クリスったらも~偏見と憎しみ持ちすぎよ♡分かるけどね♡ ②
きゃ~!クリスったら、いよいよ王の妾を本格的に突き落とすのね!
格の違いを見せてやれ~☆
(by亡霊姫★)
それだけは、嘘偽りなく本当だ。
帝国皇帝という絶対君主の元でこそ、人民の平和は齎される。
大局を見れず利己的に右往左往するだけの家畜共に、世を動かす力はない。
近頃は、そんな当然の理が分からないものが多過ぎるのだ――そしてその一因が、己の祖国にあることも承知している。
「ただただ、大陸の安寧と繁栄のために。己の全てを捧げることがわたくしの務めです。
ですから、ねえ――邪魔なものを駆除することも、大切なことなのですわ」
「我が家に入り込んだ女も、その一部だと?」
「ええ。その後どのようになっておいでかしら?
ハルバード様が次期当主ということで決着したはずですが、まだ反発する者はいるでしょうか?」
「いいえ、今のところは。……ただ、あのルシアーナが生んだ弟。あちらはいづれ出家させるつもりです。
下手に子息として扱えば、余計な火種になりかねませんからね」
「…………」
微笑む王妃に何を思ったか、老婦人はやや目を逸らす。
「いくら下賤の血混じりとはいえ、我が公爵家の、そして息子の血を継ぐ子。
まだ十にもなっていない、何も知らぬ子なのです。粛清はさすがに心が痛みますもの」
「……そうですか。それが公爵家の決断とあらば、わたくしにも否やはありませんわ」
「どうか、これまでの愚息のご無礼をお許し下さいな。
これより我が家は一丸となり、王妃陛下のお力となる所存ですから。
帝国との縁談話も、喜んでお受けするつもりです」
「ええ、ええ、分かっております。
ハルバード様や公爵夫人のそのお姿だけで、充分にお心は伝わりましたわ」
向かいの老婦人は、帝国式のドレスを格調高く身につけていた。
王妃派の工作、それに暑さが和らいだこともあり、帝国式の装いはじわじわと増え始めている。
(まあ――……このくらいで良いでしょう。
地位のある男が下卑た女に籠絡されるのはままあること……)
頭の痛いことに、彼女の夫たる国王ですらそうなのだ。
たかが田舎貴族如きに多くを求めるべきではない。
このみすぼらしい国においては大貴族と呼べるらしい、ヴェルカ公爵家の財産と影響力、そこから支援を引き出せるだけ良しとすべきだ。
『あははははは!!まあそうよね、クリスが本当に大いなる貴族と見做せるのは、”帝国の”公爵だけだもんね!?
それ以下はみ~んな、似たりよったりの雑魚なんだから♡高慢すぎて痺れちゃう♡』
そして王妃は、本題を切り出す。
「ところで……貴女は、シェルベット伯爵夫人のお祖母様と、お親しかったとか。
それについて、是非ともお伺いしたいですわ。
あの方のご実家について、誰も口にしないのですもの」
かの家は十年以上前に、反逆罪によって処断された。
それを主導したのは、他ならぬフィオラだという。
これによってフィオラは国への献身と王への忠誠を、内外に示すことになった。
「ラゼル男爵家について、ですか」
さてどうなるかと思ったら、存外あっさりとその名は貴婦人の口に上った。
「ええ。男爵夫人は、帝国の方だったそうですね。神殿への寄進も熱心だったと聞きました」
「ええ。私は彼女とは旧知だったのです。ジディスレンにいらしたばかりの頃、色々とお教えして差し上げましたわ」
以前から、王妃の心に掛かっていることがある。
神殿で聞かされた話によると、かの男爵夫人はフィオラを「悪魔の子」と呼んでいたとか――それとなく聞いてみたが、前公爵夫人はそれについては何も知らされていないようだった。
亡霊姫はけたけた笑った。
『当然じゃなあい?お家の恥部は、流出させられるもんじゃないもの♡』
最後に、前公爵夫人はこう問いかけた。
「……我が家の一件で、均衡は崩れました。
ここからシェルベット伯爵夫人を突き崩すとして、どこから着手なさるのでしょうか?」
「……もう考えてありますわ。ある方に接触しようと思っています。
是非一度、その方にいらして頂きたいのです」
寵姫と寵臣の道ならぬ恋、麗しい物語の犠牲者。
灯台下暗しとは、良く言ったものである。
王妃はヴァルネート侯爵夫人、そして宰相から聞き出した話を思い出し、含みを浮かべて笑った。




