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ハプニングは、いつでも突然起こるものなの!

クリスと寵姫の大闘争が盛り上がってきたわ~♪

寵姫の本命男も出てきて宴は大混戦☆

そんな中、とんでもないハプニングが!さあ、どうしてやりましょうか、クリス?

(by亡霊姫☆)

 突如上演された、王妃と寵姫の即興劇を、額面通りに受け取る人間は誰もいなかった。

何しろ和解の数秒後に交わされたやり取りがこれだ。


「王妃陛下はジディスレンで馴染みのないことも多く、こうした場にもまだ不慣れでございましょう?

どうかご無理はなさらないで頂きたいですわ」


「まあ、なんて嬉しいお言葉かしら。

エヴァルスでの三年間では、中々遭遇できなかったご親切ですわ。

聡明な伯爵夫人ならば、わたくしには思いもよらぬようなお作法もお収めのことでしょうね」


 この応酬を直訳するとこうなる。


『牢獄の中で育った王妃様には真っ当な宮廷作法、ましてジディスレンの流儀など分からないでしょう?

恥をかきたくなければ、鳥籠の中で大人しくしていなさい』


『エヴァルス宮廷での準備期間がありましたのでご心配なく。

人の作法を心配できるような身の上でして?

小賢しい愛妾風情、男を誑かすことを前提に小手先を弄する程度が精々でしょうに』


 一連の流れによって、むしろ、見えない亀裂が深まったことを誰もが感じていた。

王妃と寵姫、それぞれのもとに貴族たちが集まり、密やかに火花を散らす。


 王妃には、好奇、白眼、侮蔑、嫉妬、値踏みと、集った人々のあらゆる感情が向けられている。

その中でただ微笑んでいる。

汗一つ見せず、悠然と嫋やかに座っている。

生々しさがどこにもない、作り物のような完璧さだ。

この長丁場にあって座り続けたまま微動だにしない様は、まさに人形のようだった。


 全ての思惑を微風のように受け流し、まるで内心を窺わせなかった。

応対も淑やかで如才なく、それゆえに強烈な印象を残さないものだった。

王妃は何食わぬ顔で、周囲に挨拶と歓談を繰り返す。


「貴方は――あら、ランドルフ様、でしたか。ご挨拶に来て下さったの?

嬉しいですわ」


「お初にお目もじ仕ります」


 黒い髪に精悍な姿をした男だ。

勇ましいばかりではなく、丁重さと端正さも備えている。

国王とは全く違った雰囲気で、なるほどあの寵姫は本当はこういうのが好きなのかと、知りたくもない新情報に辟易する思いだった。


 そんな王妃に如才なく挨拶と賛辞を述べた男は、王妃を一曲誘った。

明らかな社交辞令だった。けれど王妃はそれを逃さず、くすりと笑う。


「あら、光栄ですこと。

けれど――わたくしなどより余程、お会いしたかった方がいるのではなくて?

そちらは宜しいのかしら?」


「……どなたのことを仰っているのか。

他の方も順番を待っておられますし、そろそろ失礼致します」


 後は社交辞令の使い回しと繰り返しだった。

やがて宴は酣という時になって、それは起こった。


 それを告げたのは、僅かな水音だった。


 杯が落ち、王妃のドレスの袖に、裾に、赤ワインの染みが花弁のように広がる。

その軌道はまるで、狙いすましたかのように正確だった。

杯を投げた「誰か」は、すぐに人混みの中に紛れてしまう。


「…………」


 王妃は一切の動揺を見せなかった。


 涼やかに視線を落とし、汚れた箇所を一瞥するだけで、何事もなかったかのように微笑んだ。


「失礼。今宵は、この辺りでお暇いたしますわ」


 それだけを告げると、王妃はゆるやかに踵を返した。


 その背には、震えるような沈黙が続いた。


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