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いざ、ここまでの総ざらい~~!

さあ、クリス、いよいよ軍部に切り込んで行くわよ~♪

きな臭い匂いがしてきたわ~☆

(by亡霊姫★)

 王宮の中でも王妃宮の近辺では、帝国の文化を取り入れた催しが増えていた。

王妃は帝国の皇女として輿入れしたし、使節としてやってきた帝国貴族の出入りも多い。


 装飾も土産も集まる人間の衣装も、全てが帝国で固められ、ジディスレンの衣装を着ている者は、それだけで恐ろしく目立つ。

ジディスレン王宮の一角は、今や小さな帝国の庭と化していた。


「軍部の方も、少しずつ来て下さるようになりましたわね。何よりのことですわ」


『例の堅物元帥はまだだけどね~今は外堀外堀♪』


「それもカルヴァン伯爵夫人が、方方に働きかけてくださったからですもの。

わたくしは恵まれておりますわね」


「滅相もありません。当然のことをしたまでですわ」


 カルヴァン伯爵家は、王妃派では数少ない武門で、軍部との関わりが強い家であった。


 ジディスレンの軍とは通常、国王直属の常備軍を指す。

現在はライエラ侯爵が元帥として率いている兵力だ。

王都を始めとする主要都市の防衛や、外敵への対処を行う。

国境での小競り合いが起きれば真っ先に動員される者たちだ。


 同時に、貴族が所有する私兵も存在する。

これには傭兵も含まれる。

国難の際に王の要請と号令によって動員される仕組みだが、基本はその貴族独自の戦力と言える。

彼らは領地防衛や交易警備、治安維持のための軍事力だ。

しかしここ数年、特に帝国寄りの貴族の兵力は、何かと言いがかりをつけられて縮小させられたそうだ。

当然フィオラによってである。


 それは王妃にとって懸案だった。

だから、軍部関係者との繋がりを少しでも深めたい。


「例の……ランドルフ様、でしたか?国境紛争で大層な戦果を上げたと聞きましたわ。あの方は、」


「いえいえ、それはその……無理でしょう。ほら、ねえ?」


「あの御方もねえ、武功は申し分ないのですけれど。それ以外は、いささか」


「英雄色を好むというか……昔は、別の女性がおありになったのにねえ」


 王妃はそれに、一瞬目を光らせた。

上空で亡霊姫が手をたたき、歓喜の声を上げる。

別の女性――それは、非常に大変に興味深い。

言い出したヴァルネート侯爵夫人に視線を注いだが、そこではそれ以上追及はしなかった。


「……何かの時に、味方して下さる方が欲しいわ。

最近はどうしても、不安になることが多いものですから」


 王妃は儚い美貌を曇らせた。

国王の寵姫への傾倒は深まる一方で、王妃は正妃でありながら未だ国政の場に入ることすらできていない。


「まあ、王妃陛下……」


「我々がおりますわ。

それに、あのレナートとかいう騎士……彼は中々見どころがあると聞きましたわ。

何としても、王妃陛下の守護という役目を果たすはずです」


「ええ。彼は身を捧げて、本当によく尽くしてくれますの。

ですがだからこそ、あまり頼り切るわけにはいかないでしょう?」


(……なんてお優しいのかしら)


 エデルはそれを聞きながら、主人の慈悲深さに感じ入っていた。

侍女として控えている立場上、口を挟むわけには行かない。


 レナートと王妃の初対面を思い出す。

あの時、エデルも傍にいた。

マントを汚してまで王妃の通行を優先した騎士の姿は、彼女にも印象深かった。


 まして、孤立状態にあった王妃にとって、それは救いだったことだろう。

想像するにあまりある。


 あれから帝国の使節が来たりで、王妃の周りには貴族たちや、味方する者も増えたが……あの騎士だけは、やはり別格な感じがする。

王妃が向ける眼差しが、どこか違うのだ。


(も、もしかして……いつか、お二人は本当に心を通い合わせるようになるのかも……)


 考えるとどきどきしてきた。そんなエデルをよそに、王妃は来客の対応を続けていた。



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