武具の名は
すいません、思いっきり間違えてました。
宿屋の人の名前ガルムじゃなくてゴルドです
ガルム誰やねんって思ったかた、紛らわしいことしてしまって申し訳ありません。
すでに修正は終えました。
銘、銘かー。カードに名前を付けるって難しいな。剣やら刀やらだったら比較的つけやすい気もするけど、カードだからな。
「うーん、なににしようか。ここは無難に“拳刃”にするか? いや或いは――」
果たして拳刃が無難なのかどうかは置いておいて、カズヤも迷走中か。
「ククク、迷う余地もなし。“魔現符”と名付けよう」
「んーと、どうしようかな……。よし、“重藤”にしよっと」
「私は……、そうね“流月”にしようかしら」
みんなポンポンと名前が決まっていく。
俺はどうしようか。
カード、カードか。そもそもカードって武器じゃないだろ。なぜカードになる。
まあ、ロマン武器として使う分には、厨二心がくすぐられていいんだが。しかし、実際に自分が使うとなると話は別だ。
そういえば、王宮でロマン武器を支給されたやつらもいたな。あいつらは今頃どうしているのだろうか。バリスタを受け取ってるやつもいたけど、あれをどうやって持ち運んだのかが気になる。
あれ? カズヤのやつ、王宮で剣を受け取ってなかったか? しかも、魔剣の名を冠してるやつ。
「なあ、カズヤ。お前魔剣……じゃないや、聖剣だったか精霊剣だったかを持ってなかったか? あれどうした」
「ああ、あれな。俺さ、前の世界で空手やってたから、能力に剣術はあれど徒手空拳のほうが戦いやすいんだよね。だから返した」
「あっそう。じゃあ、代わりに何か受け取らなかったのか?」
「受け取ろうと思ったんだけど、どうも俺に合わないものばっかり持ってくるんだよね、あの宰相。だから、何も受け取らなくていいかなって」
ふーん。
ああ、話がそれた。武器の銘を決めないと。
こういうのは直感が大事なんだ。元の世界でも、将棋の棋士が一時間かけて考えた手と、数十秒で直感的に思いついた手の八割が一致した、っていう研究結果もあるらしいし。
ここは何も、カードであることに囚われなくてもいいんだ。現にハナだって、薙刀とは直接的に関係のない、“流月”って名前にしてるし。まあ、和風の名前っていう感じで、共通点を見いだせなくもないけど。
さあ、閃け、俺の直感。
カード。道化師。
よし、決めた。
「お? あんちゃんも決まったって顔してるな。あとはお前さんだけだぞ、えっと……名前何だったか?」
「そういえば自己紹介してませんでしたね。カズヤです」
「あとはお前さんだけだぞ、カズヤ」
そうか、全然名前で呼ばないなー、とは思ってたけど、自己紹介をしてなかったからか。
あまりにも自然に、俺たちの適正にぴったりな武器を作ってくれたから、もうしたものだと思い込んでいた。
「あ、自分はツグミって言います」
「くくく、貴殿には特別に我の真名を教えてやろう。我の真名は、土御門 晴之である」
「はいはい、そういうの良いから。すいませんね。こいつの名前は内田 春幸です。ハルユキって呼べばいいので」
「お、おお、そうか。独特な兄ちゃんだな」
この場面で厨二病を発症するなよ。
「僕はアカギって言います。あの、こんなナリですが一応男です」
「私は、ハナって言います」
「カズヤにツグミ、ハルユキにアカギ、そしてハナだな。相分かった。これからは名前で呼ばしてもらうけど、ええか?」
「はい、是非!」
ええと? もともとは何の話をしてたんだっけか? あ、そうそう。武器に名を刻むから考えてくれっていう話だったな。
んで、カズヤがなかなか決まらなくて、決まったかを聞こうとして名前がわからなくて、自己紹介をしたのか。
「カズヤ、いい加減に決まったか?」
