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女なら涙くらい、自由自在に絞り出せなきゃね☆

クリスったら役者ね~!

誰もあなたの涙、疑ってもいないわ☆

(by亡霊姫★)

「――そうそう。つい先日、また皇帝陛下の贈り物がございましたわね。

あれを届けて下さった騎士たちですが、しばらく王妃宮に滞在してもらうことになりましたの。

ですが、それを誤解されたくはありません」


 その流れで王妃は、帝国の騎士の王宮滞在を宣言した。

帝国の干渉に関しては、こんな風に言い繕った。


「皇帝陛下は、他国に干渉するなどという無粋はなさいませんわ。

ただ祖父が、初産を控えた孫娘の命を案じた……それだけのことでしょう?

それすらも不快と仰るのなら、どうぞ、帝国への奏上を。

お返事が届くのは、来春頃かしら……」


 王妃は静かに笑う。一同を見回すその目には、獲物を甚振るような光が浮かんでいた。


「それまで、貴方方がお変わりなくいらっしゃるならば、ですけれど……」


 一連の王妃の宣告は一刻もしない内に王都を駆け巡り、文字通りの激震を走らせた。

王との仲など、愛妾との関係など、宮廷の勢力図など何の意味もない。

王妃に子が生まれるとなれば全てがひっくり返る。


 実際に、王が王妃に優しく関係が良好だったなど誰も信じていない。

あれはフィオラへの攻撃というよりは、居並ぶ貴族たちへの主張だった。

いかに不仲だろうと王と王妃が、大陸の中枢たる皇宮で、神と皇帝の名の下に正式に結ばれた夫婦であることは確かなのだ。


 王妃が出したのは真実、全てを黙らせる無二の切り札だった。

「王の子を身籠った」そう言われては、誰もぐうの音も出ない。

男女どちらであれ、大陸で最も尊い血筋を引くその赤子の継承権に、誰が異議を申し立てられるだろうか。


 言うまでもなく、王妃派の貴族たちは踊りださんばかりだった。

我先にと王妃宮に詰め寄せ、思いつく限りの貢物をしている。

彼らに打ち明けなかったことについて、王妃は悲しげにこう弁解した。


「――……どうかお許し下さいね。皆様を信じていなかったわけではないのです。

ただこのことを口外すれば、ただそれだけで……どなたかに、何かが伝わってしまう気がして……それがどうしても、恐ろしくて……」


 そう静かに落涙する少女を、糾弾できる者などいるはずもなかった。

まだ幼さの残る少女なのだ、妊娠に不安があって当然だ。

そんな少女が半年間ずっと、王妃派の長として君臨し、そして今勝利を決定づけようとしてくれている。

それにどうして異議を唱えられようか?


 王妃の懐妊は慎重に波を読んでいた中立派にとっても重大事だった。

王妃には靡かずとも、王母になら傅くという貴族は少なくない。


 そして時を同じくして、帝国の祝儀という名の暗躍が始まった。


 帝国貴族や、その血に連なる王妃派の者たち。

彼らは持てる影響力の全てを使い、影響力を拡大させるために奔走した。


 取引の独占、関税免除、贈答品。それは祝いの名を借りた、経済的な侵略と言えた。

貴族ばかりでなく、商人や地主にまで多面的に行われた。

各地の神殿の福祉も進み、貧困層へも祝福が与えられた。


 各地に現れた使者は例外なく、祝いの贈り物に「ちょっとしたお願い」を添えた。


「王妃の評判を振りまいて欲しい」

「寵姫派との会合は当分控えてくれ」

「支持表明はせずとも良いが、静かにしていろ」


 宝石箱、衣装箱、商業許可証――ジディスレンで影響力を持つ有力者の前に、それらは惜しげもなく並べられた。


 帝国の贈り物を受け取った時点で、祝意を示したと取られる。

誰もが恩義を受ければ、誰も声を上げられなくなる。

誰が何を受け取り、どう返したか。

全てが書面で逐一記録され、王妃に献上される。

書き記されたその数字を見て、王妃はくすくすと笑った。


「……これはまた……随分な量ですわね。

これだけあれば、百人分の花嫁衣装が整いましょう。


 けれどこれらは、皇帝陛下が、わたくしとこの子の命の価値をお示しになるためのもの。

お受け取りになるのならば、その意味をよくよくお考えになるのが賢明でしょうね?

 …………わたくしが生きている限りは、という意味ですのよ?」


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