第30話『教師、絶対防御。挑戦者たちを圧倒!』【学園行事編:戦陵祭⑦】
戦陵祭二日目、魔法の部。
昨日の剣技部の盛り上がりに続き、今日も学園中が沸き立っていた。
「火炎弾っ!」
「氷結陣!」
「風刃乱舞!」
舞台の上では、各クラスの代表が華麗に魔法を放ち、観客を魅了していた。
クロス組は“出場禁止”だったため観客席から観戦するしかなかったが、生徒たちは目を輝かせて声援を送っていた。
やがて決勝戦。
火と雷を自在に操る実力派クラスが優勝を決めた。
大歓声の中、代表生徒たちは勝ち誇ったように壇上に立ち――ふいに視線を横に向けた。
「……カイ先生。あなたのクラスは剣で優勝したそうですね」
「せやな。みんなよう頑張ったわ」
「ですが――魔法こそ本領。もし本当に“最強”を名乗るのなら……我々に挑んでいただきたい!」
観客席がざわめいた。
「おいおい……先生に挑むってマジかよ」
「でも見てみたい! カイ先生の魔法戦!」
期待と好奇心が一気に広がる。
カイは腕を組み、しばし考え――笑った。
「……しゃあないな。ほな全員まとめてかかってきぃ」
「なっ……全員相手に!?」
「教師はクラス相手にせなあかんもんやろ?」
その言葉に、会場がどっと湧いた。
◆◇◆
試合場にカイが立つ。
対するは魔法部優勝クラス、十数名。
審判が困惑しながらも、学園長の一言で試合開始が宣言された。
「始めッ!」
轟音と共に炎、雷、氷、風の魔法が一斉に襲いかかる。
舞台は一瞬で光と爆発に包まれた。
「先生っ!」
クロス組の生徒たちが叫ぶ。
だが――爆煙の中から現れたカイは、無傷だった。
周囲にうっすらと波紋のような空気の揺らぎが見える。
「これは……?」
「攻撃が、全部……弾かれてる!?」
観客が息を呑む。
カイはチョークを片手に、さらさらと宙に数式を描いた。
「∮E・dS = 0。ワイの周りの魔力流は全部ゼロに収束。名付けて――絶対魔法防御や」
次の瞬間、再び炎と雷が降り注ぐ。
だが全てが見えない壁にぶつかり、かき消されていく。
「ば、馬鹿な……!」
「どんな魔法も届かない……!?」
さらにカイは指を鳴らした。
「ほな次は反作用や。ΔE = –∂Φ/∂t」
見えない波紋が広がり、優勝クラスの生徒たちの魔法がことごとく暴発。
火は煙に、雷は静電気に、氷は水に、風はただのそよ風に。
「う、うわぁぁ!」
「もう撃てない……!」
十数名の挑戦者が膝をつき、立ち上がれなくなった。
観客席から大歓声。
「カイ先生すげぇぇ!」
「教師が最強じゃねぇか!」
審判が震える声で叫ぶ。
「勝者――カイ先生!」
会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
その直後。
舞台に勢いよく駆け上がってきた影が一つ。
「……私にも! 全力で挑んで!」
ルーティアだった。
頬を赤らめ、息を荒げ、瞳を真っ直ぐにカイへ向ける。
「お、お嬢!? なに言うてんねん!」
「ずるい! 他のクラスばかり相手にして! 私だって、あなたの全力を受けたいの!」
「いやいや、生徒に本気出すとか倫理委員会案件や!」
「いいえ! 私はあなたの生徒であり――奥様なのよ!」
「奥様言うなーー!」
観客席は爆笑と歓声で揺れ、戦陵祭は教師無双と悪役令嬢のツンデレで最高潮の幕引きとなった。




