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全ての黒幕、真打ち腐れ狸ジジイのご登壇~~!!

うふふ、ようやく皇都に戻って来られたわね。

さあ、皇帝は何を言い出すのかしら~☆

(by 亡霊姫★)

地面に夏草が生い茂り暑さが急激に増した頃、遂にクリスベルタは皇都に帰還した。



「皇帝陛下、お懐かしゅうございます。只今、陛下の御下に帰参いたしました」



皇宮に戻り、皇女に戻った彼女は、祖父たる皇帝に向けて、最大の礼を以て跪拝した。



場所は皇宮、謁見の間、複数あるその内の一つだ。玉座に座す皇帝の、千五百年の宝冠を戴く髪には既に霜が降りて久しい。痩せた顔は皺に沈んでいるが、かつての典麗の名残は今もある。ただそこにいるだけで、当然のような尊大さと覇気が溢れる。



大陸を統べる皇帝、そして彼女の祖父はそうした存在だった。



「うむ。たかが一年、と思っていたが、汝の年頃には大きな変化であるな。前にも増して美しくなった」



「勿体なきお言葉でございます。陛下におかれましても、より一層輝かしく御威福を増したご様子、お喜び申し上げます」



老いた皇帝は、跪く皇女の言葉に皺の寄った目元を緩める。そのまま、一層穏やかな声で労いの言葉を連ねる。



「ジディスレンの平定、大儀であった。しかも男児を儲けるとは、まこと汝にはラシエの祝福が宿っておる」



「……御言葉ではございますが。わたくし如きに神の愛などあまりに恐れ多く、身に余るものです。恩寵があったとするのなら、それはエヴァルスに、陛下に注がれた御慈悲が、ただこの身を通して顕れただけでございます」



「敬虔であるな。我らは神の子孫故自然なことだが。後ほど神殿にも報告に参るが良い」

「ええ。そのつもりでございます」



皇帝と皇女は微笑みを交わし、やがて皇帝は悠然と伸ばしていた足を引いた。それが合図のように話題が移り変わる。



「生まれた子……シグラートと言ったな。冠を戴いたとはいえ、ようやく首のすわったばかりの赤児。安定しないジディスレンで育てるのは何かと不安があろう。成人までは我が膝下に留め置くが最良と考えるが」



「有り難きお言葉。わたくしも是非とも、それをお願いしたく思っておりました。陛下の御慈悲を受けられるならば、あの子にとっても何よりの幸いでございましょう」



「それでは、そのように計らおう。……ジディスレンでは、存分に我が下賜を役立てたようだな」



「はい。何もかも陛下の御力故でございます。わたくしなどただ、御心と仰せに従ったまでで」



「そのように申すでない。汝も異国の地でよく励んだ。後ほど褒美を遣わす」



「……滅相もございません。皇女の子として、当然のことを果たしたまででございます」



深々と頭を下げると、衣擦れの気配がする。皇帝は玉座から降り、此方へ歩み寄ってきた。皺を刻んだ手が伸ばされ、皇女の頬に触れた。まるで労るようなぬくもりに、触れられた場所が痺れるような感じがする。



「そなたは紛れもない我が係累だ。リウスティアの忘れ形見。――――愛しい、孫よ」

そうして彼女は、生まれてはじめて、祖父に抱擁されたのだった。



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