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それヤンデレではなくストーカーです、もう我慢しないでざまぁするシリーズ

「お前を愛するつもりは無い」って、自分は愛されてる前提なのは何でですの?

気楽に読んで頂ければ幸いです。

「この前の、リンデ伯爵家のエドワード様のあのお話ってご存じです?」


「あら、何かしら?わたくし、最近まで領地に戻っておりましたでしょ?ですので王都のことにすっかり疎くなってしまって。」


「そうですわね、ソフィア様は、タウンハウスに来られたのは一昨日でしたか?」


「ええそうですの。ですので、今日こうして皆様にお会いしたら色々伺いたいと思っていたのですわ。」


「まあ、そうでしたのね。それならご存じ無いですわよね。みなさま方は?」


「わたくしは、ちょうどその場に兄が居たのですぐに聞きましたわ。」

「わたくしは、そのお話をさきほどダイア様から伺ったばかりですわ。」


「そうですのね、お二人はご存じでしたか。わたくし、その場に婚約者と一緒におりましたのよ。」


「「え?リリー様、あの場面生で目撃されましたの!!」」


ここは、今、王都で人気のパティスリーに併設されたティーサロン。

個室もあるが、花咲き乱れ、噴水のある立派な庭園が見渡せるテラスに配置されたソファ席が一番人気だ。

そこに、貴族学校の同級生のご令嬢方が集まって新作のケーキを食べながら休み中にあったことを話そうと案内があったのだ。

季節は春、もうすぐ進級して貴族学校もあと一年で卒業だ。

あと数日で春休みも終わるので、領地に戻っていた者も王都のタウンハウスに戻ってくる時期である。


今日の呼び掛け人は、公爵家のご令嬢のリリーローズ。そこに、仲良しの侯爵家の令嬢ソフィアと伯爵家の令嬢ダイア、同じく伯爵家のミラが集まっていた。


高貴な令嬢が安心して話をしても大丈夫なように、そのテラスはほぼ貸切の様相である。

ただ、少し離れた場所ではこのパティスリーのオーナーの子息が友人と共にお茶を嗜んでいるだけ、それも上手い具合に植物が目隠しになって、お互いに目線が気になることは無い。


「リリー様、その()()()とは、何ですの?」

ソフィアがリリーに問いかける。


「ええ、実は先週、王弟殿下の私的なパーティーがありましたのよ。」

「まあ、シーズン前に珍しいですわね。」


王都でのパーティーは遊びではない、社交という名の戦争である。

そこで人脈を作り、人より早く旨味のある話を聞き伸るか反るか判断をしなければならない。そしてそれにどう絡むかで、その後の一族の貴族社会での立ち位置を左右することになるのだ。


各人出遅れがないように、社交シーズンは毎年決まっている。

そのシーズンを前に、王族がパーティーを開くというのも珍しいことだ。


「ええ、王弟殿下はこの春、隣国に留学されてしばらくこの国を離れるので、親しい人を呼んでの送別会のようなものでしたの。」


「まあ、そうでしたのね。」


「王弟殿下とわたくしの婚約者が貴族学校の同級で、親しい友人だったものですから、わたくしも参加させて頂いたのですわ。」

リリーローズがパーティーの説明をすると、

「わたくしの兄も同級でしたので、呼ばれたと思いますわ。」

と、ダイアも同調して言った。


「まあ、同級生とその婚約者が王弟殿下を見送る会という、とても私的なパーティーでしたの。」


「なるほど。で、そこで何がありましたの?」

ソフィアが相槌を打つ。


「そこに、リンデ伯爵家のエドワード様も参加されましたのですが、見知らぬ女性を同伴されたのですわ。」


「え?」

ソフィアに動揺が走る!

私的なパーティーとはいえ、王宮で行われる王弟殿下のパーティーである。

見知らぬ女性という以上、招待を受けてない者だろう。


「婚約者ではございませんの?」

ソフィアが率直に聞く。


「ええ、婚約者のマリル伯爵家のご令嬢エミリア様もまた、王弟殿下と同級故、ご招待を直接受けていたので、普通ならご一緒されると思うのですけれど、エミリア様のエスコートは弟君がされておりました。」


「まあ、それは・・・。」

ソフィアは片眉を上げて、不愉快そうに言葉を濁す。

他の二人も同じように怪訝な表情で、お互いに顔を見合わせていた。


「そこまでのことは兄も申しておりませんでしたわ。」

ダイアが扇で口許を隠して言った。


「それでは、エドワード様は入口で止められますでしょ?知らない女性を連れているのですから。」

ミラも初めて聞く詳しい話に興味を持って質問をした。


「ええ、それはそれは大騒ぎで。止めた衛兵に対して、『お前ごとき騎士が私を止めるなど烏滸がましい!』と怒鳴って、癇癪を起こしていて、会場にいた者も入口が気になっておりましたわ。」

リリーローズがその場面を思い出したのか、クスクスと笑いながら答えた。


「それでも、騒ぎが大きくなると、王弟殿下にご迷惑ですから、エミリア様がそこへと赴いて、エドワード様を取りなしたのです。」


「エドワード様、事前に同伴者の名前を出欠のお知らせと共にお返事するのがマナーですわ。それをしてないのならば、本日の出席は見合わせないと王弟殿下にご迷惑がかかりますわ。」


「な、お前はなんだ!なぜいるなぜ先に中に入っているのだ!!」

エドワードは地団駄を踏みながら、エミリアにも怒鳴りつけた。


「エドワード様に出席の有無を問い合わせてもお返事頂けなかったですし、わたくし個人にも招待が来てましたので、わたくしは弟同伴で参加という旨、お返事しておりましたもの。」

