新たな出会い Vol2
「一体なんだったんだ」
うん、その気持ちはよくわかる。本当になんだったんだろう。最後の最後まで愉快な人だったな。
あの感じからは想像もできないほど強そうだったし。いや、強いからこそあんな感じなのか?
「さあ、行きましょうか。向こうのグループを待たせても悪いんでね」
レオさんの言う通りだ。さっさと向かいますか。
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「おうおう、ずいぶんと遅かったじゃねえか。“無能”のレオさんよお。全くいい御身分だなあ。いやゴミ分か。ギャハハハハハ」
「全くだよ。“無能”は時間管理すらもできないとはね。さすがは“無能”と言ったところか」
チッ。なんだこの二人組胸糞悪いな。最初に集合した時には、こんなやつらいなかったぞ。もっと温厚そうな、優しげのあるパーティだったってのに。あの人たちはどこに行ったんだ?
「あの! そんな言い方は良くないと思います」
「弱い奴ほどよく吠える」
「そういうお兄さん達は何者なんですか? 初めてみる顔なんですけど」
【戦乙女】の子たち絡みに行ったぞ。強いな。あと、メアちゃんは煽るのをやめなさいよ。結構毒吐くね君。
「ああ? なんだガキ。俺たちを知らないのか?」
「まあまあ、ラット落ち着いて。お嬢さんは僕達のことを知らないのかい? 最近のギルドは教育がなってないね。まあいい、自己紹介をしよう。僕はモットさ。泣く子も黙る“英傑”とは僕達のことさ」
ハッ、ラットとモットって実験動物かよ。カズヤも同じことを思ったのかつぼにはまって笑いを必死にこらえている。そしてほかの三人は、飽きてボーっとしないの。思考を放棄するにはまだ早すぎるから。
とは言え【英傑】なんて大層な呼ばれ方だが、そんなに有名な奴らなのだろうか。こいつらが“英傑”だとは世も末だな。
「【英傑】? 誰ですかその人。初めて聞きましたけど」
「自分も知らないですね。B級以上にはそんな二つ名或いは、パーティー名の奴らはいないですよ」
おっと、どうやらそうでもないらしいぞ。雲行きが怪しくなってきた。
「なんだと貴様ら、新進気鋭の二人組E級パーティーの【英傑】を知らないだと? おいモット、こいつらを分からせちまおうぜ」
おっと、ラットが顔を真っ赤にして怒ってるぞ。ただ、泣く子も黙るの意味がわかったぞ。あまりにも横暴すぎて、閉口するんだろう。
「そうだね、只のガキが三人と、ひょろそうなのが五人、B級とは言え無能が一人だ。二人一遍にやると戦力過剰すぎる。ここは僕がこいつらを殺戮してあげよう」
やっぱりこいつらは、素晴らしいほどの阿呆らしい。たかがE級の冒険者でここまでイキれるとは。それに、ギルドの建物内での献喧嘩は御法度だというのに。
ここまで阿呆だと、相手にするのも疲れる。職員の人でも呼んでくるか。
「何をやっとるんじゃおどれら!」
呼びに行く前にハンスさんが来た。状況的にこちらが罰せられることはないだろうが、一応状況説明をしておいた方がいいよな?
「ひっ――」
うおっ、びっくりした。メアちゃんに至っては少し震えている。こういう系苦手なのね。
「あの、すいません。ちょっと今絡まれまし――」
「何を言ってるんだ、先に難癖付けてきたのはお前たちだろう。すいません。こいつらが僕達に難癖をつけてきたので、どう対処しようか迷っていたところなんです。どうか厳粛な処罰をお願いいたします」
げ、まじかよこいつら。ここまで性根が腐っているとは。阿呆だ阿呆だとは思っていたが、救いようのない屑だな。自分より弱いと思うものには高圧的になり、強いものには媚び諂う。人として生きる上には少なからず必要なことだとは思うが、限度というものがあるだろう。
「ほう、なるほどな。じゃがのう、儂には、おどれらが絡んでいるようにしか見えんかったぞ」
ハンスさんって怒ると訛るタイプの人だったのか。少し怖い。
大丈夫だ、俺らは悪くない。きちんと話せばわかってくれるはず。
「あ、いやそれは……」
「あぁ? そんなの関係ねえだろうがよ。こいつらが先輩を敬わないから、少し教育して身の程を教えてやろうと思ってよ」
「ほう、そうか。そこまで言うとは、よほどの身の程知らずのようじゃけえの」
ま、まずいぞ。ハンスさんがあいつらの言うことを信じかけてる。どうにかして誤解を解かねば、このまま罰を食らってしまう。
「【訪ね人】と【戦乙女】、そしてレオの九人、この後ギルドマスターの執務室にいってもらう。【英傑】の二人は儂と一緒にこっちへ来い」
ああ、終わった。弁解の間もなく罰だ。
ただ、依頼はやらせて貰えるみたいだ。今から人員募集をしても間に合わないからだろう。
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その後は特に何事もなく、滞りなく依頼は進行した。ほかの冒険者に見られて居心地が悪かったが、諦めた。
あそこまで盛大に絡まれていたら、野次馬根性を発揮してしまうのはわかるが、もうちょっと遠慮して欲しかった。なれているから、多少見られるくらいならいいんだけどな。
ただ、視線のなかに憐れみじゃなくて、羨望と期待の視線が混じってたのが気になるな。むしろそっちの方が多かった。
これってもしかして、罰回避できるんじゃね。
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