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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

日雇いバイトの俺は今日も今日とてモンスターを狩る。


 よう。俺の名前は鈴木(すずき) ゆうすけ。

 今年で26になるしがないフリーターさ。

 いやぁ、今思えばなんで俺はこんな生活をしてるんだろうな。


「ねぇお兄ちゃん?今日は仕事行くの?って、まだ寝てるじゃん!」

「寝てねぇよ、今日の日雇いバイトを探してんだ――っておいやめろよ!」


 今日も今日とて。勝手に妹が部屋に入ってくると俺の布団を無理やり引っペがそうとしてくる。


 はぁ、大学を卒業した時はこんな事になるなんて思ってもいなかったんだがな。

 普通に暮らし、普通に高校を卒業、そして何となく大学も卒業。


 このまま普通に就職、と行きたかったんだがどうやらそうは行かなかったみたいだ。

 面接では「意欲に欠けている」と落とされた。


 何言ってんだよおっさん、わざわざ朝から電車に乗って御社に来てやってんだから意欲バリバリだろうが。


 そして、さすがに何もしていないのはやばいと思い、数年前から始めたのがこの日雇いバイトだ。


 と言っても、タダの日雇いバイトじゃねぇぞ?(普通の日雇いバイトは意外と人気で、すぐに枠が埋まるからな)


 だから、そこで俺は「モンスター関連」の日雇いバイトに目をつけた。


 知ってるか?お前らの世界には居ないかもだが俺らの世界には「モンスター」っつう危ねーやつらが湧いてくるんだ。

 親に聞いたがどうやら数十年前、突如として現れ始めたらしい。


 そしてモンスター関連の日雇いバイトってのはもう想像出来てるかもしれないが、そう、モンスター討伐や、そるろ関連のバイトだ。


 昨今は「起業するならモンスター関連!」なんて言われているくらいには稼げると言われているモンスター企業。だが、その分危険も多いから中々人が集まらないらしくてな、こうして日雇いバイトで足りない人数を補ってたりする。


 言うなれば一昔前の「カニ漁」みたいな位置付けか。


 

 そうして、俺はずっとその日雇いバイトを続けている訳だ。時にはモンスターが現れ住めなくなった地区のモンスター退治に大型モンスターの死骸撤去。楽な時にはモンスターを討伐する専門職――通称「討伐者」の武器メンテナンスとかな。


 ――ちなみに今もこうして布団に包まりながら今日のバイトを「カモンワークWeb版」で探していた訳だが、そこに妹が乱入してきたって場面。


「たく、分かってるよ。今日も日雇いバイト行ってくるからお前は早く学校行ってこい。」

「もー。せめてどんな内容のバイトしてるのかくらい教えてよねっ。お母さんも心配してたんだから。」

「へいへーい。また機会があればな」

「もー」


 そうして妹という朝のモンスターを討伐し、1人になれたところで丁度良いのが見つかった。


「お、ダンジョンの整備か、日給3万。これにするかね。」


 そこで気に入った条件の物があったので即応募。すると数分でいつもの様に「よろしくお願いいたします。」と言った文言で始まるコピペ文章と集合時間・時刻が送られてくる。


「11時、ダンジョンは――あーあそこね。」


 今は9時くらい、もうちょい寝てから出るとしますか。


 ♦♦♦♦♦


 それから数十分寝た後、自転車で今回整備をするダンジョンへと向かう。あ、ちなみにダンジョンってのはモンスターが毎日うじゃうじゃ居る言わば巣窟みたいな感じなんだが、出入り口にはモンスターが出られない特殊な結界魔法が張ってあるから意外に街中にあったりする。


