これは魔法というより手品ね♪いざ、種明かしを!①
きゃははは!クリスったら、宰相が真っ青じゃないの!
本題に入る前にせいぜい揺さぶっておかなきゃね☆
(by亡霊姫★)
「レンゲント侯爵……いえ、宰相と呼ぶべきかしら?おいで頂けて嬉しいわ」
どうぞおかけになって、と笑う王妃に挨拶して、レンゲント侯爵は着席した。
ややあって飲み物が運ばれてくる。
ここで赤ワインを出された場合の対処法は何通りも考えてきた。
だが、実際に出されたのは、当たり障りないお茶だった。
対面の王妃は、真夏と何ら変わりのない重厚な装いで微笑んでいる。
王妃はジディスレンで過ごした一夏の間、遂に帝国式のドレス姿を貫き通した。
同じ王妃派の貴族には厚着を辛そうにしている者もいたが、止めようとするものは少なかった。
忠義はそれでしか示されないと、王妃が命じたためだ。
言葉ではなく、完璧な帝国の身なりと挙措によって。
美と力は同義ではないが、通じ合うものがある。
強いから美しいのか、美しいから強いのか。
王妃の姿には、その境界を曖昧にさせるものがあった。
ジディスレンの強烈な夏の日差しを持ってしても、王妃の美しさを砕くことは遂に叶わなかった。
そこには確かに、奇妙な神々しさと求心力がある。
それに惹かれて、または打算から、帝国への歩み寄りを唱える者も中立派の中で一定数いる。
一方で、ジディスレンに同化する気など一切なさそうなその振る舞いに、反発を感じる者がいることも確かだ。
「……ヴェルカ公爵家の方は、依然緊張状態が続いているようですね」
跡目争いをしているその一方を、他ならぬ王妃自身が支持しているのだ。
言及するのも不自然ではないだろう。
「ええ。わたくし、ここ最近は心配で堪りませんの。
道中で不幸な事故でも起きたら、どんなに悲しいことかしら」
公爵の最大の泣き所、この騒動を問答無用で決着させられる人間が、公爵家には存在する。
今は領地を出て、帝国の使節団と合流して王都に向かっているという、その人が到着するより先に、公爵の言質を引き出せば彼女の勝ち。
それは誰もが知る共通認識であった。
「……こちらからも警備を強化させましょう。
使節団の恙無きご到着は、全国民の願うところですから」
「ふふ、ありがとう……それで、少しお聞きしたいことがあるのだけど、よろしいかしら?
ベルサード伯爵家の、シルビア様についてです」
「……何か、王妃陛下のお気に掛かった点でも?」
「ええ、大いに。
私も話を少し聞いただけなのですが……もとは中立派のお家であったのに、ご令嬢の結婚のため、あちら側に鞍替えすることになったと。
それが、今のグラフィナ伯爵家の嗣子に嫁した御方。そうですわね?」
その情報に間違った点ははない。しかし、王妃は、何を言わせたいのだろうか。
「シルビア様は、一時期帝国に行儀見習いとしておいでだったとか」
「……ええ。帝国にいらした頃は、ラザリウス侯爵家へ仕えておいでだったとか」
「……あら?」
王妃はそれに、首を傾げる。
短い沈黙の後、再び語りだした時には、もう話題が変わっていた。




