第29話『勝者の祝宴と、教師の本音』【学園行事編:戦陵祭⑥】
戦陵祭決勝から数時間後。
学園の大講堂は、煌びやかな装飾で彩られ、祝宴の場へと変わっていた。
長テーブルに並ぶ豪華な料理。
勝者たるクロス組が入場すると、拍手と歓声が湧き起こった。
「クロス組の皆さん、見事な勝利でした!」
「魔法クラスが剣技で優勝するなんて……歴史に残りますよ!」
教師たちや貴族が次々に言葉をかける。
生徒たちは照れながらも誇らしげに笑い合った。
壇上に立った学園長が声を張る。
「クロス組の勝利は、学園に新しい風を吹き込んだ! 剣も魔法も“理”によって強くなれることを証明したのだ!」
大歓声。
その中で、ルーティアは胸を張って言い放つ。
「当然よ! だって私たちは“クロス先生の生徒”なんだから!」
「おいおい、言い切るなぁ……」
カイは頭をかきながらも、笑みを隠せなかった。
◆◇◆
宴は続き、生徒たちが次々にカイのもとへ集まった。
「先生のおかげです!」
「私、本当に剣を扱えるなんて思ってなかった……!」
「先生の声が聞こえたから、怖くなかった!」
瞳を輝かせ、口々に感謝を伝える生徒たち。
カイは少しだけ照れた顔で、両手を広げた。
「ありがとう。でもな、ワイはただ“式”を教えただけや。剣を振ったんは、みんな自身や」
その言葉に、生徒たちの目がさらに潤み、拍手が広がった。
やがて、祝宴の合間にルーティアがカイの隣に腰を下ろす。
ワイングラスを片手に、少し頬を赤らめながら笑う。
「ねぇ、カイ。あなた、誇らしい気持ちになってるんでしょう?」
「そらまぁ……生徒らが輝いとるの見たら、胸も熱なるわ」
「ふふ……私も同じ。だって私も“あなたの生徒”なんだから」
小さく笑みを浮かべる彼女。
カイはその顔を見て、ふっと息を漏らした。
「……正直な話な。ワイ、この世界で教師続けられるんか、不安やった」
「でも今日、生徒らが自分の力で勝ったん見て……ほんまに“教師でよかった”って思えたわ」
静かな告白に、ルーティアの瞳が潤む。
次の瞬間、彼女はカイの腕にがっちりと絡みついた。
「なら、もう迷う必要ないわ! あなたは私たちの誇り、そして――私の誇りでもあるの!」
「おいおい、最後だけ温度差すごいな!」
「温度差? いいえ、私は沸点よ!」
「どんな状態やねん!」
夫婦漫才のような掛け合いに、周囲の生徒や教師までもが笑いに包まれた。
◆◇◆
祝宴の最後、学園長が杯を掲げる。
「クロス組の勝利に、そして新しい時代の始まりに!」
「乾杯!」
ホールに声が響き渡り、戦陵祭の幕は閉じた。
夜更け。
寮に戻ったカイは、窓の外に浮かぶ二つの月を見上げながら小さく呟いた。
「……ワイ、ほんまにええ教師になれてるんやろか」
机の上には、生徒たちが書いた「ありがとう」の寄せ書き。
その中心には大きな文字で、ルーティアの筆跡が踊っていた。
『カイ先生は、最高の先生よ!』
それを見て、カイは苦笑しながらも、頬を緩めるのだった。