「うす」

「あ、こんにちは!!」


 そして約20分かけてダンジョンに着くと、そこには1人の若い男性が立っていた。


「君は――」

「はい!日雇いバイトで今回ダンジョンを整備させてもらう鳴海(なるみ)です!」

「鳴海君か、よろしく。」


 身体全体を重そうな鎧で身にまとい、背中に大きな剣を背負った彼は鳴海というらしい。

 ほう、同じ日雇いバイト仲間か。


「じゃあ、早速始めようぜ。すぐ整備を終えれば1時間で3万だ。」

「えっ?ちょ、ちょっと待って下さい!」

「なんだよ」


 するとそこでダンジョンに入って行こうとする俺を鳴海は何故か止めてきた。

 おいおい、まさか怖いとかか?それなら別にひとりで行くが。


 しかし、どうやら違うみたいだ。なんと鳴海は俺の心配をしてきた。


「だ、大丈夫なんですか?ダンジョンですよ?モンスターいっぱい出ますよ?」

「いや、知ってるけど」

「じゃあなんで、なんで……!?」


 そこで鳴海は俺を指さすと、


「なんでTシャツに短パンでなにも武器を持ってないんですかぁッ!!??」

「……いや、だって整備じゃん。モンスター討伐のバイトじゃないぞ。」


 それにここらへんは住宅街だ。もうちょい静かにしやがれ。


「いや、そうですけど……!?万が一モンスターと対峙したら……」


 そう言う鳴海の身体は小刻みにプルプルと震えていた。


 ……あー、なるほど。さてはこいつモンスター関連のバイト初めてだな。


「あーはいはい分かった分かった。とりあえず着いてこい。」

「ちょ!ちょっと!?……ッ!?待って下さいよ!俺もう知りませんからね!!」



 それからダンジョンに入ると、早速俺たちは今回の仕事である整備に取り掛かる。――とまぁ、整備って言ってもほとんどは確認で、もし壊れていたりおかしかったら修理しろって程度の簡単な物なんだが。


「――よし、これで3箇所目。異常は無いな。」


 パシャリ。そこで俺は問題なくピカピカと光るライトの写真を撮る。


 整備もあっという間に終盤。後は最後のポイントの異常がないという証拠になる写真を撮れば終わりだ。


「じゃあ進むぞ。――――って、おい……」

「ちょっと、早いですよ……」


 ……なんだが、さっきからひとつ問題が。

 この鳴海が遅すぎるんだよ。


「早いって?お前が遅すぎるだけだ。そりゃそんな重い鎧身にまとったら重いだろうが。」

「いやでも……はぁ、はぁ……」


 これだから初めてのやつと一緒になると困るんだよ(大体いつも1人だが。ほとんどの人間は一度したら怖いなんて言ってもう来ない)


「はぁ、せめて兜くらいは外せ。息しずらいだろ。」

「は、はい……――はぁ……!兜外したら生き返る〜」


 たく……



 それから更に俺たちはダンジョンに異常が無いかを確認しながら奥へと進んでいく。


 そして遂に最後のポイントに着いた――んだが、


「あーこのライト切れてるな。新しいのに変えた方が良さそうだ」


 最後のポイントには異常ありみたいだ。

 と言っても、するのは簡単なライト交換。


「ちょっと待ってろ。えーと変えの電球は――あ、下のカゴに置いてるじゃねぇか。」

「ちょっとちょっと……!?」


 よーし。これですぐ光るようになるぞ。

 切れた電球を外してっと。


「ちょっと!?ねぇっ!?」


 よし、これで新しいのを付け替えれば――お、光った。


「聞いてるんですかっ!?!?」

「って、なんだようるさいな。」

「うるさいなじゃないですよ!?あれってもしかして!?」


 そこで鳴海は目尻に涙を浮かべ、ガタガタと震えながらダンジョンの奥を指さす。


 なんだよ、そこに何か居るってのか?

 そうして鳴海の指さす方を見るとそこには奥からゆっくり歩いてくる巨大なカニの姿があった。


「あーなんだ、「ジャンボ・タラバ」か。甲殻類モンスターだな。」

「だな、じゃないですよやばいでしょどう見てもあいつ!?!?」

「あんまり騒ぐな、あいつは音に敏感で――」


「ガチガチガチガチ!!!!」

「ほーら言わんこっちゃない」


 すると、バカみたいに大声を出した鳴海のせいでジャンボ・タラバは怒ると1メートル程の巨大なハサミをガチガチと動かしながら6本の足でこちらへと走ってきた。


「ちょっとぉぉぉぉ!?!?逃げましょう早く!!まだ死にたくない!?」


 いや、どう考えてもあいつのが足早いから。

 ほんとに、これだから誰かと一緒は嫌なんだよな。


「とりあえずお前は黙って後ろにいろ。俺が片付けるから。」

「えっ!?無理ですよ!?」


 鳴海は向かってくるジャンボ・タラバの方へ歩いていく俺を必死に止めようとしてくるが――とりあえず無視。


「ガチガチガチガチ!!」

「ふぅ〜」


 そうして俺は右手の拳を固めると――


「フンっ」


 バキンッッ!!


