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桜嵐  作者: 南蛇井


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20/22

── 第八章・嵐、開花 ──**

桜模様の和布が舞台中央にそっと落ち着くと同時に、

 体育館の照明がほんのりと淡いピンクに染まった。


 天井のスポットライトが、ゆっくりと色を変えながら

 桜色の花びらが舞うような影を布と床に映し出す。


 観客席の誰もが思わず息を呑む。

 体育館は、まるで春の夜に迷い込んだかのように優しく幻想的な空気に包まれた。


 その空気を割るように、

 ステージ袖のマイクから、落ち着いた声が流れ始める。


 MC(放送部員)ナレーション


 「――春の息吹が吹き抜けるとき、

 私たちの胸には、いつも桜が咲きます。」


 詩織が布の中央で、ゆっくりと立ち上がる。


 MC


 「そして、その桜を散らせるのも、吹き荒らすのも――

 一人ひとりの思いの強さです。」


 背景のピンクのライトが、桜色からわずかに色を深める。

 舞台奥の壁には、薄い花びらを模したライトがさざ波のように揺れ動く。


 ドン――…


 大地の太鼓が、二打目を静かに鳴らす。


 詩織が右手に大筆を構えた。

 布の上に、春の嵐が生まれる前の一瞬の静寂。


 MC


 「今ここに――

 私たち書道部が織りなす『桜嵐』をお届けします。」


 舞台袖で咲良が、小さく唇を噛んでその言葉を受け止める。


 (行け、詩織――

 ここから、嵐を咲かせて。)


 照明がさらにわずかに暗くなり、

 舞台中央だけが、まるで満開の桜のように

 淡く淡く光に照らされていた。


 詩織は布の上にゆっくりと膝をつき、

 筆先をすずりに浸した。


 墨の艶が、ライトの中で小さく光る。


 そして、大地の太鼓が

 観客の胸を撃つように三度目の深い響きを放つ――

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