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ピエロは嗤う  作者: ネギ鮪パラダイス
ギルド編
18/30

夜の密談

 ツグミたちが今後の予定を決め、今宵も盛り上がろうとしている頃、彼らの宿を目視できるかどうか、といった距離にある建物。王宮を除けば、この街一番の威容を誇る建物の前に人影があった。

 この場には到底似つかわしくない外見をしているにも関わらず、通行人は誰一人として目もくれない。

 まるで、そこにいるのが当然と言わんばかりに。


「これでよろしいでしょう。しかし難儀なお方ですね、我が主は。『成長と活動を毎日報告せよ』だなんて。わざわざ(わたくし)が報告などしなくとも、情報を得ることは可能でしょうに」


 その人物は、声の質からして恐らく女性であろう。

 彼女の言葉からは、主人への忠誠と信頼がうかがえる。


「さて、報告も終えましたし戻るとしましょうか。あまり長時間席を離れると、怪しまれてしまいそうです。特に、あの2人には気を付けなければなりませんね。全く、(わたくし)が担当となったからよかったものの、新人だった場合気づかれてしまったかもしれません。これは、我が主がよく仰られる『終わりよければすべてよし』というものでしょう」


 そんな乱れた思考を口に漏らしながらも、彼女の手は素早く動き、準備を整えていた。

 しかし、乱れた思考が災いしたのだろう、背後から忍び寄る人物に気がつくことができなかった。


「あれ? こんなところで何してるんでしょうか、――さん」


「ッ!」


 ここは城下町。その喧騒によって名前は聞き取れないが、やってきた人物と彼女は顔見知りなのだろうか。親しげなものを感じさせる。しかし、その言葉は少し棘を含んだものだった。

 声をかけてきた人物に気がつき、彼女は慌てて平静を取り繕った。


「あら、どうされましたか、――様。このような場所になにかご用でしょうか? ずいぶんと雰囲気が異なりますが」


「そんなこと、貴女が今していたことに比べたら些細なことでしょう?」


「何のことを言っているのか理解いたしかねますが」


 一触即発の雰囲気を醸しながら、二人は睨み合う。

 先にこの膠着を破ったのは来訪者だった。


「白を切られてしまっては仕方がない。証拠もないですし、今は見逃しましょう」


「理解していただけたようで何よりです」


 彼女は満足そうに頷く。


「ただし、僕の持つあらゆる手段を用いて、常に見張らせてもらいますからね。明確に僕らと敵対するような動きをしたら、たとえ貴女でも情け容赦はしませんよ」


 そう言うと、男は雑踏の中に紛れていった。


「まさか、気づかれていたとは……。これは計画の見直しが必要ですね」


 彼女はそう呟き姿を消した。


***???***


 ()()が彼女の不審な動向に気がつけたのは偶然だった。

 一方は天賦の才で、他方は努力の結晶で。

 只、一つ共通して言えること。それは、常人なら身に着けられないような能力であり、尋常ならざる努力の上に成り立っているということだ。


「これで最低限の目的は果たせた。只、まだ危険なことに変わりは無い。要注意だな」


 そう言って彼は思案する。

 しばしの思索の末に顔を上げた彼は、よい解決策がなかったのか不満気な表情をしていた。


「根本的な解決は、今は無理か。仕方がない、いつもより監視と結界の数を増やすか」


 彼は、服を麻布の服から自前の()()()へと着替える。そして印を結ぶ。


「五行“風‐風界(フウカイ)”、五行“土‐土獄(ドゴク)”、陰陽“陰‐陰幕(インバク)”。よし結界はこんなもんだろう」


 それはこの世界の常軌を逸したナニカだった。


「召命“(あやかし)百目(ヒャクメ)”、召命“妖‐鎌鼬(カマイタチ)”、召命“妖‐猫又(ネコマタ)”、召命“式神‐蜂天(ホウテン)”。これでいだろう」


 街中に突如現れた異形の集団。

 しかし、暴れだすことはない。その意思は彼によって制限され、叛意を抱くことはない。否、抱かせない。


「ご主人様、御健勝そうでなによりでございます。呼び出していただき感謝の念に堪えません。何なりとお申し付けくださいませ」


 ()が流暢にそう語った。

 しかし、それはこの世界の言葉ではない。知らぬものが見たら、変な鳴き声をしている、少し変わった風貌の猫にしか見えないだろう。


「うむ、御苦労。今からお前たちに命ずる。今から挙げる者達を、悪しき感情を持ったものから守れ。対価は今後三十年の忠誠を許そう。その者達とは――」


 声を落として、異形のものたちに護衛対象を伝える。

 あまりにも一方的な物言いだが、異形の者たちにとってはそうではなかったらしい。


「はっ、ありがたき幸せ。我らは貴方様の忠臣、必ずや成功させて見せましょう」


「そうか、ではゆけ」


 彼は、配下が去ったのを見て大きなため息をひとつはく。


「忠誠を尽くしてくれるのはいいんだけど、ちょっと堅苦しいんだよな。もうちょっと楽にしてくれた方がこっちも楽だってのに」


 「まあ、無理だろうな」と呟き、彼の大切な者たちが待つ場所へと帰る。


「あ、またあのキャラやんないといけないじゃん。アレきついんだよな。もう少しまともなキャラ付けしとけばよかったよ。でもなぁ、他にいいキャラがあるかと言ったらそうでも無いし。もう今更だし、しゃーなしだな」


 その後、酔ったチンピラに絡まれたが軽くあしらい数分後、目的の建物へと辿り着いた。


「もう一回念のため確認しとくか。結界は……ちゃんと張ってある。んで、あいつらもちゃんと見張ってるみたいだな。よし、不備はない。っと、包帯巻き忘れてた。忘れて悲惨なことになるところだった」


 彼は包帯を巻きなおし、建物の中へと入っていった。

この人たちは一体誰なんでしょうね

いやーわかんないなー


数ある作品の中から拙著をご覧頂きありがとうございます。


よろしければブックマークと感想並びに、☆をよろしくお願いします。

面白くなかった★☆☆☆☆

普通★★★☆☆

と言った具合でいいので


評価されると作者の更新スピードが上がります。

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