やだやだ絶対やだ神殿とか、クリスったら信じらんない!!!
ちょっとちょっとクリス!!神殿に行くなんて聞いてない!!
妾は神殿なんて大嫌いなんだから!
(by亡霊姫!)
神殿は相変わらず、白く聳え立つような威容を湛えている。
皇宮のそれには遠く及ばないものの、大陸の中でもそれなりに由緒あるものであった。
「これは王妃陛下、よくぞおいで下さいました」
「はじめまして。ご挨拶が遅れてしまって、心苦しい限りですわ」
殊勝に言う。
初老の神官はそんな王妃に、好意的な微笑みを滲ませた。
皇族は彼らが奉じる神の子孫だ。
訪いが歓迎されないわけがない。
「神官長は現在、不在でございまして……僭越ながら、私がご用向きを伺いましょう」
そうして茶が供され、神殿一室での歓談が始まった。
不本意ながら助力を請いに来たのであるが、そんなことはおくびにも出さず談笑する。
相談は必要だが、ことは慎重に進めたかった。
神殿に借りを作ると後々厄介なことになるし、安易な手であるが故に失点になりかねない。
それのみならず、神殿とあまり関わりたくない、という彼女の非常に個人的な思いもある。
けれどこうなっては選り好みをしている場合ではないのだった。
おかげで神殿嫌いの亡霊姫など、会話の間どころか今朝からずっと黙り込んでいる。
神殿とは、元々様々な階級の者が集う世界だ。
跡を継げない名門の次男や三男が出家することもある――家の人脈形成に貢献できるからだ。
関係者それぞれの事情や思惑で文様を織り成して、ラシエ教は大陸全土に根を広げている。
故に、情報網としても極めて優秀だ。
世間話に紛れて、ジディスレンや王宮、神殿の内情について聞き出していく。
「……そうですか。思っていた以上に、神殿は国内で苦しい状況にあるのですね」
「ええ、未だに昔ながらの付き合いと、素朴な信仰心を持ってくれている方も多いのですが、全体ではやはり……市井の印象は一度固まると、中々動かぬものです。
粛清はかなりの規模で行われましたから……不甲斐ないところをお見せして、お恥ずかしい限りです」
全くだ。
無様にもほどがある。
仮にも皇帝の祖先を崇める信奉者の立場で、下卑た女一人に屈するなど、言語を絶する情けなさだ。
しかし王妃はそんな本音などおくびにも出さず、代わりに慈愛を込めた笑みを贈った。
「仕方がありませんわ。その状況でシェルベット伯爵夫人に睨まれては、どうにもできなかったでしょう。
ただ……どうして、あの方がそうも、神殿を敵視しているのか。お心あたりはおありで?」
『わ~口にも顔にも出さなかった!クリスえら~い!』




