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仲良しこよしな義理母娘

ルルシラってくせ者よね~

帝国の人間なのにシッポをつかませない。

こちらにつくか、寵妃につくか?!

クリス、気張って行かなきゃね~☆

(by亡霊姫★)

 ルルシラに子はないが、ライエラ侯爵家には前侯爵夫人が遺した子どもたちがいる。


後妻であるルルシラとその子たちは、義理の親子関係となる。

現在の帝国との緊張もあり、いかにもお家騒動が起きそうな布陣だった。

だが、実際のところこの侯爵家に、世間によくある確執や軋轢はなかった。

少なくともルルシラの方は、子どもたちを心の底から可愛がっていた。

愛というより可愛がりではあったが、彼女なりの気持ちが確かにある。


「ふんふんふんふふ~~~ん♪ふん、ふふん♪」


 今日も彼女は鼻歌を歌いながら、娘の部屋で目まぐるしくドレスを取っ替え引っ替えする。

着せ替え人形にされる娘アリシアの方は、半ばうんざりしながらため息をついた。

こういう時の義母の体力は無尽蔵だ。

やがて考えが固まったのか、義母は満面の笑みで娘を振り返った。


「アリスちゃんアリスちゃん、次はこっち着てみてぇ~♪絶対似合うと思うの♬」


「……確かに素敵なドレスですけど……髪飾りはこっちなんですか?

子供っぽくなるんじゃ……」


「大丈夫、アリスちゃんの顔には絶対マッチするから!保証する!!」


 侯爵令嬢のアリシアは今年十二歳になる。

そして義母がやってきたのは四年前、彼女が八歳の頃だった。


 実母が亡くなったのは、六年前のことだ。

跡取りたる兄はきちんといたというのに、それから一年足らずで帝国との再婚の話がまとめられた。

外交上の兼ね合いから、後添いとして帝国の子爵令嬢が嫁いでくることになったのだ。


それは貴族として仕方ないことでも、年頃の子どもとしては容易に受け入れられることではない。

必要なことと頭では分かっていても、いきなり外国、それも緊張関係にある国から来た新しい母に、最初は反抗心を覚えたものだった。

父を放り出して男を渡り歩いているとの噂も、潔癖な少女の心を逆撫でした。


 だが、蟠りは何だかんだ氷解していった。

端からは異質で、歪ですらあるのかもしれないが、我が家はこれでいいと思いつつある。

最初は同じく反発していた兄も、何だかいつの間にか義母に怯えるようになっていた。

彼女の前では妙に遠慮がちというか、びくびくしている。

そして自分は――


「お母様が着せ替え好きなのは知ってますけど……

一日十回も着替えさせるのはやりすぎでしょう!疲れるんです!」


「そんなこと言っちゃって~、一昨日終わり際に鏡見てポーズとってたじゃない!

ホントは楽しんでるくせに~!かわいい♡」


 何で知ってる。背中に目でもついてるのか。

頬をつんつん突かれながら、恥ずかしさで逆上したくなった。

そんなことをしても、ふわふわ受け流されるだけだと分かっているのでしないが。体力の無駄だ。


 実際、義母の審美眼は確かなものだ。

これは何もアリシアの独断ではなく、ジディスレン貴族の共通認識である。

美的感覚も判断力も、天性の才能と言える域である。

彼女は相手にどのようなものが似合うか、一目で見抜く眼力を持っていた。

そんな人の手腕や判断を間近で沢山見られるのは、非常に参考になる。


 最初に着せ替えさせられた時、自分の姿を鏡で見て目を見張ったものだった。

今でも時々、鏡に映った姿を見てこれが自分かと思うことがあるほどだ。

鏡越しの義母は、にこにこと上機嫌に笑ってドレスを体に当ててきた。


「お洒落って奥が深いのよぉ♡

アリスちゃんには特別に、私が全部教えてあげるからね♡」


「まあ、はい……ありがとうございます……でも、今はそれどころではないのでは?

……お父様も中々帰ってこないし……」


 アリシアは、自分がどこまで言及して良いのか分からず口籠る。

家の外で、王都で起きている権力闘争の波を、子供心にも察知していた。

屋敷への貴族の出入りは増える一方で、最近は職人や商人も頻繁にやってくる。


 時々、どうしようもなく不安になる。

だがそれは、全く変わりない義母の笑顔でふっと軽くなった。


 彼女のことを、母として慕っているかと言われると言葉に迷う。

少なくとも、実母と同じように想ったことはないし、これからもないだろう。

けれど決して嫌いではないし、色んな意味で頼もしいと思っている。

彼女にとって義母は、そんな存在だった。

ルルシラはその小さな体にせっせとドレスをあてがいながら、朗らかに笑う。


「なーんにも心配しなくていいのよ。

どっちに転んでも、あなたには絶対触らせない。

だって私の今の夢は、あなたを最強の女にしてあげることだから♡」



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