まだまだ~♪生き延びるには、もっともっと頑張らなきゃ♡ ①
ほらほら、ここで頑張らなきゃ寵姫派は破滅よ♡
もっともっと踊りなさい♪
(by 亡霊姫★)
宰相と帝国国使が拘束された――その知らせはすぐに広がった。そしてもう一つの憶測も急激に広がっていった。
「フィオラ様、少しお休みになった方が……」
「眠っていられるわけがないでしょう?こんな状況で……!!」
火災の首謀者がフィオラだと、王都のそこかしこで囁かれている。それは噂を通り越し、公然の事実として扱われているのだ。
実際に王妃の殺害について、フィオラが配下に指示を出したという事実はない。
身重の王妃に手を出すのはあまりに危険であるから、腹を括って長期戦略で渡り合うつもりでいた。
しかし問題は、その弁明が通るかどうかだ。
フィオラと王妃の関係性を考えれば、そんな言い分が信じられるはずはない。
宰相や王妃寄りの貴族たちは、喜んで彼女を帝国に差し出し断罪させるだろう。
王妃殺害の首謀者として、その真偽に関わらずだ。
フィオラは、こうなっては他に生き残る道がないのだ。
ここで勝負に出なければ、帝国に詰められて破滅するしかない。
強引な采配だろうと危うい博打だろうと、国王が生きている間に敵を殲滅して防御を固めなければ破滅だ。
「……こんな、はずでは……」
王妃クリスベルタは亡国の女王だ。十二歳までまともな教育も受けてこなかった人間だ。
わずか三年の期間しか与えられず、見ず知らずの異国に放り込まれたのだ。
少し抑圧すればすぐに大人しくなるはずだった。
従順に動くようであれば、暫く生かしてやっても良かった。
帝国の皇族である以上、殺さないという選択肢は無かったとは言え。
打つべき手は打ってきた。推測通りの人物像であれば、楽に掌握できたはずだった。
……まさか、掌どころか首まで食い破ってくる化け物だなどと、思わないではないか。
「……許さない……許さない、絶対に許さない……帝国は、敵……」
ただ双子に生まれたというだけで、家畜のように扱われた日々。
干からびた片割れの手を握って、無力を何よりも憎んだ酷暑の一日。
どうしても権力が欲しかった。
母を虐げ、片割れを殺した世界に復讐するにはそれしかないと思ったのだ。
イーハリスの政変のことを知ったのはそれからすぐだった。
皇女たる王妃と幼い女王は退位させられ、監禁された。
帝国の権威が、民によって引きずり落とされた事例を知って奮い立った。
イーハリスの者たちに可能なことなら、自分にできぬはずはないと――それ以来、できることは全てしてきた。
必死に学び、媚び、己を鍛えた。
カラフと出会ったのも、そんな頃だった。
彼も帝国を憎み、父親の敵を討つことを願っていた。
お互いに無関係なふりをして相手が求める情報を探り、共有し、共謀し、ここまでこぎ着けた。
フィオラの理想に共感してくれたその時から、協力者から代え難い同士となったのだ。
その時、ちょうどカラフが飛び込んできた。
告げられた要件は今のフィオラの最大の関心事であり、産毛が逆立つ思いがした。
「フィオラ様、失礼致します!!昨夜の火災の調査に進捗が……」
「前置きは良いから早く要点を言いなさい!」
そして齎された報告を聞いて、フィオラの顔から血の気が引いていった。
不測の火災にしては、見つかった死体の数は異様に少なかった。
だが火元からやや離れた場所から一人、女性と思しき遺体が残っていた。
「更に焼け残った装飾品から、ヴァリナ夫人の遺体と確認されました……!!」
「……夫人の部屋を捜索させなさい、一刻も早く!!」
「それが……どうやら火災時に物取りに入られたようで酷く荒されておりまして、調査にも時間がかかるとのことです!!」