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つまりね、擬態と偽計はクリスだけの専売特許じゃないってこと♡

浮かれ女が何か面白いことを語っているわ☆

ふ~ん、この女、見た目どおりのおバカじゃないわね♪

(bi 亡霊姫★)

「もうすっかり寒くなっちゃったわねえ~こういう時は、やっぱりお酒よね♡」


 久しぶりにルルシラは、夫とまったり晩酌を楽しんでいた。

南の国と言っても、冬の夜は冷え込むので、暖炉の火が揺れている。


「…………」


 水晶杯にラム酒が注がれる。ルルシラ手ずから杯を満たし、そして自分の分も入れる。

使用人も下げさせて、静かな夫婦の時間だった。


「ベルサードはやはり、王妃に靡いているようだ」


「でしょうね♡妹が踏み躙られ、派閥転向させられちゃったし……特にここ数ヶ月は元凶に頭を下げさせられて、地獄みたいな心境だったでしょうし♡」


 軍部内で、階級による上下関係は絶対だ。私情を持ち込むことは許されない。


「……ランドルフは武人として優秀だし、特段悪い人間というのでもないが……ただまあ、始末に終えない男ではあるな」


「うふ、同感♡ベルサード伯爵夫人とはいっぱい喋るし、私からも繋ぎを取ってみる♡

どう転んでも良いように、ちゃんと準備はしておきましょうね~♡

シャール君とアリスちゃんの未来のためだもの♡」


 息子と娘の名前が飛び出して、ライエラ侯爵は微妙な顔をした。

娘ほどの年のこの後妻と、子どもたちのあれこれは、彼自身も把握しきれていないところだった。

ただまあ話を聞いている限り、決定的に険悪な状態ではないらしい。

しかし、アリシアはともかくシャールは……


「そっちからも色々調べて、人脈作って準備をしておいてって、昨日シャール君にもお願いしたの♡

すっごくコクコク頷いて引き受けてくれて、頼もしいわ~♡」


「……前から思っていたが。息子はお前にやたら萎縮しているようだが、あれに何かしたのか?」


「え~なんにも~♡私に突っかかる暇があるのなら、一人でも多く味方を作って地盤を固めなさ~いって、言ってあげただけ♡」


 趣味と実益を兼ねた情報収集、宮廷人たちには眉を顰められる男遊びだが、それは義理の息子の立場を守ることでもある。

ルルシラが息子を産めば、まず間違いなく帝国の実家が介入してくる。

下手をすれば跡継ぎの地位を巡って家が分裂するだろう。

先日のヴェルカ公爵家の騒動を鑑みても分かることだ。


「それにい、アリスちゃんを帝国に嫁がせようって話も消えてないし――……」


 義娘を帝国へ嫁がせる。体裁はどうあれ、政略的には人質以外の何者でもない。

本人が望んだというならともかく、そんなことに可愛い着せ替え人形、もとい愛しい娘を差し出すなど問題外であった。


 だから実家の手紙は焼却処分、暖炉直行だ。紙が上質なだけに、本当によく燃えてくれて冬は助かる。

ふわふわ笑うルルシラに、侯爵はため息をついた。


「――だが、だからといって不必要に目立つことは危険だぞ。

わざわざ実例を引くまでもないが、そういう分野では根深い確執が生まれやすい」


「え~♡だってえ、べつにい、良いじゃない?」


 指を組んでルルシラは片目を瞑った。そこら中に花が飛び散るような笑顔である。

見かけは妙齢の美女なのに、童女のような仕草と表情がやけに似合う。


「私はいつでも目一杯楽しく生きて、あなたを困らせてあげたいんだもの♡」


 侯爵はそれに口を開きかけ、だが結局閉じた。

埒もないことを言おうとしたものだと思ったのだ。この妻は彼女らしくいるのが一番良い。


「そうだな、お前はそのままでいい。それが私と我が家を助けることでもある」


「うふ♡わたしたち、ほんっとう相性ぴったりね~~♡」


 嬉しそうに笑ったルルシラだが、ふとそれを陰らせて、夫の肩に頭からもたれかかる。

燃える火を見つめるその瞳に、微妙な危惧が揺れていた。


「ねえ、あなたは知ってるかしら?帝国の皇宮に伝わる、忌まわしい双子事件について――」


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