表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!  作者: naomikoryo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/136

第125話『核心穿通・クロス陣形』【魔王城での決戦編⑨】

 世界が、音を失った。


 聲魔グラヴェルが放っていた“呪いの声”は、カイの術式〈ロジック・オーバーライト〉によって完全に遮断され、クロス組の陣形は静寂の中、整えられていく。


 風が止まり、炎が潜み、水は凍りつくように震えていた。


 だが、その静けさは――次の一手を放つための、深い吸い込みだった。


◆◇◆


 「全員、配置完了!」


 ツェイルの影が地面に五芒星を描き、カサの幻膜が空間を“形”にして縫い止める。


 双子キル&カルは剣を交差し、音もなく息を合わせて前線の要を張る。


 「“せやな”は控えろ、集中しろよ!」

 「せやな!」


 ――控える気はないようだが、動きは完璧。


 メリルは中央で瓶を構え、後方支援の準備を整えていた。

 火、水、風、光、そして“むずむず粉”の混成瓶。

 「敵の“気”を撹乱させる“嗅覚反応瓶”、投擲可能!」


 ゴルムは最前線、カイのすぐ横に立ち、拳を強く握る。

 「ワレ、通行止めのごとく。

  先生、ここは任せろ」


 「助かるで、通行規制主任」


 カイは笑い、すぐに指を動かす。


「ルーティア、剣に術式刻む。三重写しや」

「了解」


 ルーティアは刃の平にカイの描いた式をなぞり、風の流束を宿すリリシアの魔力を受け入れる準備を整える。


 「リリシア」

 「任せて」


 風の結界が三人の周囲に渦を巻き、呼吸に同期するように膨らんだ。


 「さぁ、“核”を穿つぞ!」


◆◇◆


 “聲魔グラヴェル”は、遠くから三人を睨んでいた。


 すでに“声”を遮られ、攻撃の軸を奪われた彼の周囲には、まだ黒い霧が揺れている。

 けれど、その中枢部には、まだ確かな“コア”が脈打っていた。


 「“言葉”の次は、暴力か……愚かだな、人間ども」


 グラヴェルの本体は、もはや明確な形を持たない。

 影と声と霧の集合体。

 “力”ではなく、“概念”で存在している。


 だが――


「先生、いけるッ!」


 リリシアの風が“揺らぎ”の中心を捉える。

 声の波紋が最も強く跳ね返る場所。

 そこに、“聲魔の心臓”がある。


「位置座標、算出! カサ、幻膜重ねて!」

「了解、映像転送!」


 幻膜に浮かび上がる“核心”の位置を共有し、双子が先んじて防衛陣形を敷く。


「今や……!」


 カイは深く息を吸った。


 理手が動く。

 左腕の掌――つまり、“義手そのもの”が、前方へ向かって術式を描き始める。


「飛ぶぞ、ロケットパンチVer.2――」


 リリシアの風が術式を覆い、ルーティアの剣がカイの指先をなぞるように位置を合わせる。


 三者のタイミングが一致する。


「――飛んで、刺して、割れっ!!」


 バシュウッ!!


 轟音と共に、術式を刻んだ義手が宙を舞う。


 義手は飛行中も回転を止めず、彗星のように光を撒き散らしながら、“聲魔”の中枢へと直進した。


 「追撃! 術式、接続ッ!!」


 カイが再び詠唱を開始し、飛行する義手にリモート術式を流し込む。


 風が加速し、ルーティアの剣が術式を延長する。


 義手の先端が、空中に“新たな円陣”を描く。


 それはまるで、飛びながら魔法陣を展開する“彫刻筆”のようだった。


 「来るぞ……!」


 “聲魔”が咆哮する。


 霧が渦巻き、全方向から影が迫る。


 だが、――遅い。


 「うちの先生、飛ばした手で魔法書いてくるとか……」

 リリシアがぼそりと呟く。


 「うちの旦那様、ついに“殴る魔術書記官”になったのね……」

 ルーティアは呆れ顔で構える。


 そして――


 ドゴォンッ!!


 義手が“聲魔”の核へ突き刺さる。


 次の瞬間――


 空間が、折れた。


◆◇◆


 巨大な衝撃波と共に、“聲魔”の身体に刻まれた術式が一斉に点滅する。


 中枢から膨れ上がる“解体の光”――


 それは、聲魔グラヴェルの“声の理”を無音へと還す波だった。


 「やった……!」


 リリシアが叫ぼうとした、まさにその時。


 「まだ、終わらん」


 カイが呟く。


 グラヴェルの影が、残骸の中心から再構築を始めていた。


「奴……自分の“声”を捨てて、“影”で再生してる……!」


 ルーティアが息を呑む。


「じゃあ次は……“無言の殺意”ってやつ?」


 「そんなん、黙って押し返したるわ」


 カイが、理手の戻ってきた義手をカチリと嵌め直した。


 「ラストステージ……見せたろか、教師の意地を」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