夜の会談
宿シーンまだまだ続きます
ミソナさんに事情を伝え許可を取り、五人だけにしてもらった俺たちは、男子部屋で明日以降のことについて話し合うこととなった。
因みに、ついてきてしまった四匹も一緒だ。
「んで、明日はどうする? このまま同じように探しててもたぶん見つからないぞ」
「そうなんだよな。この街ってだだっ広いから、余計時間かかりそうなんだよな。流石は城下町って感じだ」
どうすべきなのだろうか。全員が同じところを徹底的に探して、漏れをなくすのか。はたまた、今日と同じように全員がバラけてローラー作戦にするのか。
正直なところ、どっちもメリットとデメリットがあるから、一概にこっちがいいとは言えないんだよな。
「はい、僕から提案。みんなで同じところを回りつつ、役割分担をするのはどうかな? 例えば、身軽なカズヤ君と“風魔法”が使える僕が木の上とか塀の上みたいな高いところを探して、他のみんなで地上を探すみたいな」
それなら、がむしゃらに全員が同じところを探すよりは効率がいいか?
「私からもいいかしら。もし、明日何かしらのクエストも受けないといけないんじゃない? 明日以降の泊まる場所がなくなるから、クエストをもう一個ぐらい受けておいた方がいいと思うわよ。今の話には関係ないけど」
あー、そうだった。すっかり忘れてた。
俺ら今、ほぼ無一文じゃん。ほぼって言うか、完璧に?
ここの一泊の料金が30V。半額だとしても二部屋借りてるから、合計で30V。明日の金がない。
俺は別にいいんだ。慣れてるから。
ただ、他の皆とかミソナさんはそんなことないだろうから大変だろう。
「そいや、そうだったな。じゃあ明朝まずはギルドに行って、クエストをいくつか受けてからにするか。なるべく簡単なのを。ハルユキもそれでいいか?」
「ん? あ、ああ。構わぬ」
コイツ、上の空で話聞いてなかったな。
それとも、アレかな?
「どうかしたか?」
「すまぬな。何でもない。ただ、ちょっとな……」
「なんだよ、気になるじゃねえか。教えてくれよ」
「その、少し尿意を催しただけだ。そこまで火急の用ではない故な」
ふーん、トイレねえ。ハルユキらしい。
「なんだ、そんなことか。遠慮せずに言ってくれれば良かったのに」
「む? そうか。そうさせてもらうとしようか」
ハルユキはそう言って部屋を退出していった。
「んじゃあ、ハルユキもいいみたいだし、お前たちもそれで良さそうだから今日は解散ということにするか。おやすみ、また明日。しっかり寝とけよ」
かくして、解散と相成った。
そして部屋には、カズヤ、アカギ、俺の三人だけになった。
「よし、男だけになったらやることはひとつ。猥談だ!」
「いや、やらねえよ?」
「つれねえな。せっかく、久しぶりにこのメンバーだけになったっていうのによ」
「いや、関係ないから。なあ、アカギ?」
「猥談? いいよ、やろう!」
ああ、小さい時はあんなに純粋だったアカギがこんなにカズヤ色に染まるなんて。
あのときのアカギはどこに行ってしまったのだろうか。
「アカギまでも賛成するなんて。しゃーない、腹くくるか。やってやろうじゃないか猥談。その前にトイレ行ってきていいか?」
ハルユキが全然帰ってこないし、様子見ついでに俺も用を足してくるか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
トイレ行こうと思って部屋の外に出たはいいものの、場所が分からない。
「はて? トイレはどこだろうか」
「む? ツグミよ、そんなところで何をしているのだ?」
「おお、ハルユキ。いやな、お前の様子見ついでにトイレに行こうと思ったんだが、場所が分からなくてな」
「それなら、そこの階段を下りた先にあるぞ」
「サンキューな。……それと、用を足せたか?」
「ん? もちろんであるぞ」
「オーケー、それならい。じゃあ、トイレ行ってくるわ」
それにしてもよかったよ。ハルユキにここで会えなかったら、探しまわって骨折り損になるところだった。
さあ、手遅れになる前に俺も行きますかね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
用を足してきて部屋に戻ったのだが、どうも様子がおかしい。
異常に静かだ。
俺がトイレに行って、帰るまでの数分間に寝付いてしまったとは思えない。
あんなにノリノリで『猥談をする!』と息巻いていたのだ。
ということは、ドッキリでも仕掛けようとしているのだろう。
であれば、ここはひとつ痛い目を見てもらうとしよう。
ようやく、使い道のなかった能力を試す時が来た。
「発動、能力“陰蔽:自己”」
そう、最初は使い道の分からなかったこの能力“陰蔽”。なんと、対象を定めてやらなければならなかったのだ。
道理で最初は成功しなかったわけだよ。
だって対象を指定してなかったんだから。
因みに、能力“隠蔽”というものも存在しているらしい。
俺の持っている能力“陰蔽”は、存在を目立たなくすることが可能になる。対して、能力“隠蔽”は、そこに存在していることが自然であるように思い込ませることが可能になる、らしい。
実際のところどうなのかは、能力“隠蔽”が発動しているところを見た事がないからわからんけどね。
ということで、部屋に入りますか。
「わっ。どうだ驚いたか……ってあれ? ツグミがいねーぞ」
ふふふ、戸惑ってる戸惑ってる。
あ、アカギは気づいてるみたいだな。“風魔法”かな? 魔法的な感覚は消せなかったか。これは今後の課題だな。
ということで、カズヤの背後に回ってと。
「おい。お前何やってんだ」
能力を解除しながら、声をかけてやった。
「え? あ、いや、その、ちょっと驚かせようと思って。はい。えっと、すんません」
「全く、俺にそんなことが成功するわけないだろ。ただでさえ、俺は気配とか視線に敏感なんだ。それが職業の影響で強化されてるんだから、万に1つも成功する未来が見えないだろ」
「それもそうか。いやー、こっちの世界なら成功すると思ったんだけどな。これで0勝63敗か」
なんでこっちの世界なら成功すると思ったかも分からないし、そもそも、なんでやろうとするのかが分からない。
どうせ勝てないんだから、いい加減諦めたらいいのに。
というか、こんなようなこともう63回もやってたのか。ほんとに諦めろよ。
数ある作品の中から拙著をご覧頂きありがとうございます。
よろしければブックマークと感想並びに、☆をよろしくお願いします。
面白くなかった★☆☆☆☆
普通★★★☆☆
と言った具合でいいので
評価されると作者の更新スピードが上がります。




