新たな出会い
やっぱ、テンプレって大事ですよね
“鬼札”は、我ながら言いセンスだと思う。俺の天才性が垣間見えてしまったな。
まあ、冗談はこれくらいにして、今は俺とハルユキ以外の三人の武器の銘入れを待っている。正確に言うと、銘入れを待つ間にギルドのクエストを受けている。
俺たちみたいに、魔力を込めてはい終了とは行かず、手作業で銘入れをしていくので時間がかかるのだ。
閑話休題。
俺たちが受けたクエストは、昨日の残りを含めて三つ。
一つは、当然昨日の残りである捜し物クエスト。
二つ目は、商人が取り寄せた商品を荷卸するのを手伝うクエスト。
三つ目は、ギルドの解体の手伝いだ。
この二つは人気のクエストであるらしく、昨日の時点では既に無くなっていた。
商人は、他の街や国に赴く際の自営の手段として冒険者を雇うこともあり、羽振りが良いそうだ。将来、大物になるかもしれない人物と懇意にしたいという打算もあるとは思うが。
それでも極一部、支払いを躊躇うものもいる。大抵は、嫡子になれず、爵位も得らなかった貴族の三男坊ぐらいらしいが。そういう者は、貴族としての立ち振る舞い体に染み込み、平民としての自覚が無い者、或いは元貴族としての権力をまだ持っていると勘違いしている者という訳だ。それでも言うことを聞いてしまう者もいるのが、彼らをより助長させてしまう原因にもなっている。
元の世界でも、引退した元議員とかに媚びを売る人がいたりするから、その感覚はわからんでもないがな。
話が逸れた。
解体の手伝いが人気の理由だが、実の所身入り自体はそこまで良くない。ただ、それでもやる人が尽きない理由は、ある一点に収束する。
何物にも変え難い経験が得られるからだ。
“解体”の能力自体は、能力魔封書というもので簡単に得られる。少し値は張るが、平民でも買えるレベルのものだ。因みに、うちの場合はアカギが最初から持っていたので現状、買う必要は無い。今後、一人ではどうしようも無くなる可能性があるから、いずれてにいれたいとは思っているがな。
だが、やれるとできるは違う。能力はあくまでもやれるようにするだけ。『ここに刃をいれて、こう動かせば切れる』といった、所謂教科書的なものでしかない。技術が伴っていなければ、綺麗に行うことは出来ないのだ。数学で、二次方程式の解の公式は分かるけど、応用問題を出されると解けない、みたいな感じだ。自分で言っといてなんだが、分かりにくいな。まあ、とにかくそういうことだ。
しかし解体の手伝いをすることで、解体の技術が盗めるのだ。しかも、運が良ければ職員に教えを乞うこともできる。職員は解体専門とする人達なので、その道のプロに教えて貰えるのだ。C級やB級の冒険者でも受ける人がいるくらいなので、その価値がわかるだろう。A級以上の冒険者になるには、パーティーならパーティーに一人、ソロならば自分が解体できることが必須なのであまり受ける人はいない。ごく稀に、新しく解体を覚えようとするA級パーティーの人もいるが。
兎にも角にも、日本人的な感覚が抜け切っていない俺からすると、血を見ることへの恐怖というのはある。が、弱肉強食のこの世界で甘っちょろいことを言っていられる訳でもない。やるからには覚悟を決めなければ。
そうそう、あの四匹は宿の獣舎に置いてきたよ。解体のときとか危ないし、ギルドに連れていったら、何されるかわからないしな。
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午前中にギルドの解体の手伝い、午後に商人の荷卸の手伝いということで、やって来ました冒険者ギルドの隣の建物!