「ツグミ、ちょっと待ってくれ。今、候補が三つにまで絞れたところなんだ」
「ちなみに候補とは?」
「“拳刃”、“鉄拳”、“閃衝”」
「あ、そう」
なんというか、良くも悪くも良いセンスしてるとしか言えない。
「俺は“鉄拳”がいいと思うぞ」
俺個人の意見だが、“拳刃”よか、幾分かましだと思う。閃衝? 論外だ。何が悲しゅうて、そんな名前を付けにゃならんのだ。カズヤがどうしてもっていうなら、いいとは思うが。
「そうか? ツグミが言うならそうなんだろうな。じゃあそうするわ」
カズヤの俺に対する信頼は一体何なんだ。いいけど。俺以外の奴にはやるなよ、絶対に騙されるから。
とまあ、そんなことを思いつつゴルドさんの説明を聞いていた。
「銘を入れるにもいくつか種類があってだな、刀剣は柄の中の金属部分に入れるんだ。薙刀も同じだな。んでもって、弓は手元の辺りだな。只、ツグミとハルユキのやつはちと違うんだ。武器自体に銘を刻むわけじゃなく、武器に銘を記憶させるんだ」
記憶? 無機物に? いやまあ、紙は有機物なんだけど。そういうことではなく。
「よくわかってなさそうだな。じゃあ、一つ質問をしよう。お前さんたちの武器と、三人の武器の違いは何だと思う?」
違い。
ぱっと思いつくことといえば、物理攻撃のみか魔法攻撃も可能か、っていうところだとは思うが。あとは、札型ってところか。
「まあ、これくらいはわかるだろう。そうだ、お前さんたちの武器は魔法を使える。じゃあ、魔法を使えるようにするにはどうしたらいいと思う? 結論から言おう。これには二つ方法がある。武器の制作過程で、何かしらの魔法を武器に刻み込む方法が一つ。もう一つが、武器の制作過程で、魔力を流し込むことだ。前者の場合は決まった魔法しか撃てないが、魔力を持っていれば基本誰でも撃てる。ただ後者の場合は別だ。制作過程で流し込まれた魔力に、あとから属性を与えることだ。それ即ち、『記憶』させる。それを応用して、属性がない純粋な魔力、言うなれば無属性の魔法を込めるんだ」
なるほど? 魔力を与えながら銘を授けると言った感じになるのか?
「まあ、見てもらった方がわかりやすいだろ。やってみせるで、ハルユキ、ちょっとお前さんの護符を貸してくれんか。確か、お前さんのは“魔現符”だったか?」
そういったゴルドさんは、護符を何やら怪しげな魔法陣の上に置いた。
「これで準備は完了だ。そしたら、ハルユキ。この魔法陣に魔力を込めながら、自分の付けたい銘をイメージするんだ」
「ここに魔力を込めて、銘をイメージ……」
うわっ、魔法陣が光り出した。いや、魔法陣だけじゃないな、光が移っていくように護符も光り出してる。
「よし、ええ感じだ。そしたら『“命名-魔現符”』と祝詞を唱えろ」
「“命名-魔現符”!」
あれ? 光が大きく……、うわっ弾けた!?
「ぐわぁ、目が目がー」
……カズヤが光を直視して、どこぞの大佐みたいなことを言っているが無視しよう。
「よし、上出来だ、出来たぞ。“魔現符”」
なんか、色が白から薄い紫になった?
「この色はな、“魔現符”内の魔力が、ハルユキの魔力に同調したから出た色だろう。人それぞれ違う波長を持つで、やればやるだけの色が生まれる。次はツグミ、お前さんの番だ」
やっとか。長かったと言うべきか、しかしあっという間でもあったな。
「もう、銘は決まってるんだろう? そしたら、手順は同じだ。できるな?」
「はい」
「よし、なら行け」
魔法陣にカードの束を置いて、魔力を流し込む。そして銘をイメージ。このカードの銘は――
「じゃあ、祝詞を唱えろ」
「“命名-鬼札”」
――鬼札。
花札の中で、鬼札たる存在の名を、俺は武器に刻んだ。
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