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一見馬鹿そうな女には用心しなきゃ駄目よ?①

園遊会後、ライエラ侯爵夫人ルルシラが王妃を訪問します。

ルルシラは帝国出身の子爵令嬢です。軽薄な物言い、考えなしの言動。馬鹿なのか、裏に何かあるのか?

ルルシラは王妃の美しさに感嘆を示す一方、レスカリアン王女の血を引く王妃の血筋やヘルカンの前王妃との血縁関係にも言及します。

 根回しは滞りなく済んだようで、園遊会の余韻が去ってすぐにライエラ侯爵夫人はやって来た。


その日はうだるような暑さという言葉が相応しい気候で、ジディスレン式のドレスが鮮やかな青空に良く調和していた。

今この時期、王妃の前でその格好をするのがどういう意味を持つか。

全く何も考えていなさそうな顔で、侯爵夫人は挨拶した。


「こんにちはあ、王妃陛下♡」

「ライエラ侯爵夫人。こちらこそ、お会いできて嬉しいですわ」


 通訳を介さず、帝国語で直接話し始めた王妃を、ヨゼフはぎょっとして睨みつける。

最近は妙に押されて、思い通りに動かされている気がする。

そうはさせまいと、会話の流れを打ち切りにかかった。


「失礼致します。侯爵夫人、妃殿……王妃陛下は、喉の調子がお悪いのです。

ご無理をなさっているでしょうから、不肖私が代わりに……」


「ヨゼフ。下がりなさい」


 王妃が命じた。途端に喉が塞がった。

気持ちに反してそれ以上何も言えず、侍女に促されて退室せざるを得なくなる。


「あらまあ、どうしたのかしら~?お腹でも痛かったのかな?」


「ええ。どうやら暑気にあてられて、少し気がおかしくなっているようですの。

ご無礼をしてごめんなさいね?」


「毎日暑いですものね~。でも、王妃陛下は全く変わらず、本当にお綺麗ですわよね~!

近くで見ると、綺麗すぎてドキドキしちゃう♡」


「ライエラ侯爵夫人は……」


「やだあ~そんな、ルルシラって呼んで下さい♡」


「ファーレ子爵家のご令嬢ですよね。

感性が大変優れておられて、ここでは常に流行の最先端にいらっしゃると聞きました」


「そんなことないですよお。私はただ、お洒落が好きなんです。

可愛いもの素敵なもの、綺麗なものが大好きなだけ♡

だから今日が楽しみで楽しみで~!」


 きらきらとした薄青色の目が、王妃を映し出して一層輝く。

その瞳に浮かぶのは、混じり気なしの讃嘆だった。


「お祖母様はレスカリアン王女でいらしたのでしょう?

王妃陛下が生き写しのお美しさだって知って、お会いできるのを楽しみにしてました♡」


 ルルシラはきゃぴきゃぴとした雰囲気で笑い、首を傾ける。

青い瞳を豊かに動かして、色々な角度で王妃を見ようとしているようだった。


「レスカリアン王家って美神フィラリーの化身みたいな、人間離れして綺麗な人がとっても多いんですよね~♡

私は会ったことがないんですけどぉ、こうして王妃陛下を見てると本当だなって思えちゃいます♡」


「まあ、ありがとうございます。私も、祖母に会ったことはないのですけれどね」


「前にぃヘルカンの国使様ともお話したんですけどぉ、先王妃の面差しがあるって言ってましたあ♡

ヘルカンの前の王妃様も、レスカリアン王女でしたし~血の繋がりは遠くても、どこかしら似てしまうものなんですね~」


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