園遊会のその後で①
一つの派閥が急速に、なれど深く根を張りめぐらし、突き崩すことは並大抵ではないだろう。
だから王妃は倦まず弛まず、今日も各所へ種を撒くのだ。
その日は親しくなった貴婦人たちを集め、王妃宮でお茶会を開いていた。
「ところで……例の商会への援助の件、進めて下さいました?」
「ええ。王妃陛下の素晴らしさを話したところ、大層感じ入った様子でしたわ。
何かの折には、是非お声をかけて頂きたいと」
「福祉施設への寄付も、徐々に増やしていきたいですね」
『そうすれば、いざって時民どもにアピールしやすいもんね?
うふ、クリスって腹黒~』
民とは端から愚かなものだが、飢えればそれに際限がなくなる。
あらゆる理性と道徳を失い、獣同然の畜生と化す。
だから、己に手を差し伸べる者の顔など分からない。
適当に餌を投げてやれば、大人しくさせるも踊らせるも容易いことだ。
更に、貴族や商人などの地方の有力者。
身分を問わず、裕福な者はその分足を掬われぬよう狡猾になるものだが、必ず数人は後先の見えない愚か者がいる。
そうでなくとも、公益よりも自分が富み栄えればいいという考えの者は少なくない。
そういう者を依存させるのも、難しくない。
そして王妃に依存するということは、帝国に依存するということだ。
(それこそが自然な姿。……羊は羊のままでいればよい)
王妃はそれを蔑まないし、悪だとも思わない。
愚か者が自らの愚かさを弁えて強者に従う、それは素朴で自然な姿だと思う。
崇高なる君主を斃すなどという悍ましい思想を掲げる母国の狂った連中より、余程善良で賢明だ。
そう、依存させるのだ。
忠誠だの好意だのより遥かに分かりやすく御しやすい。
根拠のない感情はいつ消え失せるか知れないが、依存した者はこちらが命綱を握っている限り裏切れない。
更にそこから反抗の芽を摘み、飴と鞭で調教できれば完璧だ。




