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悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!  作者: naomikoryo


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第118話『黒空の反逆者』【魔王城での決戦編②】

 魔王城の空が、裂けた。


 まるで誰かが黒い布を手で裂いたように。

 空の一点に皺が走り、そこから赤黒い裂け目が広がっていく。


 魔王の玉座の大広間――その天井は高く、空の理と直結している。

 つまり、そこは空間転移の焦点にもなりうる構造。


 今、その理を強引に破壊して降りてきた者たちがいた。


 反逆派。

 それも、ただの末端ではない。

 禁呪を操る幹部たちと、その配下の精鋭部隊。


 風を裂く咆哮と共に、赤いマントを纏った男が先頭に立つ。


「この城に入れたのは僥倖だったな。

 ……魔王も、娘も、教師も、全員そろってるとは」


「そろってんのはお前らの方やろ。

 まとまって来てくれて助かるわ」


 カイがすっと理手を構える。

 左手の指先――《理ノ拳》の掌には、光る術式がうっすらと浮かんでいた。

 今やその手は、ただの義手ではない。

 術式を描きながら射出される拳。

 いわば、理の塊。


「けどなぁ……」

 カイの目が細められる。

 その背後で、リリシアとルーティアもそれぞれの力を立ち上げる。


 そして――


 空が、再び割れた。


◆◇◆


 真逆の方向。

 魔王の右手側、玉座の柱間に、今度は白銀の光が奔った。


「っ、転移……!?」


 リリシアが振り返るより早く、その光から人影が次々と飛び出した。


「通行、開放!」

「っしゃあああああッ!!」

「兄者! この空気は完全なる魔界ですぞ!」

「せやな、弟よ!」

「影、開きます」

「カイ先生はどこだ……いた! 先生、背中守ります!」


 ――クロス組、魔族出身の護衛団18名。


 全員が、魔王の空間魔術によって転移されてきたのだ。


 そしてゴルムも合わせて19名。

 リリシアの背後に、ゴルムが立つ。

 盾を構え、鋼の視線を前方に投げる。

「“敵”の気配……やはりここでしたか。

 この城の重みが変わった。

 ――こいつらが、その原因」


 ツェイルが影から抜け出し、魔王の近くに膝をつく。

「お久しぶりです、魔王陛下。

 我ら、リリシア様の影にして、学び舎の徒。

 ……敵の排除を許可いただければ」


 魔王は頷いた。


「よかろう。

 娘の教師が指揮を執るならば、我は干渉せぬ」


「せやなぁ」

 カイがごく自然に一歩前に出る。

「クロス組、ここから実戦や。

 ――魔界、防衛戦、開始や!!」


◆◇◆


 反逆派の術士たちは、一瞬戸惑った。

 予想以上の人数。

 予想以上の構成。

 しかも、味方であるはずの“魔族”が教師の号令で動いている。


「何だこいつら……!

 人間の教師に、ここまで忠誠を――」


「忠誠ちゃうで」

 ゴルムが静かに言う。

「“理”に従うだけや。

 あんたらの理は、よう分からんけどな」


 次の瞬間、戦闘が始まった。


◆◇◆


 ツェイルとカサが連携して、前衛の視界を遮断。

 そこに、双子のキルとカルが刃を交差させて突撃。

 「兄者!」「弟よ!」「せやな!」


 メリルは紅茶をこぼしながら、毒煙と眠り瓶を片手に走る。

「まずはこの“むずむず粉”で混乱を!」


 リリシアは、彼らの援護に風の輪を三重に重ね、防衛陣を包囲構築。

「ここは私が止める……風よ、守りの輪となれ!」


 そしてカイは、前線の一人に目を留めた。

 明らかに主力級の魔力を持つ男。

 反逆派の“術転写使い”。


「そこやな、中心は」


 理手が動く。

 ――光を帯びながら、手首から指先が飛んだ。


「ロケット、パ~ンチ!!」

 ロケットパンチ発動。

 何故かカイはすごく満足気な顔をしている。

 その様子を見てすぐ、ルーティアとリリシアは顔を見合わせて困った表情をする。


 掌にはすでに展開済みの術式。

 その式は飛翔しながら空中に数式の軌跡を描き、目標地点の上空で展開。


「展開式、展開――!」


 《理式・面爆》

 着弾と同時に、術式が“面”を作り、対象の魔力を強制反転。


 術転写使いの男が、硬直した。


「な……オレの術が……逆流して……」


 次の瞬間、爆発したのは男自身の魔術式だった。


 衝撃と共に、反逆派の陣形に穴が空く。


 リリシアとルーティアが、同時に唖然と呟いた。


「……すごい」

「……でも、ちょっと引きますわ、旦那様」


「そない言わんといて」


◆◇◆


 魔王は静かに見ていた。


 娘。

 娘を守ろうとする者たち。

 その中心で、理を振るう“異邦人”。


 闇に蠢く反逆の連中を、真っ向から破るその姿に――。


「……あれが、“人”の理か」


 かすかに、笑んだ。


 戦いはまだ、始まったばかりだった。

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