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母親ってのは手強いわよ~?あっ、言うまでもなかったか☆

とうとうクリスが寵姫派に攻撃を仕掛けた模様☆

さあ、相手はどう出て来るかしら♪

(by亡霊姫★)

「……おかあさま、最近変」


 その声に、ヴェルカ公爵夫人ははっとした。

不安げに覗き込むのは幼い息子だ。

その視線に微笑み返し、抱き上げる。

普段なら憩いのひとときとなるのだろうが、今となってはそうもいかなかった。


「何かあったの?みんな、ばたばたしてて……」


「……大丈夫ですよ。お父様とお母様は、何があっても貴方の味方ですからね」


 焦りと怒りを押し隠し、我が子に精一杯微笑みかけた。


 息子と別れ自室に戻ってから、いつもより荒々しく椅子に腰掛ける。

それに侍女たちがちらりと視線を向けた。


 ここのところは、こういう冷ややかな視線を向けられることも多い。

それは良い。嫁いだ時からだから今更だ。

公爵に寵愛され、息子を授かったことで表出しなくなったものが、再び表面化しただけだ。

侍女たちの実家は公爵家の家臣で、元から彼女をよく思っていない者も多い。


 前回の舞踏会から早一月が経過した。

しかし、物事が一気に動き出したのはたった数日前だ。

王妃の衣装を汚したとされた侍女の死。

公爵家の家紋入りの、これみよがしの証拠品。

それによって、ヴェルカ公爵夫人王妃のドレスを汚すよう働きかけたのだと、そう嫌疑がかけられた。


 そして、それだけならまだしも。

それからすぐ、王宮に出向していた長男ハルバードが、庭園で散策していた王妃と「偶然」出会ったそうだ。


 その会話内容は、既に王宮中に広まり、彼女のもとにも報告されていた。

義理の息子と王妃が交わしたのは挨拶と、何ということのない世間話と、そして。


「アーゼリット侯爵夫人から、よく母君のことを話に聞きますの。

帝国から嫁いできたばかりの頃、大変良くして下さったとのことで……

夫人は今も、大変感謝しておいでですわ。

そのためかわたくしも、貴方のことはなんだか近しく思われますの」


「勿体ないお言葉でございます」


 それが全てを表していた。

王妃がハルバードを後押しすると、王宮中に周知されたのだ。

水面下で何が起きているか、誰もが察しを付けた。


 通常、貴族の家紋入りの小道具が外部に流出することはほぼない。

剣のような家宝からハンカチ一枚まで、極めて厳重に管理される。

まさにこういうことに悪用されかねないからだ。

当然の自衛として、そんなことはどこの家でも常識である。

仮に彼女が手を回したのなら、そんな迂闊な手がかりを残すはずがない――そんなことは馬鹿でも分かる。


 だがこの場合、実際に公爵夫人が侍女に命じたかはどうでもいいのだ。

重要なのはこの件に、公爵家の誰かの意思が関与していると確定したことだ。


 それが誰か、なんて考えるのも馬鹿馬鹿しい。

彼女が産んだ次男によって立場を脅かされている、長男ハルバードしかいない。

そしてハルバードは、王妃の承認と慈悲を受けた。


 これは名目上はヴェルカ公爵家の跡取りを巡る騒動だが――その正体は王妃と寵姫による代理戦争なのだ。

正確には、王妃がハルバードを認めたことで、そうなったのだ。


 公爵夫人は美しい顔を歪め、柔らかな椅子に爪を立てた。


「…………」


 王宮に段々と、あの忌々しい帝国服を着た貴族が増えている。

なまじ目に見えるだけに、細かな変化はまざまざと感じ取れるのだ。

あちらにしては、時期が満ちたとしての判断だろう。


 王妃が、自分を潰しに来た。それを実感として感じていた。


(ここで私が負ければ……)


 息子の将来は潰れる。

そして次の標的となるのはフィオラだ。

それは絶対に避けなければならない。

そして、王妃が明確に仕掛けてきたのはこれが最初だ。

ここで勝利できれば、後の戦局に与える影響は大きい。


 深呼吸し、鏡を見つめる。

覚悟を決めた目をした女がこちらを見つめていた。



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