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浮かれ女の素敵な社交術♡ ①

あらあら、中立を決め込んでいる浮かれ女が動き出したわ。

あっちにヒラヒラ、こっちにヒラヒラ。

今度はどこに留まるか見ものね☆

(by亡霊姫★)

 暑気が和らぐ頃には、新たに帝国からの贈り物が届き、ジディスレンの片隅に息づいた帝国文化は更に賑わった。

赤ワイン、白ワイン、ラム酒。これらが象徴する派閥争いも完全に定着している。


 寵姫派は、ヴェルカ公爵家の争いに勝利するために全力を傾けている。

日夜宴会や催事を催して支持者や有力者を慰撫し、公爵本人を懐柔する。

しかし、王妃の後押しを受けている長男側の抵抗も根強い。


 一進一退の攻防が続く中、中立派も揺れ動いていた。

ある者は立場を定め、ある者は留まり続ける。

その中でライエラ侯爵夫人ルルシラは、今日も移り気な蝶のように飛び回っていた。


「見て見て~♡このドレス、新感覚で素敵でしょ~♡」


 その日夜会に現れたルルシラは、ふわふわとした笑みを浮かべ、他の誰も着たことのないドレスを着ていた。


 敢えて言うなら、上衣は帝国風、下衣はジディスレン風と言うべき衣装だ。

花飾りはジディスレンでよくある意匠だが、生花ではなく宝石で作られている。

胸元と肩で大量の宝石が花を咲かせ、そこから複雑な襞を寄せた半透明の布が流れ落ちる。

スカートは何枚も布を重ね、布本来の美しさを見せている。

しかし裾の装飾には複雑なレースが使われ、帝国の気配が足元から匂い立っていた。


 一部は飾り立て、一部はそのまま流す。

帝国風の部分の色味は重く、ジディスレンの方はは淡い。

帝国の宝石と刺繍、そしてジディスレンの布を活かした絶妙な緩急である。

帝国とジディスレン、双方の魅力を両取りしたドレスだった。

複雑に結い上げた髪型も、衣装の魅力を邪魔しない絶妙な案配だ。


「これはまた、一風変わったドレスですね。ですが、大変お似合いでいらっしゃいます」


「はい♡夏の頃にこんなのどうかなって閃いちゃって~♪

仕立て屋さんに急いで作って貰ったんです~」


 ライエラ侯爵家は侯爵がジディスレン風、侯爵夫人が帝国風を纏うことが多かった。

夫婦や親族で装いを分けることで中立を表明する――そういうリスク分散をする家もこの頃多い。


 けれどもう、様子見を決め込める時間はほぼ残っていない。ルルシラはそれを肌で感じていた。


 ルルシラは相変わらず、赤ワインも白ワインもラム酒も勧められれば口にしていた。

食べ物はあまり手を付けず、酒だけ流し込んでいるが、一向に酔いが回る様子はない。


 踊り、笑い、歓談し、社交の花畑を飛び回る。

そんなことをしていると、ある男と目が合った。

ルルシラにとって、まだ付き合いの浅い相手だった。

目配せに応じて外に出ると、先手必勝とばかりに満面の笑みを浮かべる。


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