僕らはここを放棄するよ」
俺たち2人は兵士Cを置いて行くことにした。死にたがりの馬鹿には付き合っていられん。冗談だが。
「軽いな。おい。お前らはどうなんだよ」
「そうだな。……よし。魔王様が守れと言ったんだから最後まで守ろう。俺にはもう行く所が無いしな」
「確かに……そうだね。脱サラして今更行くところなんてないしね。最後まで付き合うよ」
「お前ら……よっしゃ! せめてここだけでも守る切るぞ!」
「ああ」
「ですね」
俺たちは固く握手をしてこの片隅の詰所を守り切ることにした。何も無い俺たちには何も無いこの詰所を守ることしかできないのだ。俺たちにはお似合いだなと思った。




