第四話 お前たちはどうするのかしら?②
「零細の貴族風情が我らと肩を並べて、我が物顔でのさばっているというだけでも悍ましい。
あの女には、いずれ身の程というものを知らしめなばなるまい」
そこに齎された帝国皇帝の孫娘との縁談は、まさに福音と言って良かった。
宮廷内での勢力を弱めていた彼らはここぞとばかりに一致団結し、此度の婚儀を実現させたのである。
だというのに……彼らが鬱屈とともに思い出すのは、寵姫に笑いかける国王の姿だ。
「……ここ数年の陛下のお振る舞いはあまりにも目に余る」
「ここに来て帝国に背こうとは、長年の恩義を何と思し召しなのか。
皇帝陛下は大陸の太陽、太陽に背いて生きられる道理はないというのに」
それは誇張ではない。ジディスレンは建国当時から常に帝国の庇護の下、発展を遂げてきた。
それこそ猫の額程度の小国の頃からだった。
後は、皇帝の血を引く王子が生まれればジディスレンは正しい姿に戻る。彼らはそう信じていた。
「後は、お世継ぎをお待ち申し上げるしかありませんな」
それが現時点での総意だった。
比類なく高貴な皇女が王妃の位についたことで、第一の関門は越えた。
後は王子の誕生を待つばかりだが……こればかりは外野が気を揉んでもどうにもならないことではある。
「しかし……どうやら王妃陛下は女狐の手の者に囲まれているご様子。
そこからお救いするのが目下の課題となるでしょうな」
「……先程の一幕を見ても、まだあの女は戦意を燃やしているようですな。
王妃陛下を前にしても、我が身を恥じるつもりがないとは。
まあ、そうでなくてはそもそもここまで恥知らずな真似をできぬでしょうが」
誰かのそんな言葉に、場の空気に僅かに苦いものが混じる。
一人の女によって乱された国を正道に戻す企ては、まだまだ前途多難のようだった。