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その火は魔法か神罰か?

神話?伝説?母なる神?そんなもの知ったことではないわ☆

さあ、我が魔力で燃えておしまい!

(by 亡霊姫★)



 天上の主神ラシエ。あらゆる神の中で最も力強く、美しく、誉高く、輝かしいとされ、帝国皇帝の始祖でもあるこの神は、しかし天地創造の神ではない。


 ラシエを含む始まりの神々を生み出し、天地を、世界を生み出した神。それは女神であり、神々の母であったと伝えられている。


 世界は神々に見守られ、緩やかに育っていった。しかし、ある時母神は世界を滅ぼし、人類を根絶やしにしようとした。


 その理由は諸説唱えられている。我が子たちの愛を奪う人間に嫉妬したという説もあれば、自分が生み出したものなのだから、どう扱うかも自分の勝手と思っていたという説もある。現行の世界に飽いて、新しい世界を創造しようとしたのだとも言われる。


 現在主流とされているのは、「現状維持を望まなかった双子神に唆された」というものだ。


 その動機は確定していないものの、母は世界を殺そうとし、ラシエたちはそんな母に反逆したのは確かである。母と、母に味方した双子神を殺し、地に沈め、その時の女神の悲鳴から冥界が生まれた。

 死、病毒、憎悪、苦悶、世界に存在するありとあらゆる悪徳は、その時そこから噴き出した。


 天に残った神々も、これに対応せざるを得なくなった。


 混迷する地上を鎮めるため、ラシエの妻アプネルは冥界に降りた。そしてラシエもまた人間として転生し、地上を平定して帝国の定礎を築き上げた。その神話が歴史の源流となり、今へと繋がっている。


 全ての源たるかの女神の名は失われ、ただ、「母なる神」とのみ伝えられている。


 世継ぎの誕生。その報せに王都は、それぞれの思惑で湧いた。浮かれ騒ぐ者もあれば失望のため息をつく者もあり、はたまた怒り狂って叫ぶ者もいた。各所で各々の感情が乱れ飛び、今宵王都が眠ることはないと思われた。


 だがその夜は、本当の意味で、誰もが眠れぬ夜となった。


「おい、なんだ、明るくないか。あれ、は……?」


 その夜、夜明けも遠いのに空の一部が明るんだのを、初めに気づいた者が訝しがった。その直後のことだ。


 轟と、何かが爆発するような大音響とともに、王宮から一本の火柱が上がった。王宮近くにいた者は、一瞬耳が聞こえなくなったほどだ。天を貫こうとでもするような、高々と打ち上がった光に、一瞬夜が照らし出された。


 凄まじい悲鳴が幾つも響いた。それは離れた者にとっては、奇妙な夢のような光景であったが、王宮にいた者にとっては生死が懸かった大事だった。


 大小の火花の舞が盛大に、四方八方に突き進み、その先にあるものを燃やしていく。最も延焼の被害を受けたのは王妃宮の程近くにあった図書館で、紙が多くあったこともあって盛大に燃え広がり、被害を甚大なものとした。王妃宮を起点に周辺一帯全てを――まるで意思を持っているかのように炎は燃え盛った。


 拡大した火は合わせて一晩中燃え続け、結局完全に火災が鎮まったのは、昼中になってからのことだった。

 結果広大な王宮の敷地、その六分の一近くが燃え落ち、百人規模の死傷者が出た。飛び火し続けた炎の前に、貴族も使用人も関係なく燃やされたのだった。


 救命活動と並行して行われた調査の末、出火元は王妃宮の程近く、使われていなかった離宮の蔵であることが明らかになった。



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