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別に懐かしくもない彼とちょっとだけ休憩☆

えっ?!王の妾にそんな秘密が?!

おもしろくなってきたわね~、クリス☆

(by 亡霊姫★)

 木々の葉が落ちてしまえば、気温が下がるのは瞬く間だった。

風に混じる冷気は深まり、着実に冬が訪れつつある。

星だけが息づくような、酷く静かな夜が増えた。


 ゆるやかに秋が深まり、冬へと移り変わっていくある日、王妃は一人の客を迎えていた。


「いやあ。最近はどこも賑やかですねえ」


 王妃は器を手に取り、手ずから茶を注ぐ。

誰が相手でも、王妃派の味方であろうともしなかったことだ。

だが、この相手にはそれだけの価値を認めていた。


「順調なようで何よりですね。僕からも祈りを捧げた甲斐があったというもの」


「貴方の祈りとは、水面下でこそこそ策謀することを言うのかしら?」


「これは手厳しい!」


 王妃は亜麻色の髪の男を見つめ、「要件をお言いなさい」と告げた。


「何か言いたいことがあるのでしょう。

わたくしがことを終えるまでは、直接会うことは控えると申したのはそちらのはず」


「ええ、その通りです。ですがふと……ひょっとしたら、まだご存じないかも知れない面白いことを、お伝えしたいと思ったのですよ。

……皇族の方に申し上げるのは気が引けるのですが……」


 ここまで乗り込んでおいて何を今更。

白けた王妃の視線を感じ取ったのか、男は咳払いをした。


「それでは、遠慮なく。

僕も前任者から聞いた話なのですが、シェルベット伯爵夫人の祖母君は帝国出身だったことはご存知でしょうか?

その方の言葉によれば、シェルベット伯爵夫人は双子でいらしたそうですよ」


「………………双子?」


 一瞬、水を打ったような沈黙が落ちる。

ジディスレンの国内でありながら、その瞬間、そこは確かに帝国だった。


『おやおやおや、ややこしいことが更に捻じくれてしまったわ』


 どこからか現れた亡霊姫が、美しい顔に似合わぬ下卑た嘲笑を滲ませる。

何百年も前の型のドレスと扇を翻して、詩の朗読のように続きを詠じた。

滑らかな銀の髪がふわりと舞う。


『ハルヴァルス七世の双子事件といえば、千五百年ある皇宮の歴史でも五指に入る醜聞だものねえ?

双子は生まれながら汚れしもの。

エヴァルス貴族は大嫌い、双子の二人が大嫌い……あっはははは!』


 いかにも楽しげな笑声をあげるのをよそに、口元に寄せていた茶器をゆっくりと戻す。

そして静かな声が発せられるとともに、その姿も声もかき消えた。


「…………そう。そうだったの。あの女は……」


 かちりと音を立てて、彼女は自らの中で何かが切り替わるのを感じた。

奇妙に凪いだ心で得た情報を反芻しながら、茶器の縁を目でなぞった。


「…………目ぼしいお話というのは、それだけかしら?」


「いえいえ、もうひとつ、面白いことをお教えしましょう」


 亜麻色の髪の男は、一段と愉快そうに笑った。


「ですがその前に……騎士のレナートについて覚えてらっしゃいますか?」


「ええ、勿論。来たばかりの頃から、良くしてくださいましたもの」


「僕、彼とは数年来の飲み友でして、この前も会ったんですけれど。

最近は帝国の騎士を護衛につけるばかりで、一度もお会いくださらないとか……悩んでいましたよ。

我が身は皇女殿下のご信頼に値しなかったのではと」


「そのようなことはありません。

ただ、今は難しい時期ですもの。

アーゼリット侯爵家ですら、会うために何重も手続きを踏まねばならないほどですわ。

そんな時に軽率に会って何かがあれば、お互いにとって不幸なことでしょう?」


 晩春に出会った騎士の顔を思い出す。

あの男との親交について、貴族はおろか侍女たちの中でも、密かに噂として囁かれていることは知っている。

王妃はそれについては何を言うつもりもない。


 ただ、あの男のことを考えると、胸が弾むのは事実だ。

必然的に頬が染まり、目が潤み、唇には笑みが滲む。

それは確かに、恋する乙女の顔と言うに相応しい表情だった。


「でも……そうね。また来て頂きたいわ。

近日中に、お呼びしましょうか」


『きゃっは、クリスったらサド~♡』


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