 ジャンボ・タラバが射程圏内に入った瞬間前に踏み込み、一番脆いハサミの付け根目掛けてパンチを放った。


 その瞬間、パキパキとヒビが入り、腹部分の白い甲羅がパラパラと数枚地面に落ちる。


「よし、じゃあ後は――」


 そうして一瞬怯んだジャンボ・タラバの甲羅の割れた部分を両手で掴み、


「45°こっちに回転させながら引き抜く――ッ!!」


 ブリンッ!!


 見事、綺麗にジャンボ・タラバの巨大なハサミを引き抜いた。

 お、デカめの個体だけど身がプリプリじゃねぇか。モンスターだから食べれないけど美味そうだな。


「ほら鳴海、美味そうじゃないか?この身。」

「いや、えぇぇぇぇぇぇッ!?!?」


 いや、なに大声出してんだよ。――あ、まだトドメ刺してないじゃんって?たしかにそれはそうか。


 そこで俺は身体から離れ、煙の様に消えていくハサミを地面に落とすとそのままなにも抵抗出来ないジャンボ・タラバのハサミが付いていた場所に両手をかけ、


「甲羅をこうして――ふんっ!あ、開いた。うわカニ味噌いっぱいだな。」

「うぎゃぁぁぁぁああああ!?!?!?」


 ♦♦♦♦♦


「ふぅ、今日も終わりっと。」


 それから無事ダンジョン全てに異常が無い事を確認した俺たちは解散した。


 鳴海のやつ、なんかずっと魂が抜けた感じしてたけど大丈夫なのか?――まぁあの一瞬で3万を稼げたという感動で気が抜けたんだなきっと。


 そうして鼻息混じりに自転車を漕ぎながら家へと帰る俺。――――だが、家が見えてきた当たりで異常に気が付いた。


 何故かうちの前に黒いスーツを着た男がひとり立っていたのだ。


 なんだなんだ?


「あの、そこ俺の家なんですけど。訪ねる家間違えてないか?」


 俺は自転車から降りるとそう話しかける。

 無視して中に入るのもなんか気まずいしな。


 しかし、なんと男は俺の方を見ると、


「貴方が鈴木ゆうすけ様ですか?」


 俺の名前を呼んできた。


「そうだか」

「良かった良かった。実は貴方を探していたのです。まずはこれをどうぞ。」

「あどうも」


 そうして名刺を受け取る俺――って、えぇぇぇぇ!?


「か、株式会社バスターズ!?!?」


 おいおい、モンスター関連の企業で一番デカイと言われる超大手企業だぞ……?

 

「はい。実は最近モンスター企業の中で貴方が話題に上がっておりまして。ぜひ我が社にゆうすけ様の力を貸して欲しく……!!」


 ――あーなるほどそういう事か。てっきり「我が社の邪魔になるから日雇いバイトをやめろ」とか言われるのかと思ってビビったが、それなら返答はもう決まっている。


「嫌だ。」

「……ありがとうございま――って、は?」


 絶対に俺が了承すると思っていたのか、男は酷く困惑する。


「いや、だかろ嫌だって。俺企業とかに縛られるのやだし。」

「いやいや!?やだしって!?我々バスターズですよ!?株式会社バスターズ!!知らないんですか!?」

「いや知ってるよ。超大手企業って事もな。でも嫌だ。」

「ちょ!?ちょっと待っ――」


 しかし、そこで俺は無視して家に入ると扉を閉める。

 はぁ……今更会社勤めとかめんどいもんな。


 日雇いバイトで毎日「今日はこれにするか」って決められる気楽さが良いんだよ。


 よし、明日はどんな日雇いバイトをしようかね。

最後までお読み頂きありがとうございました!!

息抜き程度に書いてみた短編になりますが、どうだったでしょうか?

皆さんの反応によっては続きも書くかもしれないので良ければ是非感想、評価の方をよろしくお願いいたします!!

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