まだまだ~♪生き延びるには、もっともっと頑張らなきゃ♡ ②
きゃー!クリスったら役者ね!
心にもないことを語る、語る☆
これも一種の魔法♡
(by 亡霊姫★)
王宮の動揺は未だ収まる気配もない。その翌日、ジディスレン北部に領地を持つアーゼリット侯爵が蜂起した。
旗頭に立っていたのは、死んだと思われていた王妃であった。
彼女は生まれたばかりの我が子を抱き、民衆の前に立って涙ながらに訴えた。
「……貴方がたはわたくしのことを、傲慢な帝国の手先とお思いでしょう。
そのことを、わたくしは誰よりもよく知っています。
ですが、どうか、わたくしの声を聞いてください……!
わたくしは……ただ、ジディスレンと、この子を守りたかっただけなのです……!」
幼い赤子を掻き抱き、はらはらと涙を零す。そこには見ているだけで胸を突かれそうな悲壮美があった。
「春に嫁したあの日からずっと、国王陛下に疎まれようとも、貴族たちに嘲笑されようとも、王妃として迎えられたその日から、国のため、陛下のため、そして数少ない味方のために、必死に耐えてまいりました。
それなのに……この子が生まれてすぐ、王妃宮に火が放たれ、わたくしたちは命からがら逃げてまいりました。
わたくしは確かに放火者を見ました。かつて、わたくしの教育のために遣わされた女性でした。
その裏で、命令を下したのが誰なのか――敢えてここでは言いません。ですが、これだけは理解して下さい。
今、国王陛下は惑わされています。国を支配しようとする者の毒に、目も心も支配されているのです。
ジディスレンは悪しき逆賊によって食い荒らされようとしています。
王宮に巣食う悪鬼はこの子を殺し、国王陛下までもを弑し、それを隠して国政を恣にするつもりなのです。
このままでは、ジディスレンは恐ろしい女性の手に落ち、滅びてしまいます!」
王妃と王子の名の元に集った者たち、その一人一人を見つめるように訴え、声を震わせる。
「わたくしはそれを知ったが故に王宮で殺されかけ、忠義厚い味方の手を借りて逃げ延びて参りました。
今此処にいる方の中には、あの炎に御家族を奪われた方もおりましょう。
……二度とかようなことがあってはならないのです!」
息子を抱いた王母は、悲痛な表情に涙を浮かべて力の限り訴える。
それでいて佇まいも表情も声音も、一切美しさを損なわない。
未だ少女性すら宿すうら若き王妃の、悲劇の乙女の肖像の如き姿は、男たちの胸を打ち、戦意を掻き立てるものがあった。
「どうか、ジディスレンがこの先も、正統な王が統べる国であり続けるために――我が子のために皆様の力が必要なのです!」
『笛を吹き、鞭で叩き、餌で飼い慣らし。かくあるべし。家畜とはこのように動かすもの。
これも一種の魔法よねえ――うふふふふ』