美味しい食事
前話の価格設定をいじりました。
そこまで大きな影響はないと思いますが、見ておいたほうが良いかもです。
ゴルドさんの指示通りに食堂で待っていたら、夕飯が運ばれてきた。
いや、運ばれてきたというと語弊があるな。
飛んできた。
何を言っているのかわからないかもしれないが、文字通り飛んできたのだ。
「なあ、ツグミ。俺の見間違いか? 肉の乗ったプレートが飛んでるんだか?」
「安心しろカズヤ。見間違いではないはずだ、多分。幻覚でなければ」
十中八九、幻覚ではないと思うのだがな。
何しろ俺の持つ能力“幻術”には、幻覚などへの耐性があるのだ。
ただ、俺よりも“能力”を使いこなしている人や、一部の人が持っているとされている“固有能力”なんかだった場合俺の耐性を突破してくる可能性もある。
まあ、仮にも勇者の仲間である俺よりも使いこなしている人などなかなかいないだろうし、“固有能力”は相当レアらしいからそこまで心配しなくても大丈夫だろう。A級以上の冒険者になってくると、ちらほらいるらしいが。
「へえ、すごいや。風魔法で浮かして運んでるんだ。とんでもない想像力と魔力の制御技術だよ!」
「アカギ、分かるの?」
「なんとなく魔力の流れがわかる気がするんだ。特に、僕は“風魔法”が一番得意だからわかりやすかったよ」
俺は、魔法はからっきしだからな。アカギの才能が羨ましいよ。
「兄ちゃん、見る目があるね。これを一発で“風魔法”と見抜くとは。大抵の輩が怯えるんだよ。『死霊が出た』ってね。まあ、それを見るのが楽しいんだが。おっと、自己紹介がまだだったね。あたしはアリエラだ。ここの料理長と女将、あとゴルドの妻をやってるよ。ゴルドになにかされたら言っとくれ。しばいとくから」
お、おお。いきなり奥から出てきて、怒涛の勢いで喋るな。しかも中々いい性格をしてるぞ、この人。
「一応奥で話は聞いてたからね。オドんところの客って言うからもてなしてやんないとね。少し豪華にしておいたよ。安心しな、金は通常通りでいいからね。五人にはこの水蜥蜴のステーキ、四匹には、岩鳥のブロック肉だ」
やっば、めっちゃうまそう。
早速一口。
こ、これは!
「うまっ! なにこれ!? 肉が溶けて消えたんだけど!」
あ、カズヤに先越された。
ただ、うまいことは確かだ。下手したら王宮で出された料理に匹敵するレベルでうまい。
「おー、そうかい。そりゃ良かった。久しぶりに水蜥蜴の肉なんて使ったからね、腕が落ちてなくてよかったよ。そいで、これがミソナの分だ。いつも通り一角兎の香草焼きだ」
あ、あれもうまそう。
「ありがとうございます」
そして全員が無言になり、フォークとナイフが触れ合う音だけが響いた。
完食までに十分もかからなかっただろう。それほどまでに箸が進む料理だった。使った食器はフォークとナイフなのだが。
いやー、美味かった。前の世界だったら数千円するレベルなんじゃないか? まあ、数千円もする肉なんて食べたことないがな。
「お、食べ終わったかい? よし、ちょっくら待っとってくれ。おい、食べ終わったとよ。ゴルド、案内したってくれ」
「ったく、人使いが荒いな、アリエラは。よし、あんちゃんたち、付いてきな」
ゴルドさんは、そう言って俺たちを率いて部屋の隅にある階段を上がっていった。
「ここが兄ちゃんたち四人の部屋だ。んで、これが部屋の鍵。失くすなよ。仮に重要なお客さんだろうと、失くしたら弁償してもらうでな。これ、結構高いんだぞ」
「因みに、お幾らぐらいですか?」
「そうだな……、B級冒険者が一年で稼ぐぐらいか」
高っ。B級冒険者っての1年分の年収って、農耕平民の5年分以上はあるらしいぞ。A、S級に比べたらだいぶ少ないけど。
今のままだと、いつ払い切れるかわかったもんじゃない。
「そんなことはどうでもええ。兄ちゃんたちの向かいの部屋が、二人の部屋だな」
ハナとミソナさんの部屋は俺たちの向いの部屋だった。他に特筆すべきことはない。強いて言えば、元々は三人部屋なので少し部屋が広く感じる程度だ。
「んじゃ、飯も食ったようだし明日の朝までゆっくりしてってくれ。朝食はさっきと同じ食堂だな。いつでも来てくれ。ただ、あんまし遅いと準備出来んかもしれんで気をつけてな。それじゃあ、おやすみ」
「「「おやすみなさい」」」
「お休みなさいませ」
さてと。あとは寝るだけだが、その前に少しやっておきたいことがある。
「なあ、カズヤ。明日の予定についてこれから話し合わないか? それと、俺たちのクエストだからミソナさんを巻き込むわけにもいかないし、ミソナさんには先に寝ててもらうけどいいか?」
「そうだな。ミソナさんをクエストに巻き込むわけにもいかないしな。お前達も、それでいいよな?」
「私もカズヤと同じかしらね」
「異議なし」
「オッケーだよー」
満場一致だな。あとはミソナさん次第だ。
「てな感じなんで、ミソナさんは先に寝ていてもらって構いませんよ」
「左様でございますか。でしたら、我が主への本日の報告の鳩を飛ばしましたら失礼させていただきます」
「鳩? そんなのどこに?」
「ふふっ、使用人系の職業専用の能力“服侍作法”というものがございます。この能力の効果で、亜空間にものを収納できるのです。様々な制限がありますので、何でもしまえるというわけではありませんが。ですので今回の場合は、伝書鳩を亜空間にしまっていた、というわけです」
制限はあるみたいだけど、結構便利そうな能力だ。
だが、使用人系の職業専用らしいから俺が使えるようになることはなさそうだな。
「では、我が主へと鳩を飛ばして参りますので、皆様は皆様だけでお過ごしください」
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