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やだあ♡クリスったら輝いてる~!!

みんな顔面蒼白~☆

行け行けクリス!

(by 亡霊姫★)

 それから数日後の会議では、いつもと違う空気が漂っていた。


「……シェルベット伯爵夫人、どういうおつもりですかな?」


 無機質な声を発するのは宰相だった。

その視線の先にはフィオラが座っている。

王の隣で、特別に持ち込ませた椅子の上で微笑んだ。

その意を察し、味方側の貴族たちが口々に反応する。


「……何を仰います、宰相閣下らしくもない」


「こんな時機だからこそ、伯爵夫人を招き、その御意見を取り入れるのが重要です」


「陛下の御心を誰よりも汲み取れるのは伯爵夫人でありましょう」


 帝国との板挟みにされたこんな時、宰相は困り果てたように青褪めるのが常だったが、今は違っていた。

顔色は相変わらず悪いが、どこか覚悟を決めたような面持ちをしている。


 そこに先触れが響き、淑やかな衣擦れとともに王妃が現れた。

相変わらず完璧な装いに身を包んだ、涼やかな眼差しの貴人はフィオラを見留て首を傾げる。


「あら、シェルベット伯爵夫人。ご機嫌麗しゅう。

こちらでお顔を見るのは初めてですわね……それにしても本当に、このような場にいらっしゃるだなんて。

国王陛下のご寛容の深さには少々驚いてしまいますわ」


 優しげな笑みのまま痛烈な言葉を放つ王妃に、フィオラは「とんでもないことです」と怯えたように萎縮してみせた。


「私は一介の愛妾、政治に口出すなど以ての外。

ただ陛下のお言葉をお伝えするだけですわ。

いかなる心労故か、陛下は大変お心を痛めておられますから。

お気の毒で見てはいられませんわ」


 言いつつも、しおらしげにそっと目を伏せる。

フィオラの言いたいことは明らかだった。

言外に王の不調の原因と責任が王妃にあると言及しているのだ。


 だが、それで動揺する王妃ではない。花開くように莞爾と笑い返す。


「まあ。一般的な分別すらも踏み越えて、わざわざそれをお伝えにお越しくださったのね。

伯爵夫人の真心にはつくづく感じ入りますわ。

陛下のご不調、確かに承りました。

お帰りはあちらですことよ?」


 扇を出口の方へ差し向け、にこやかに退席を促す。

言い返そうとすると、思わぬ方向から追撃が繰り出された。


「……王妃陛下の仰る通りかと。

側室である伯爵夫人が政の場に参加なさることは、秩序が乱れる元です。

いかにご寵愛の御方であろうと、あまり感心できませぬな」


(宰相を取り込んできたか……)


 内心で舌打ちした。中立派の情勢についてはフィオラの耳にも入っていたが、宰相はどちらにも傾いていないと先日聞いたばかりだ。

それを、ここまで懐深く引き摺り込むとは、電光石火の早業である。


 扇の影から貴族たちへ、さっと目を走らせる。

宰相を引き込まれたのは痛い。

元よりこの宰相は、こちらに都合のいい人材ではなかった。

いかに寵姫といっても不可能はある。忠勤で名高く、代々王家に仕えてきたレン

ゲント家を排することは難しかった。

いずれ時期を見計らって追い落とそうとしていたものを――


 だが王妃にしてみれば、フィオラの都合に合わせる必要など微塵も感じないと失笑するしかない。

元より彼女が仕掛けたものは、最短最速の国盗り合戦だ。

その短さは、十年単位の長期戦を前提にしていた彼らには思いもよらず、咄嗟に対応しきれないほどのそれだった。


「恐れながら妃殿下はイーハリスに生まれ、エヴァルスでお育ちになった御方。

ジディスレンに慣れるまで、お急ぎになる必要はないのでは?」


「然り。ここはエヴァルスでもイーハリスでもございませんよ?

そのお身なりといい、あまり他国の流儀を持ち込まれては……」


「……誰にものを申しているのですか?」


 王妃は笑っている。その笑みに、ぞっと背筋を悪寒が駆け抜けた。


 その手がふわりと扇を広げ、白い顔に影を落とす。

奥で伏せられた睫毛が笑みに震えた。

その様子に、何故かぞっと寒気が奔る。


これは何だろう。まるで戦場で気づかず敵に包囲され、今まさに包囲網が閉じきった、その瞬間のような。

一方的な殺戮の合図が吹き鳴らされたかのような、悍ましい悪寒。

扇の影から、忌まわしいほどに美しい声が空気を切り刻むように放たれる。


「帝国の女たるわたくしは何者か、と仰いましたわね。

そんなことは自明ではありませんか。

事ここに至っても分からないのならばはっきりと言ってあげましょう。


 わたくしはエヴァルス皇帝陛下の孫にして、イーハリス先王の正当なる後継者。

当代ジディスレン王の正妃にして、次の王の母となる女ですわ。

――いいえ、もうなっておりますけれど」


 そう言って、王妃は笑った。

これまでで最も美しく、凄惨な匂いのする笑みで、決定的な言葉を紡ぐ。


「今日ここにお集まりの皆様に、今こそお伝えしましょう。

わたくしは現在、国王陛下の御子を宿しております。

冬の深まる頃、ジディスレンには新たな後継者が誕生することでしょう」



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