昨日外から見た時もでかいとは思ったが、中に入ってみるとより実感できる。というか、外から見た時よりも絶対に大きい。十中八九魔法か何かで拡張されている。外から見た時は小学校の体育館くらいの大きさだったのに、中に入ってみるとサッカーコートくらいあるんだぞ? 実感できて当然だ。というよりも、気づかない奴がいたらやばいくらいだ。
あ、因みにこのクエストを受けたのは、俺たち以外にも5人パーティーが二組、3人パーティーが一組、ソロが一人と言った具合だ。ソロの人は目の下に少し隈ができているのを見ると、相当苦労してそうだ。あの苦労人オーラが取れたら相当イケメンに化けるだろうな。
俺たちが会場で待っていると、筋骨隆々のなかなかいかつめなイケオジがやってきて声を上げた。
「よし、全員揃ったな。俺は、このギルドの解体職員ハンスだ。今から君たちには解体作業における雑務をこなしてもらう。具体的な作業は、道具の整理、廃棄物の運搬及び廃棄、使い捨ての道具の補給だ。その他にも、各職員が適宜指示を出す。基本的にそれに従って貰う。それでは着いてこい」
俺たちが、筋骨隆々イケオジことハンスさんについて行くと、そこに待っていたのは巨大なトカゲだった。
「今日は岩竜の解体を行っていく。お前たちは運がいいぞ。このクラスの魔物の解体をお目にかかれることは中々ないからな。では始めていく。まずは三つのグループをつくってくれ。出来たな? そうしたら、左から順に、一班、二班、三班、四班とする。一、二班は、用具室に行ってナイフを2丁とバット二十枚、鉗子を十丁を持ってきてくれ。バットの中に入れてきてくれても構わん。三、四班は、保管庫に行って瓶三十本と縄二十本を持ってきてくれ。麻袋があるから、それに入れて運んでくれてもいいが、くれぐれも、瓶を割らないように。詳しくは、そこにいる職員に聞け。それでは各自行動しろ」
俺らでは無いふたつの、五人組が一、二班で、俺たちは三班となった。4班は、女性三人のパーティーと、苦労人オーラの絶えない男の人1人で構成されている。
「あ、どうも。よろしくお願いします。俺は、【訪ね人】のリーダー、カズヤです。職業は“拳士”です。そしち、こいつらがパーティーメンバーで、右からツグミ、ハルユキ、ハナ、アカギです」
「お願いします。ツグミです。職業は“奇術師”です。あ、そうだ。こちらをどうぞ、お嬢さん」
うわっ、恥っず。体が勝手に動いたんだけど。『こちらをどうぞ、お嬢さん』じゃないんだよ。何も無いところからいきなり薔薇を出して渡すなよ。というか、その薔薇どこから持ってきた。俺そんなのを持った記憶ないぞ。相手も困ってるじゃん。震えてる人もいるし。だからな、ハナ。そんなに俺を睨まないでくれ。俺がやりたくてやったわけじゃないんだ。あと、カズヤ。お前が笑いこらえてるのはわかってるからな。後でシメる。
「よろしく頼む。ハルユキだ。職業は“魔陣師”だ」
「ハナよ。よろしく。女の子同士仲良くしましょ? 私の職業は“回復術師”兼“薙刀使い”よ」
「よろしくね、アカギだよ。職業は“弓使い”だよ」
こちら側の自己紹介を一方的に済ませたところで、今度は相手方の番となった。
「わ、私は【戦乙女】のリーダーのルチアです。職業は“盗賊”です」
「メア。“魔導師”。よろしく」
「もうっ、メア。もう少し愛想良くしないと嫌われちゃうよ? あ、ワタシはミレイって言います。剣士です。お願いします」
三人とも、俺たちより二歳くらい年下だろう。元の世界だと、中学二、三年生ぐらいの背格好だ。
一人目のルチアちゃんは、しっかりとした学級委員長タイプだ。
二人目のメアちゃんは、無口。ただひたすらに無口。
三人目のミレイちゃんは、男子ウケが良さそうな子だ。
そこ! ロリコンだと思っただろ! ロリコンじゃないからな! 誤解は訂正しておかねばならない。ただ、自分の中で特徴をまとめたかっただけであって、全く下心は無い。断じて。
「あ、今度は自分の番ですかね? 自分はB級パーティー【銀翼】のレオです。職業は“従魔師”です。まあ、一体も従魔が居ないんですけどね……。無能とでもなんとでも呼んでください。ハハッ」
あ、これざまぁ系の主人公になるタイプの人だ。
大体こういうのって、実はただの“従魔師”じゃなくて、“神獣使い”でした、とか言うやつだよね。
【銀翼】の方々のご冥福をお祈りいたします。
というか、空気が重い。【戦乙女】の人達固まっちゃったよ。
「さ、さあ。自己紹介もこの辺にして、必要なものを取りに行きましょうか」
お、カズヤナイス。
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