味方はいればいるほどいいものよ③
「わたくしも王妃として、少しずつでもジディスレンのために尽力していきたいと思っています。
……そう思ったので、贈り物を用意しましたの。
本日いらして下さったことへの、せめてものお礼になれば幸いですわ」
皇帝からの下賜品をどうするか、それは彼女の裁量に任されている。
贈るのはその内の一つだ。使節団とともに届けられた品々の中でも、まず間違いなく上位に入るであろうものだ。
王妃の合図に応じて、布を被せた盆が侍女によって運ばれてくる。
「それはそれは、光栄ですな。一体何を授けて下さるのでしょう?」
侯爵としては、ここまでは予定通りだった。
この接見は、王妃が味方を増やすための一手だ。
大まかに分けて懐柔か威圧かの二通りが考えられたが、王妃は前者を選ぶ気でいるようだ。
(何が来るか……宝石か、武具か。或いは消え物の類か……)
ここで価値あるものを贈られれば、それだけの期待をかけられているということになる。
逆に言えばここで何を贈るかで、王妃の方針と器量も見えてくることになる。
王妃は微笑んだまま、布を取り払わせた。
「――――!」
「……へ、陛下。こちらは……」
そして――そこに現れたものに、さしもの侯爵夫妻も絶句する他なかった。王妃は華やかに笑う。
「どうぞ、お受け取りになって?」
黒紫の硝子瓶に、古代文字で綴られた格調高いラベル。
「妃に捧げし涙よ、丘に眠りて花となれ」
という文字の周辺には、皇家の紋章の一つを簡略化した模様が、薄く透かし彫りで入っている。
かつて伯爵令嬢として、幾度も皇宮に出入りした侯爵夫人ですら、数えるほどしか目にしたことはない。
通称「ラシエの涙」と呼ばれる、最高級の帝国産赤ワインであった。
「侍女たちから聞きましたが、十日後に晩餐会を開催なさるのでしょう?
わたくし自身は、参加が難しいと思いますので……せめてこちらを。
よろしければ、お使いになって下さいな。話題の種にはなると思いますわ」




