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悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!  作者: naomikoryo


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第1話『数学教師、異世界の食堂で職を得る』

 「こっちじゃ、カイ。食堂で腹を満たすとええ」


 学園長――本名、ヴェルナー=エインスヴァルトは、まるで祖父のような穏やかな笑顔でそう言った。


 目の前に現れたのは、まるで宮殿の中にでもあるような食堂。

 天井は高く、シャンデリアが吊るされ、磨かれた大理石の床が目をくらませるほど光ってる。


 「いやいやいや、どこの高級レストランやねん……学生食堂って聞いとったけど、ワイの想像とちゃうで……?」


 頭上で飛ぶ光球。料理を運ぶ魔法のトレイ。

 異世界感、全開や。


 席に案内されると、制服姿の給仕が丁寧にメニューを渡してくる。

 そこには見慣れない料理名がずらり。


 『ドラフ鳥の香草焼き』

 『マギスープ』

 『ルルパンのグリル・ユーカリソース』

 『ポンメル茸の蒸し焼き』


 「読めるけど味が想像つかん……ええい、いっちゃん上に書いてるやつ、頼むわ!」


 少し後、運ばれてきた料理は――なんと丸ごと焼かれた巨大な鶏のもも肉。


 「でっか……ほんで、めっちゃええ匂いするやん……! うっわ、うまそ!」


 ひと口かじった瞬間、口いっぱいに広がる旨味と香草の香り。

 皮はパリパリで中はジューシー。

 味付けは塩と魔法スパイスのみやのに、深みがすごい。


 「うっっっっま! おいちょっとこれ……大阪帰ったら絶対流行るやつやで……!」


 カイがあまりにも感動しすぎて、周囲の生徒たちが「何者やこいつ」と振り返ってきたのは、言うまでもない。


◆◇◆


 食事を終えると、学園長に連れられて一つの教室に入った。

 そこには3人の老人が待っていた。魔導省から派遣された数学担当の学識者らしい。


 「彼が……異世界の“数学”を知っているという?」


 「試してみよう。貴殿、これを解いてみたまえ」


 渡されたのは、ルーン魔法陣の解析問題。

 複雑な文様、幾何学的な配置、法則に基づく魔力流動式が詰まった紙。


 「うわ、まるでセンター模試の図形問題みたいやな。ええで、ちょい待ってな……」


 カイは紙とペン(魔道用の筆記具)を手に、式を整理し始める。

 楕円形の中心座標、ベクトルの内積、角度の変換、流入と流出のバランス式――


 「ふむふむ……つまり、これはX軸の魔力密度がYに依存してて……おおっと、ここは補助線引いた方が楽やな……」


 ものの数分でカイは計算を終える。


 「ほい。これでたぶん、全部解けるはずや。あと、ここ修正せんと魔法暴発するで」


 魔導教授たちは紙を覗き込んで、硬直した。


 「……ま、間違いない。彼は、“魔導式の構造”を……式で解析している……!」


 「そ、そんな……この式を理解できる者など、王国には数人しかおらぬぞ……!」


 「というか、こんな短時間で理解するなど……バケモノか?」


 カイはポカンとしてた。


 「え……これ、日本の高校やと普通に教えとるレベルやで……?」


 (……いや、嘘やな。ちょっと難しすぎるか。ワイが変やったんか……)


 その後、会議は即断で決まった。


 「彼を、ロゼリア王立魔法学園の臨時数学教師として採用する!」


 こうしてカイは、正式に学園の一員となった。

 着替えさせられた教員用ローブは、妙に似合ってて、生徒に「誰あの若いイケメン?」と噂されるレベル。


 「いや、イケメンは言いすぎやろ……せやけど、ありがとう、これでやっと寝床と飯にありつける……」


◆◇◆


 その日の午後。カイは学園内を散策していた。

 全体的に石造りの荘厳な建築。広大な敷地に庭園、噴水、馬車が通る道――どれを取っても、平民には想像もつかん贅沢さ。


 「あー……せやな。こういうのが“貴族の学園”っちゅうやつか」


 ふと、豪奢な噴水の前に人だかりができていた。


 「なんやなんや……もめてる?」


 人垣をかき分けて見てみると、そこには一人の少女と、貴族風の青年が向かい合っていた。


 「……ルーティア、お前との婚約は破棄させてもらう」


 そう言ったのは、王国第一王子、レオン・アーデルハイト。

 金髪碧眼の完璧王子。ゲームでいうとこの、ド本命攻略対象や。


 そして向かい合う少女――金髪に宝石のような紅の瞳。

 勝気な表情、完璧なドレス姿。


 彼女こそ、この乙女ゲーム世界における“悪役令嬢”――ルーティア・フォン・ヴァレンシュタインその人やった。


 「……ほう? ふざけてるのかしら、レオン。私との婚約を破棄? その理由は?」


 「もう君に、心がないからだ。僕は……他に好きな人がいる」


 「他に……? まさか、あの平民の……フィリアとかいう娘のこと?」


 ざわ……と生徒たちがざわついた。まさかの“婚約破棄イベント”真っ最中。


 (あかん……これ、乙女ゲームとかでようあるやつや……)


 カイが呆然と眺めていると、急に視線がぶつかった。

 ルーティアの視線が、カイを真っ直ぐに捕らえた。


 「……何よ、そこの男。庶民風情が、私を見るとはいい度胸ね」


 「は? いやいや、ワイなんもしてへんで?」


 「その喋り方……気に食わないわ。学園に紛れ込んだ変人かしら?」


 「あんたなぁ、初対面でそれはないやろ……関西弁に偏見持ちすぎやて……」


 「っ……何その言語、妙に耳に残って……イライラするっ!」


 (えええええぇぇぇぇぇ!?)


 ――それが、悪役令嬢ルーティアとの最悪の出会いやった。

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