エミリアは怒鳴られてもシレッとした態度で受け流しつつ、中にいる理由を説明した。


「な、なぜそれを私に言わない!」

エドワードがなぜなぜと自分勝手に喚く。


「なぜ?なぜわたくしが、エドワード様に言わなければならないのです?」

喚くエドワードを冷たく見下して、エミリアが答えた。


「なぜ?お前は私の婚約者だろう!何様のつもりだ!」

さらにヒートアップしたエドワードが怒鳴る。


「なら、なぜわたくしが出欠を問う手紙をずいぶん前に出した時にお返事くださいませんでしたの?そして、わたくしのことを婚約者(笑)と言うのなら、その腕にぶら下げているのは何ですの?」

エミリアはまったく動じることなく正論でパンチした。


「お、お前はそういう生意気なことを言うから一緒に居たくないのだ。お前など、婚約破棄してやる!」

エドワードはバーンと効果音でも入りそうなオーバーな態度で、エミリアを指差して言った。


「まあ、それは僥幸。ようございます。すぐにでも、致しましょう。ここにいるみなさまが証人ですわ。」

エミリアはそれはそれは、美しい満面の笑顔で答えた。


「な、な!良いのか、婚約破棄された女などこの先良縁などあり得ないぞ!」

エドワードがエミリアの笑顔の返答に焦って言い返した。


「何をおっしゃっているの?エドワード様との婚姻に比べれば、どんなご縁でもそれは良縁ですわ。」

エミリアが腰に手をあてて、声高らかに答えた。


「そうだな、ではエミリア嬢。私が証人となろう。それで良いな、リンデ伯爵令息。」

王弟殿下が声をかけると、エドワードは返事も儘ならぬ様子で見知らぬ女を引っ張って帰って行ったのだった。


「と、いうことがありましたのよ。」

リリーローズが当日の状況を臨場感たっぷりに再現して聞かせた。


「まあ、それは(笑)」

「ねえ(笑)」

「だいたい、エドワード様ってあれでしょう?どうして婚約破棄を言ってエミリア様が追いすがると思ったのかしら?」


ソフィアが扇を出して口許を隠して笑い、ダイアも扇を広げてはゆっくりと扇いでミラを見ると、ミラは答えがわかっているような口ぶりで質問した。


「ええ、エドワード様って申し上げ難いのですけど、どこそこ良いところってございませんでしょ?お体も小さいですし(笑)勉強の出来もねえ(笑)お顔だってまあ、人としてみれば見れますけれども(笑)それなのに、自己評価だけは天まで届くほど高いのですもの、本当にエミリア様がお可哀想でしたわ。それでも、領地が隣同士で年が同じというだけで、エドワード様のお父様がエミリア様のお父様にどうしてもって泣きついてお願いしたそうなんですの。それなのに、本人はエミリア様がエドワード様に惚れぬいているって思い込んで、酷い仕打ちをしていたので、エミリア様は何度も婚約解消の打診をしてきたそうなんですの。それを本人は気を引きたいから婚約解消を言い出しているってずっと思っていたようで、周りにもそう吹聴して回っていたらしくて(笑)」


リリーローズが淑女の笑みでは収まらず、肩を震わせて、本格的に笑い出した。


「まあ、厚かましい。でもエミリア様良かったですわね。」

ミラもリリーローズにつられて笑いながら言った。


「本当に。きっとエドワード様が婚約できる人などもう見つからないですわ。」

ソフィアが現実的なことを言うと、

「その腕にぶら下げていた女性でいいのでは?」

ダイアが冷たい笑いを湛えて言った。


「まあ、女性本人が良ければそうなるのでは?でも聞いたところによると、その女性ってお金で雇われた娼婦の方で、娼婦なのにパーティーに参加するだけと念を押されて娼館から派遣された人らしいですわよ。」

リリーローズが更なる爆弾を落とす。


「「「まあ!それはどういうこと?」」」


「この国の娼婦にも嫌われているご様子、何かトラブルがあったとかで、出入り禁止だとか周りの男性方が仰っていたのを小耳に挟みましたの。」


「「「まあ!!!!」」」


「だいたい、よく耳にする『お前を愛するつもりはない』って、なぜ自分は愛されていると思えるのかしら?そんなことを言うような人にお相手だって、絶対そんなそぶり見せてないと思うのだけれど。」

ソフィアが可愛く小首を傾げて三人に聞く。


「本当よ。別れた女がずっと自分を好きで居続けるって思い込んでいる男性って多いでしょ?その謎の自信ってどこから湧くのかしら?」

ダイアも扇をフリフリと揺らしながら言う。


「好きだったという過去形になった時点でその人のことって消去されますわよね。書き損じた手紙を丸めて捨てるのと同じでしょ?わざわざそんな紙取っておきませんものね。」

ミラが上手い例えで言った。


「きっと男性ってロマンチストなんですわ。でもわたくし達は夢を食べる獏ではないの、残念ながら。現実の世界を生きているってことがお分かりにならないのよ。結局エミリア様だって、あの後王弟殿下とご一緒に隣国へ留学されたというのにね。」


リリーローズが今日一番の爆弾を落とした。


「「「ええ?キャー!!!本当に!?」」」


ウフフオホホと楽しげな笑いが美しい庭園にそよぐ風に乗って離れた席の男性に聞こえた。


「なあ、ヘンリー。俺は絶対婚約者を無下にしないと今誓ったよ。」

「ああ、俺もだ。心しよう。」


このパティスリーオーナーの侯爵家の息子と伯爵家の友人は女の噂の広がりの早さ、そして女の変わり身の早さを知ったのだった。



短編が書きたくなったので、思わず書いてしました。

誤字誤謬がありましたら、お知らせ頂ければと思います。

お読み頂きましてありがとうございます。

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