ギルドにて
第九話です
私はクリボッチ確定しました
皆さんは予定ありますか?
ある人は……
夜道に気をつけろ
「うわ、並んでんな。当分時間かかるぞ、こりゃ」
「よく見ろバカ。あっちは依頼受付だ。冒険者登録受付はあっち」
「わ、分かってるって。じょ、冗談だよ」
気がつかなかった。なんでこんな複雑な行動してるんだ。
「……ちなみに言っとくけど、全然複雑な構造じゃないからな」
ハッ! 気づかれた!?
「そ、そんなこと思ってないし?」
「そういうことにしといてやるよ。さて、ツグミを揶揄うのはこの辺にして、登録しに行くぞ」
そして、俺は悶々としながら、他の面子は楽しそうにしながら受付に向かった。
「ねえ、誰が受け付けの人と会話する? ちなみに、僕はいやだよ。知らない人と話すと、あがっちゃって何もできなくなっちゃうから」
「そうだなあ。やっぱりここはカズヤだろ。俺らのリーダーなんだから」
「え? 俺はいやだよ。そういうツグミがやればいいじゃんか」
「うむ、異論なし」
「そうねえ、ツグミ君がやればいいんじゃないかしら」
え、なんでおれがやることになってんの。俺リーダーじゃないのに。普通こういうのって、リーダーがやるもんじゃないのかよ。
「こんにちは。冒険者ギルドへようこそ。本日は冒険者登録でよろしいですか?」
しまった、そうこうしてたら受付の前まで来てしまった。これはもうやるしかないか。
「はい、お願いします」
「承知いたしました。紹介状などはお持ちでしょうか?」
紹介状? それはもらってないけど、ククルって人が私の名前を出せっていてたな。
「紹介状は持ってないですね。でも、さっきそこで会ったククルって人が、名前を出せって言ってたんですけど……」
「ッ!? その方はどのような容姿だったか覚えていらっしゃいますか?」
「もちろん。蒼髪のショートヘアに、翡翠色の目の少女? でしたね」
「しょ、承知いたしました。少々お待ちください」
なんか受付のお姉さん慌ててどっか行っちゃった。
それよりも、あのお姉さんめっちゃきれいだったな。タレ目で、左目に泣きぼくろがあって、それでいてグラマラスな体型……おっと、後ろから、というよりハナから、ものすごい圧を感じるからこれ以上考えるのはやめておこう。
「お待たせいたしました。応接室にて対応いたしますので、皆様お越しください」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
何故か、俺たち一行はギルドの応接室に俺たちは通され、衝撃の人物と出会うこととなった。と言っても、察しはつくと思うが。
「よく来たね! 改めて、冒険者ギルドへようこそ!! ボクはククル。此処のギルドマスターだ」
「「「……?」」」
俺たちはみな、驚きで沈黙してしまった。
それもそのはず。そこには、さっき別れたばかりのククルが座っていたのだから。
「みんなびっくりしてるみたいだね! なら、大成功だ!!」
『大成功だ!!』なんてそんな無邪気な表情をして言われても、待ったく状況が読めない。
「はぁ……ククル様、『大成功だ!!』ではありません。皆様が混乱しているでしょう? まず状況を説明してあげてください」
さっきの受付のお姉さんが、俺たちの代わりに言いたいことを言ってくれた。
「分かってるよ。アマンダはいちいち細かいなぁ」
「細かくて結構です。サブギルドマスターとしてあなたの暴走を止めるのが私の仕事ですので」
受付のお姉さん、基、アマンダさんは、サブギルドマスターだったんだ。
「さて、どこから話し始めようかな。……よし、まずは勘違いを正すことから始めようか。まず一つ目、ボクは君たちが思っているよりもずっと年上だよ。そして二つ目、これは一つ目とも絡んでくるんだけど、ボクの種族は人間族ではなくて森精族だよ。だから、実年齢は……千歳と少しくらいかな? 正確な年齢は忘れちゃったな。実家に帰れば分かるんだけど、時間がなくてね。そんなに重要じゃないから、まあ、だいたいこれくらいだよ。最長老は二千二百歳くらいだったかな? いや、二千五百歳? もしかしたらもっと上かも? と、こんな話は置いておいて、本題に入ろうか。アマンダ、少し席をはずしてもらってもいいかな?」
さすがと言うべきか、最後は有無を言わさぬ覇気をまとっていた。
「分かりました。話が終わったらまたお呼びください。最後に、これだけ置いていきますね」
「うん、ありがとう」
アマンダさんは、宝石? のようなものを置いて、部屋を去って行った。
「さて、アマンダも行ったことだし始めようか」
「失礼ですが、何をですか?」
「まあまあ、そんなに焦らずにまずはボクの話を聞いてよ。君たちは勇者だろう?」
「「「ッ!?」」」
……急に来たな。これは、危険か?
「ああ、そんなに警戒しないでよ。本題はここからだよ。といってもボクの話を聞いてるだけでいいからね。ボクはね、だいたい五百年くらい前、勇者パーティーの一人だったんだ。ボク達は五人でいつも活動をしていたんだ。ちょうど君たちと同じようにね。自慢じゃないけどボク達のパーティーはかなり強くてね、多頭竜が出ても三十秒とかからず討伐出来るくらいだったんだ。ああ、多頭竜っていうのはね、だいたい国家転覆レベルの魔獣かな。おっと、話がそれたね。話を戻すよ、そして、国からの要請を受けて魔王討伐へ向かった。とっても苦戦したよ。まあ、魔王は倒したんだけどね。そして、幸い死人もいなかった。そしてボク達は救国の英雄として名を馳せた」
「なるほど。伝えたかったことはそれだけですか?」
こんな話ならアマンダさんをはずす必要もなかっただろう。それこそ、本にでもなっていそうな英雄譚だ。だからこそ、まだ何かある。
「ここまでは一般でも知られている出来事だ。だけどね、問題はそこじゃないんだ。職業が問題だったんだ。ボク達の職業は強すぎた。特にパーティーメンバーの内の一人の職業がね。おそらく、歴史からも消されてしまっているんじゃないかな。そして、その一人と同じ職業を得ている子が君たちの中にいる。君たちも察しが付いていると思うけど。そう、ツグミ君、君だよ」
「……俺、ですか」
名乗ってもいないのに、なぜ名前を知っているかや、職業を知っているのかはさておき、俺の職業が歴史から消されるほどに強力だったとは。だから、ステータスを公開した時に初めてみたみたいな反応をしていたのか。
「単刀直入に言おう。ツグミ君。君の職業は道化師だろう?」
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