The Other Side (Side:カズヤ)
二日目です
ギルドマスターに特訓をつけてもらえることになったのだか、いったいここはどこだろうか。日本にいたときに写真で見たような気がするんだけどな。闘技場だったか?
「ツグミならすぐに順応できるんだろうな」
ツグミとは小さいときからの付き合いだが、あいつには到底敵わないような気がする。スポーツでも、勉強でも、そして恋愛でも。常に俺のを一歩先を行く、俺の憧れだ。
それなのに、どうして俺が“勇者”になってしまったのだろう。ツグミの方が俺よりも優れているのに。ツグミの方が俺よりもふさわしいのに。
だからこそ、怖い。
ツグミに見放されることが。ツグミが評価されないことが。誰よりも優れているのに誰よりも優しいから、自分が目立とうとしないツグミの心が壊れてしまうことが。
ツグミを失ってしまうことが。
「どうして俺が……」
弱いな、俺は。ツグミに頼りすぎてる。
でもこんなんじゃダメだ。しっかりと“勇者”に名前負けしないように、あいつら四人の“勇者”になれるようにならなければ。
「皆様、ようこそ御越しくださいました。司会の今宵も魔物と人との、或いは人と人との殺しあいを篤と御覧ください」
席が埋まってる? さっきまで誰もいなかったのに。
というか、殺しあい?
「さあ、最初のバトルはこちら! 血で血を洗う血みどろの戦い。死にたくなければ勝利せよ! 『最終血戦』! 初戦は好カードだぁ! まずはこの男、前回王者【鮮血】のワリア! 前回大会では一太刀も浴びず、体が相手の返り血で赤く染まったが、今回はどの様な戦いを見せてくれるのか! そして、相対するは異界の“勇者”カズヤ! “勇者”の実力とはいかに? 激しい戦いが予想されます!」
嘘だろ、これが特訓なのか? 仮にこれが特訓だとしてもしこの世界で死んだらどうなる? 俺の意識は戻るのか、或いはそのまま意識が戻らないのか。
どちらにせよ確かなことは一つ。この世界で俺は、何かしらの成長が見込めると言うことだろう。
只、その成長に必要なことが殺しなのか、はたまたこの場から逃げ出すことなのかがわからない。
「よう兄ちゃん、どうしたびびってんのかァ? 俺様に殺されたくないなら、今すぐこの場から逃げ出すことだな。まぁ、出来るもんならなァ!」
くそっ、訳もわからないまま試合が始まってしまった。
こいつ、前回王者と言うだけあって的確に俺を殺しに来てる。城での訓練が活きてはいる。ただ、攻撃が激しすぎて避けることだけで精一杯だ。
「どうしたァ、避けるだけか? 異界の“勇者”も大したことねえなァ。そんなんだと、お前のお仲間も大変だな。こんな奴のお守りしなきゃいけなくて」
我慢だ。ここで逆上したら相手の思う壺だ。
こいつのスタミナ切れを待とう。そこで、こいつを降参させれば……。
「ッ!」
危ないところだった。あと少し遅ければ、首をいかれてた。
まだ、死んだらどうなるかの考察もままならないのに、死ぬわけにはいかない。
「おいおい、本当に大したことないな。殺し甲斐がない。まあいい。お前を殺したら、お前のお仲間で楽しむとしよう。一人や二人活きがいいのがいるだろ。女は犯してもいいな」
は?
「あ゛? お前、今なんて言った? 殺す? 犯す? 巫山戯るなよ」
俺の友達に手を出そうっていうのか。そうか。
これが現実かどうかなんてどうでもいい。こいつは殺す。言ったことを後悔する間もなく殺してやる。
「いいねえ。そうだ、その目だ。殺しを覚悟した目。さあ、死合おうじゃねえか」
「五月蝿え! “光魔法-光剣”!」
“光剣”は、俺が“光魔法”で作り出す実体のない剣だ。これならば受けられることなく、相手に一撃を叩き込める!
「なるほどな、“光魔法”使いか。流石“勇者”だ。だがな、甘いんだよ。いくらでも受け止めようはある」
なっ!? 止められた! いったいどうやって。
「いいか、魔法の剣ってのはな、こうやって作るんだよ! “属性剣-火”」
おいおい、マジかよ。でかすぎだろ。五メートルはあるぞ。
「魔法の剣はいいよなァ。重さがないからどこまでも大きくできる。こんなので死ぬなよ! 死ね!」
いや、どっちだよ。
そんなことを突っ込む間もなく、大剣が振り下ろされる。
ヤバい、このままだと死ぬ。
仕方がない、城での訓練では一回しか成功できなかった上に効果時間も短いが、一か八かだ。
「“精霊化-光”ッ!」
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